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【読書録】『世界のニュースを日本人は何も知らない 2』谷本真由美

コロナ禍が始まって1年以上になるが、この間、コロナに関するメディア報道には、テレビなどのメディアで毎日、相当な時間が割かれてきたのは、皆さんご承知のとおりである。

この本の著者、谷本真由美氏は、本書『世界のニュースを日本人は何も知らない 2』(副題:『未曾有の危機の大狂乱』)において、日本ではなかなか報道されていない、諸外国でのコロナ禍での動向や、そこから見えてくる各国の国民性などを伝えている。結構、びっくりするような内容も多い。

著者の谷本氏は、本業は情報通信のコンサルタントであり、日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験があるとのこと。夫はロンドン大学の教授であるらしい。外国への滞在経験が豊富な筆者ならではの視点で、日本と海外を比較しているのが新鮮だった。この方の書いたものに接したのは今回が初めてだったが、他にもいろいろと海外と日本を比較して書かれたご著書があるらしいので、読んでみたいと思った。

本書は、薄い新書で、文章がとても読みやすいので、軽い読み物としてサクサク読める。しかし、その内容には、深く考えさせられるものが多かった。

特に、日本のメディアが、海外の政策を称賛し、それと比べて日本の政策が劣っている、というトーンで報道をすることがあるが、その際、日本のメディアが見過ごしている観点があると指摘し、具体例をいくつも挙げている。それを読むと、メディアを鵜呑みにしてはならず、多面的に情報を収集し、多数の論調にも疑問を持ちながら、自分の頭で考えることが重要であるなと考えさせられる。

マスク義務付けなどのコロナ対策に始まり、教育の状況、社会の格差など、いろいろな切り口で諸外国の実情を教えてくれる。自分が普段接している、日本のメディアによるニュースで切り取られた側面以外の現実世界がある、ということを知るために、ご一読いただくとよいと思う。

私が特に印象深いと思った記載を2つ、ここに記録しておきたい。

ポストコロナでは日本が脚光を浴びる
(中略)
 集団主義で従順で潔癖症な日本人は、このコロナ禍で多くの国の人々にとって「お手本」とみなされています。
 「他人に配慮できる」ということは、実はとても高度な文化です。相手の心や置かれた状況、自分の行動が中長期的に与える影響などを瞬時に判断し、予測するという「想像力」がなければ無理だからです。
 これは単に計算が早い、知識がたくさんある、他人を出し抜くのがうまい、といったことよりも、はるかに繊細な感覚と感受性を要求される能力です。
 日本人には、そういう資質を持った人がたくさんいます。これは他の国にはない重要な文化的資産です。それに気がついていないのは、今の日本の状況が当たり前だと思い込んでいる日本人だけです。
 ポストコロナの世界では、衛生環境がよく、統制がとれていて、地味だけど真面目で、自分よりも他人のことを考えようという国が、安全な「投資先」や「協力先」として大いに脚光を浴びていくはずです。
 それはまさに日本です!(p88-89)
なぜ日本のテレビは海外のいいところだけ紹介するのか?
(中略)
 私は本業で海外のセキュリティ事情を調べたり、オンラインラーニングの調査やコンサルティングを行ったりすることがありますから、先進事例を取り上げたくなる気持ちはわかります。そのほうが「ウケる」からです。
 しかし問題なのは、マスコミでコンテンツを作成する人々のなかで、実際に海外で生活したことがある人は少なく、海外は日本よりも何でも進んでいると思い込んでいる人が多いということです。今回の新型コロナ対策でもよくわかったように、実は日本のほうがはるかに進んでいる分野も多いのです。
 この「海外=すごい」という幻想にこだわるのは、番組を制作している人たちが一九八〇年代的というか、バブルの頃のノリがまだ抜けていないせいではないかな、と思われます。
 おそらく現在、マスコミで企画に関わったり意思決定をしたりする人々がバブル世代であったり、それより多少若い団塊ジュニアであったりすることと関係しているのではないでしょうか。
 私も団塊ジュニアですが、彼らが若かった頃は日本よりも海外の方が凄いという論調が主流だったのです。(p98-99)

諸外国に比べて日本が劣っているところを謙虚に受け止め、努力することは重要だ。しかし、メディアによって切り取られた、海外の良さげなところばかりを羨ましがり、それに比べて日本が至らない、と単純に決め付けるのではなく、他国と比べて日本が優れている点をしっかりと認識して、その良いところを失わず、さらに伸ばしていければよいと感じた。

ご参考になれば幸いです!


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