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浮遊するランダム・ナンバー


1. STORY

地球から四・二光年離れたハビタブルゾーンに存在する太陽系外惑星、プロキシマbに宇宙用探査ドローン『レディ・バグ』が到達したというニュースは、一躍世界を駆け巡った。
その功績は宇宙工学博士である辻透吾と、天才とうたわれる娘・未理亜の名と共に連日語られるが、彼らは、その星にいるかもしれない『何か』を探すべく、二人で秘密裏に組み込んだ乱数発生器がもたらすメッセージを待っていた。
それを彼らが受け取った時、世界は異変に包まれ、科学者たちは抗いがたい運命に翻弄されていく。

第14回小説現代長編新人賞最終候補になった本作を、友人たちの協力のもと全面改稿し、Kindleのダイレクトパブリッシングにて発売予定。また番外編として、未理亜の右腕であるヒューこと篠原日向が助手となった経緯が明かされる「彼女の波長、τタウより軽く」を収録しております。

2. BOOK

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3. DATA

2018年10月27日 第四回書き出し祭り参加
   12月22日 WEB掲載開始
2019年11月22日 第14回小説現代長編新人賞最終候補に選出
2020年2月22日 落選
2021年11月   KDPにて電子書籍販売開始予定


4. Selectors REVIEW

朝井まかて
「浮遊するランダム・ナンバー」、これも冒頭から既存の小説や映画の影響を感じたが、ただ一点のオリジナリティがあればと読み進めた。だが、作者のアイデアに構成や表現がついていかなかった。会話や心情描写、人間関係にまつわる描写も粗く、ゆえにどの登場人物も魅力が薄い。ただ、あらゆる齟齬を重ねても、ラストに向かう熱は感じた。その熱のままに、また挑んでください。
中島京子
「浮遊するランダム・ナンバー」 おおがかりな設定への果敢な挑戦に好感を持ちましたが、作品としては失敗していると思いました。タイトルは「レディ・バグ」であるべきだったでしょう。そして内容も未理亜という女性科学者自身が「バグ(誤り)」であると読める展開でなければ、過去に乗り込んで父親と関係を持ち娘(自分)を授かるというエレクトラ複合的な混乱を抱えた主人公を出す意味がないように思います。小説のテーマを整理する必要があると思いました。
宮内悠介
「浮遊するランダム・ナンバー」の鍵となるのは0と1を発信する乱数発生器で、これは「意識」を検知すると1に偏るという代物。この装置を宇宙探査機に乗せ、主人公は地球外生命体の発見を目論む。はたして、遠い惑星に送りこまれた探査機が、あるとき1の羅列を返してくる。と同時に、世界中で八十万人が消失する……。ファーストコンタクトにタイムスリップ、並行宇宙と全部盛りをしながらストーリーも読ませる力業で、大きな話を読む喜びがあった。ただ、なぜ意識を検知すると乱数が偏るのかといった諸々の理屈面は、ほら話でいいので、もう一歩それらしい理由を示してほしかったところで、その点がやや悔やまれた。
薬丸 岳
「浮遊するランダム・ナンバー」スケールの大きな、作者の熱量を感じるタイムトラベルもので、終盤までぐいぐい読み進めました。ただ、過去を変えても現在に反映されないというある設定が、あまりにも都合よく感じられて、終盤まで感じていた興奮が失速してしまった。他の選考委員からも同様の意見があり、惜しい作品だと思いながら、強く推しきれませんでした。

5. Readers REVIEW

まず、この小説は骨太な本格SFです。
それこそ、アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」やグレッグ・イーガン「宇宙消失」、あるいは伊藤計劃「ハーモニー」のような作品群に名を連ねても遜色の無いレベルの。
小説現代長編新人賞の選考委員、宮内悠介が「ファーストコンタクトにタイムスリップ、並行宇宙の全部盛りをしながら、ストーリーも読ませる力技」と評していましたが、全くその通り。
というわけで、一流のSFが読みたければ、一も二もなく、貴方はこれを読むべきです。
ですが、この作品の真の魅力はそういったSF仕掛けとは別のところにあると私は思います。
未理亜と娘とレディ・バグ。
彼女達がブレと重なりを繰り返すトリプルイメージが非常に危うい魅力を放っており、「だから、あなたを誘惑する」というキャッチフレーズがまさにふさわしい作品です。
どこか官能的な文体も相俟って、終始作品の向こう側から誘惑されているような感覚を覚えました。
「浮遊するランダム・ナンバー」というタイトルも見事です。「このストーリーならタイトルはレディ・バグにすべき」などと言っていた某選考委員は何も分かっていない!と敢えて言わせていただきます。
こんな作品が無料で読めてしまうなんて、本当に恐ろしいことだと思います。
最初に言いますけど、これ、私はお金出して買いますよ。
内容についてのレビューは他の皆さんのを参考にしていただくとして、せっかくなので別の切り口から。
まず、牽引力が尋常ではないです。
公募に出された作品とのことなので、一話ごとの文字数や引きなどは計算していなかったかもしれませんが、とにかく一話の引きがいい。絶対に続きを読みたくなる。
数日かけて読もうと思って夜に読み始めたのが運の尽きで、読み終えたら朝の4時ですよ。「続きはまた明日」ってのを許さない凄まじい引力に、読者はただただ翻弄されるだけになっちゃいます。覚悟して読みましょう!
それと、なんていうかな、機械への愛を感じます。機械というかなんだろうなぁ、ヒトじゃないもの。マシンだったりプログラムだったり数字の羅列だったり確率だったり、そういうものに愛情が注がれてる。
0と1を語るのに、こんなに愛を持って書く作者がいたかなぁ……って思うほど、「概念」や「無機物」「文化」のようなものに深い愛情を示してるんですよ(なんか私の日本語が変ですね。語彙力飛びました)。
そして登場人物たちの持つ優しさ。登場人物全員がびっくりするほど優しい。みんなそれぞれにベクトルは違うものの、どの人もみんな愛情深いんです。
最後に作者は読者に挑戦するかのように難問を残しています。
――本当のバグは何なのか――
読者によってその回答は変わるような気がします。
それがどう偏るか、それこそがランダムナンバーなのかもしれません。
太陽系外惑星探査プローブから送られてきた情報から始まる、誰もが予想もできなかった事態。
世界の異変を救うために、天才美女科学者のとった行動とは!
彼女は世界を救えるのか?
近未来SFとして世界設定と技術的詳細が見事だと思います。
主人公を含めた登場人物たちは科学者が多いのですが、その科学者達が専門家として人間として魅力的なのです。
そして、最後まで飽きさせない話の展開と構成であり、ミステリー風な展開のスパイスが効いて、それが最後の感動のクライマックスへ繋がる。
SF×ミステリー×パラドックスものが好きなあなた。きっとこの話にとりこになるに違いありません。



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