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【日本-トルコ共同企画】薩摩の剣術「薬丸自顕流」(やくまるじげんりゅう)の稽古に体験参加してきました!#2

本記事は「薬丸自顕流」の稽古に参加させて頂いた体験談の第2弾となります(※前回の記事はコチラ)!

【序】実際に見てみた「ジゲンリュウ」:映画や漫画から受けていた印象との違い

薩摩の「ジゲンリュウ」といえば、一般的には、以下のような印象が強いのではないでしょうか?

刀剣を垂直に天に向けて構え、奇声を張り上げながら敵に突進し、力任せに相手を叩き切る豪快な剣術!」云々。

すなわち、こんなイメージです↓

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※『るろうに剣心』/和月伸宏(集英社)より

このたび薬丸自顕流顕彰会の稽古に体験参加させていただいたところ、実際に拝見できたのは、以下のような動きでした。

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駆けこんでいって、

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全身で踏み込む!

実際の動きを目にすると、映画や漫画に描かれているものは、オオゲサに誇張されてすぎているな、と感じました。実際のフォームは、体の使い方としてとても納得のいく、実戦的なものと気づきます。

たとえば、

・気迫を込めた声をあげるが、誇張されているような奇矯な声ではない
・腕で斬る、というよりは、全身のバネを使って木刀を振り下ろす

など。

特に後者についてが重要で、シロウトの私が見よう見真似で木刀を振らせてもらったところ、下半身が踏ん張れず、フラフラと揺れてしまいました。感覚としては、両足の親指の付け根あたりの微細なポイントで、全身のバネを支えるような感じがします。木刀と一緒に全身が躍動する感じです。

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↑私のようなシロウトがやると、このポイントで全身を支えられない

説明をいただいたところ、このフォームで迅速に打ち込むには、バレエのトウ立ちにも似た体幹が必要とのことでした。何度も木刀を打ち込む稽古をするのも、このフォームに特化した「カラダ」をつくるためのものなのかもしれません。

動きは一見シンプルながら、なかなかキレイにできるものではありません。

ともあれ、せっかくの機会だったので、何度かチャレンジさせていただいた上に、私の3歳の娘も飛び入り参加させていただきました

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「エイ!」「エイ!」と張り切って打ち込ませていただいた私の娘です。とても親切に教えていただき、感謝です!

【破】その他に気づいたこと:むしろ中世の戦場を想定している?

その他に気づいたこととして、

映画や漫画では「ひたすらこの動きだけを何百回もストイックに練習している」という描かれ方をしますが、実際の稽古にはいろいろなバリエーションがありました。

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このように、一人の稽古者の周りにいくつかの木の棒を立て、時代劇の立ち回りの如くそれらをなぎ倒して回る稽古や、

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このように、ヤリやナギナタを想定した長物に対峙するという稽古もありました。

複数人に取り囲まれたシチュエーションを想定したり、ヤリ・ナギナタとの対戦を想定したりと、なんだか日本刀の時代(江戸時代)よりもさらに昔の、室町時代や戦国時代の実戦を想定しているような印象がありました

映画でいえば、黒澤明の『七人の侍』の時代背景となっている戦国の戦場(刀どうしの対峙だけでなく、槍をもった相手との対峙や、集団に囲まれることが多い)をシミュレーションしているように見えました。

このように中世の実戦感覚を宿した剣術を子供の時から稽古していた武士たちが、幕末に実戦に投入されたわけです。なるほど幕末の薩摩が強かったわけです。

【急】どうして私たちは「ジゲンリュウ」に惹かれるのか?

このようにして、私にとっての貴重な体験稽古は終わりました。一月の寒い屋外でも、たっぷり汗をかき、熱くなった時間となりました。

それにしても、どうして「ジゲンリュウ」というものは、現代の我々にもこれほど魅力的に映るのでしょうか?

私自身のことを言えば、特に東郷平八郎や黒木為楨といった明治の薩摩人たちへの憧れのおかげと言えそうです。

海外交流をしている中でも、

・トルコには東郷平八郎の名前を子供につけた作家(ハリデ・エディブ)がいることを知ったり、
・アメリカには黒木為楨に感化された有名作家(ジャック・ロンドン)がいることを知ったり、

このように「世界に影響を与えた明治人」といえば、なにかと薩摩出身の方が登場することに、前から不思議さと憧れを感じておりました。まさにその東郷平八郎や黒木為楨らを育てた「薩摩の武士の伝統」が、ジゲンリュウというものの中に残っているのではないか?そういう期待が、私を引き寄せたと言えそうです。

そういえば、ちょうどこの体験稽古の最中にも、稽古中の方が一人、私に話しかけてきて、「東郷元帥も毎朝、自宅の庭で自顕流の稽古をして心身を晩年まで鍛えていたのだ」という逸話を教えてくれました(鹿児島出身の方から東郷平八郎元帥の話を語ってもらえたこと自体が、個人的にとても嬉しい思い出となりました。幕末明治の世界がリアルに迫ってきたような感覚!)

それに、歴史や伝統文化の話を抜きにしても、屋外で体を思い切り動かすというのは、やはりとても気持ちがよかった。屋外稽古というものをやることで、元気さとか、気持ちとか、そういうスナオなものが鍛錬されるような感触があり。そういう意味では娘に体験させてやれたのはとてもよいことだったと思います。体を動かせば、ココロも変わる、これは本当のこと。

機会があれば是非また、稽古に参加させていただきたいな、と思いました。そしていずれは本場の鹿児島県を訪問し、本場の稽古の雰囲気を見てみたいものです!

最後に:「ジゲンリュウ」に関わる参考文献

最後となりますが、いくつか参考文献をご紹介します。

私は本稿の中で、「自顕流」と「ジゲンリュウ」という二つの言い方を使い分けました。今回参加した薬丸自顕流顕彰会のワザについて解説するときは「自顕流」、一般のひとびとがイメージしているステレオタイプの剣術のことを言うときは「ジゲンリュウ」と表記しています。

というのも実は薩摩には「自顕流」と「示現流」という2つの「ジゲンリュウ」があって、映画や漫画で語れられているのはたいていその2つが混同されてしまったものである、というややこしい事情があるのです。

この辺りは私も自信をもって解説できるわけではありませんので、興味のある方は是非、以下の書籍を参考にしてみてください。

「幕末から明治にかけての薩摩」という魅力にあふれた世界を深く知りたい方には、詳しいものとしては以下がよいと思います。

また書籍ではありませんが、幕末明治の自顕流の稽古や、いわゆる「郷中教育」については、『大河ドラマ西郷どん』がとても詳しいのでオススメです。DVDになっていますが、NHKオンデマンドでも視聴できるようです(2020年3月現在)。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!