【紙の本で読むべき名作選#15】斎藤君子さんの「シベリア民話への旅」で電子書籍を越えてゆけ!
まず、こう叫ばせてください。シベリアの神話・民話の世界には、何か人類全体にとって大事なものがある!
「何か大事なもの」としかまだ言えない程度にしか、自分の中でも整理はついていませんが、
・「おむすびころりん」や「こぶとりじいさん」そっくりな民話があり、日本人のルーツがこの地域にあることを感じさせる!
・熊が「神」のような扱いを受けていることから、アイヌ文化との交流が感じられる!
・ワタリガラスが「創世神話」にまで関わってくる重要キャラであることが、アメリカ先住民との関連を感じさせる!
・そもそもシベリア民話には高名な人類学者レヴィ=ストロースが提唱した「野生の思考」そのままの世界観が活き活きと込められている!
などなど、人類史を考える上での重要なヒントになりそうなネタが、たくさん出てきます。
本書の著者、斎藤君子さんが仰る通り、「シベリアは(人類全体にとっての)神話・民話の宝庫」です!
そんなふうに語りたいネタが山ほどある重要エリアですが、なかなか日本では詳細な研究書が少ない。そんな中、本書を筆頭とする斎藤君子さんの著作はとても貴重な存在と思います。
とりわけ本書には、シベリア少数民族の食文化や狩猟生活の模様などいろいろな話題がエッセイとして盛り込まれていて、読んでいてとても楽しい研究書です。
だいいち、シベリアの神話・民話は、日本人にはどこか「なつかしい」素朴な自然崇拝が満ち満ちていて、とても優しい気持ちになれます(残酷な「死」がストレートに描かれる話もいっぱいですが)。
「研究書よりは、シベリアの神話・民話の代表的なものを、作品集として読みたい」という方には、同じ著者が岩波文庫で出している以下のものが、オススメです!
聞けば、シベリアの少数民族が持っているこのような豊穣な文化は、20世紀のソ連体制下でシベリア流刑にされたロシアの知識人や文化人によって「発見」されたとか。
20世紀の悲惨な政治史が生んだ逆説的な奇跡的出会いの成果としても、「シベリアの神話・民話」は私たちの心を揺さぶるのです!
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