見出し画像

【ブックカバーチャレンジ】リーダーシップ系

今から約10年前、女性活躍推進の追い風もあってか、30代半ばで、周りより少し早く管理職に登用された。当時の私は、与えられた課題について要領よく成果をあげていた。しかし、複数の部下を率いてチームとして成果をあげることは、全くの別問題。根が小心者でガラスのハートの私には、とてもハードルが高く思え、性格的に無理なのではないかと思えた。

チームメンバーのタイプは多様だ。出身地、学歴、職歴はもとより、考え方や性格も違う。スタープレーヤーもいれば、なかなか難しいタイプの方もいる。自己主張が強すぎて和を乱すタイプ、メンタル的に大変繊細なタイプ、目を離すとすぐにサボるタイプ。

サークルの部長をやったり、複数の子供の子育てをしてきた人には、何ということもないのかもしれない。しかし、そのような経験のなかった私には、先達からのアドバイスが必要だった。そんななか、以下の本たちと出会った。多くが、世界的ミリオンセラーの名著である。

(※ブックカバーチャレンジとは何かについては、こちらの記事をご参照ください。)

1.『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)

上司より薦められた本。企業研修でもよく使われるらしい。単なるリーダーシップ論の域を超えて、どのように生きるべきかを問いかける書だと思う。個人的に印象に残っているのは、重要なことを優先すること、自分の役割に応じて目標を設定して自己管理をすること、相手に自分を理解してもらうには、まず相手を理解すること、そのためには感情移入して傾聴すること、などの習慣を身につけるということ。

2.『人を動かす』(D・カーネギー)

やはりこちらも世界的ベストセラー。人の立場に身を置き、聞き手にまわる、などのメッセージは、上記「7つの習慣」と共通点がある。印象に強く残っているのは、人を説得するためには、議論を避け、誤りを指摘せず、誤りを認める、というくだり。ただ、原題"How to Win Friends and Influence people"の邦題を「人を動かす」と付したのには少々違和感がある。

3.『ハーバード流ボス養成講座』(リンダ・A・ヒル/ケント・ラインバック) 

部下を持つ立場になったときに、職場の女性マネージャーの先輩が贈ってくださった本。優れたマネージャーになるための要素が分かりすい言葉で展開されている。影響力を与えるには、信頼される必要があり、独自の確かな人脈を築く必要があり、チームをマネジメントするために、将来像や仕事のやりか方を明らかにし、人材をマネージし、日常業務の準備、実行、反省する。丁寧な解説で腹落ちすることが多かった。

4.『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティテュート)

会社の研修プログラムでお知り合いになったプロのコーチの方から薦められた本。「箱」に入るという表現が難解に思え、読むのに時間がかかってしまった。問題がある人物自身には、自分に問題があるということが見えなくなり、その自己欺瞞が「箱」に入っている状態であり、「箱」の中にいると現実を見る目がゆがんでしまう。「箱」から出ることによって人間関係における問題を解決できる。人間関係上の問題に遭遇したとき、立ち止まって自分が「箱」に入っていないかを意識することが大切だと思った。

5.『異文化理解力』(エリン・メイヤー)

原語での表題が"The Culture Map"とされているとおり、いろいろな切り口で文化の違いを分かりやすく図表を使ってマッピングしており、ウロコが落ちる。欧米であっても決してひとくくりにはできない。日本の文化についても、たとえば、「空気を読む」などの表現が出てきており、大変よく研究されているなと思った。外資系企業や海外展開している企業の方には役立つこと間違いなしの一冊だと思う。

6.『リーダーシップ・チャレンジ』(ジェームズ・M・クーゼス/バリー・Z・ポズナー)

リーダーシップ研修のテキストとして配布された本。課題だと思うと、読み始めるのが億劫だったが、最高のリーダーとなるための5つの柱を実践せよということが、沢山の具体例を交えて書かれている。まずは、自分自身の価値観を自分自身の言葉で表現して、共通の価値観を確立する、とあり、いきなりハードルが高いな...!と面食らうが、確かに優れたリーダーはそれができている。リーダーとして一皮むけるために頑張って読むとよい本だと思う。

7.『リーダーを目指す人の心得』(コリン・パウエル)

原題は、”It Worked for Me in Life and Leadership”。リーダーシップ論を説くというよりは、コリン・パウエル自身が座右の銘にしてきた名言や逸話の紹介や、自らの体験談で、読みやすい。彼の陸軍士官や国務長官として経験に裏打ちされた13か条のルールはどれもわかりやすくて腑に落ちた。個人的には、①なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。④やればできる。⑫恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。⑬楽観的でありつづければ力が倍増する。などのメッセージに力づけられた。

8.『はじめのコーチング』(ジョン・ウィットモア)

コーチの資格を持つ方に薦められた本。まず、人が自ら選択し、選択したことに責任感を持たなければ、成果の向上は起こらない。そして、自ら当事者意識を持って選択してもらうためには、どのような質問をするか、ということが非常に重要である、と説く。これには大いに腹落ちした。そして、そこから、実際、どのような質問をすればよいのかの例を、タイトルどおり、コーチング未経験者にもわかりやすく丁寧に解説してくれる。質問のための「GROW」モデルも実践的。大変参考になった。

9.『採用基準』(伊賀泰代)

以上のグローバルな8冊とは少し毛色が変わるが、個人的には、日本におけるリーダーシップについてとても考えさせられた本である。図書館で偶然手に取ったのだが、これが大当たり。タイトルからすると人材採用のハウツー本をイメージするが、もっと奥が深く、日本で一般的に捉えらえれているリーダーシップのあり方について、一石を投じ、問題提起をしている。

日本では、リーダーは1人だけで後はフォロワー、というイメージが強いが、リーダーシップは組織の全員が発揮すべきものであり、組織の成果達成のために必要なことを全員が進んで行うほうが、高い成果を上げることができる。確かに、外資系企業では、役職や職位にかかわらず全員にリーダーシップの発揮を求めるが、社員の大多数が日本人であると、そのような理解がまだまだ浸透していないと感じる。まずは私の周りでカルチャーを変えていけるよう、リーダーシップを発揮できればと思う。

おわりに

これらのうち、多く(※「異文化理解力」と「採用基準」以外の7冊)は、人から薦められて読んだものだ。今まで勤めてきた複数の外資系企業では、リーダーになろうとする社員に、リーダーシップ研修やプログラムを積極的に提供してきたし、上司が部下に本を紹介するような文化があったと思う。本当にありがたい。

これらの本を読んでいると、優れたリーダー像とは、小手先の技術やノウハウなどを身に着けるだけでは到底足りず、熱いビジョンとともに高潔な倫理観、道徳観を持ち、説得的な言葉で話し、他人を理解し、思いやり、気持ちを鼓舞することができる、賢くてメンタルの強い人、ということになるように思う。結局、一言でいえば、リーダーは優れた人格者でないとつとまらないのだろう。

そう考えると、ハードルが高くてとても無理!と、ひるんでしまいそうになるが、会社からリーダーの任務を任されるということは、そのように成長することができる、という期待をしていただいているということだ。だとすると、できるところまでやってみようではないか。今後も、新たなチャレンジに臨むときなどに読み返していきたいし、これから私と似たような道を歩んでいく後輩たちにも紹介していきたい。

※女性のリーダーシップ本について選書した記事はこちら(↓)。


この記事が参加している募集

読書感想文

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。