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【読書録】『マーケット感覚を身につけよう』ちきりん

私の尊敬する「ちきりん」さんのご著書。2015年発行。ちきりんさんについては、少し前の記事で、彼女のGo toキャンペーンについての鋭い考察をご紹介したが、お読みくださった方には、彼女が優れたマーケット感覚をもっていることがお分かりいただけたのではないかと思う。その彼女が、マーケット感覚とは何か、それを身に着けるにはどうすればよいかを惜しみなく共有してくれる一冊。

わかりやすい具体例がふんだんに使用されていて、「なるほど、確かにその通り!」と、ことごとく腹落ちする。ご興味のある方には、ぜひ、本書を手にとって、社会の市場化の例や、マーケット感覚を活かせている例、活かせていない例などを読んでみていただければと思う。

市場化する社会とマーケット感覚

市場(=マーケット)とは、需要者と供給者がお互いのニーズを充たす相手とマッチングされ、価値を交換する場所(p16)。

社会が市場化している(p36-)。インターネットの普及によって、マッチングが用意になり、相対取引から市場取引に移行した(p48)。

市場の動向をイチ早く見極めるためのマーケット感覚と、需給バランスの変化に合わせて、自分のスキルや専門性をシフトするための柔軟性や決断力が重要になる(p71)。

自分が高く売れる市場はどこなのかという市場の選択が重要であり、その選択にはマーケット感覚が必要(p94)。

全ては価値からはじまる

マーケット感覚の中で重要なのは、市場で取引されている価値について正確に見極める力(p106)。

非伝統的な価値も取引される市場では、ごく普通の人でも価値の供給者になれる。普通の人も「売れる価値」を持っている(p128)。

もともと存在していたモノの中に、新たな価値が見いだされ、巨大な市場になったものがある。その潜在的な価値に気づく能力こそがマーケット感覚(p142)。

マーケット感覚を鍛える5つの方法

本書の副題になっている、「これから何が売れるのか? わかる人になる5つの方法」について、ロジカルかつ説得的に教えてくれる。

①プライシング能力を身につける(p146-)。自分の基準で妥当な価格を判断する能力。一物一価に慣れてしまうと、自分独自の価値基準が形成できない。値札や相場は他者の判断でしかない。妥当な価格は買い手によって異なり、実は、一物多価。コスト積み上げ発想から脱皮すべき。

②インセンティブシステムを理解する
(p166-)。人の言動の背景にある要因や、その要因が言動につながるまでの仕組み。市場における需要者や供給者が何に基づき次にどんな行動をとるのか推測し予測する力につながる。自分の欲望センサーを磨けば新たな付加価値への気づきとなる。問題に直面したとき、規制を強化するよりもインセンティブシステムを活用した問題解決の発想を身に着ける。

③市場に評価される方法を選ぶ
(p181-)。社会の市場化により、組織による評価から市場による評価へと移行している。組織の中で選ばれるスキルではなく、市場に選ばれるスキルを意識する。組織型の「決めてから→やる」「作り込み能力」ではなく、市場型の「やってみて→決める」「素早い行動力と迅速な意思決定」のほうが重要。技術や消費トレンドの変化のスピードが速くなっているため、「とりあえずやってみる」人のほうがチャンスが大きい。

④失敗と成功の関係を理解する
(p198-)。失敗とは、成功の反対概念ではなく、成功に不可欠なステップ。組織からの学びだけではなく、市場での実践経験による学びが重要。「とりあえずやってみる→失敗する→市場からフィードバックを得る→それを参考にして、もう一度やってみる」というプロセスを繰り返す。

⑤市場性の高い環境に身を置く
(p214-)。 世の中には市場性の高い環境と低い環境があるので、マーケット感覚を鍛えるには市場性の高い場所に身を置く。すべての人がマーケット感覚を学ぶことを意識的にキャリア形成のプランに組み込むべき。

変わらなければ、替えられる

変わらなければ、替えられる(p229-)。

マーケット感覚を鍛えるには、意識的に市場性の高い環境を選ぶ(p238)。

一生ひとつの専門性は無理(p244)。10年、20年、時には数年ごとに学び直し、一生の間に複数の専門性を身に付け、変わり続けるべき。ひとつの専門性の習得に、あまりに過大な時間や資金を投入してしまうと、ようやく身に付けた専門性を守りたいという気持ちが大きくなりすぎ、変化を受け入れがたくなってしまい、結果として時代に遅れてしまう。

学び

今後、市場化した社会で成功するためには、市場の需要者の価値基準を読み解き、潜在的な価値に気づき、トライ&エラーでとりあえずやってみながら、勝負すべき市場を選び、市場の変化を察知し、売るモノやスキルも、迅速、柔軟に変えて対応していく、ということだと受け止めた。

また、最後の、「一生にひとつの専門性では無理」というくだりは、以前記事に書いた『LIFE SHIFT』に書かれていることとも共通する。人生100年時代に突入し、「まだ学び続けないといけないのか......大変だ。」と悲観的に考えるか、「まだ学ぶことができるのか、楽しいな。」と肯定的に受け止められるか、その捉え方の違いで、結果に大きな違いが出るのだろうなと感じた。

※以前に紹介した、ちきりんさんのGo to トラベルに関する考察についてご紹介した記事はこちら。

※『LIFE SHIFT』の読書録はこちら。

※ちきりんさんの別の著書『自分の時間を取り戻そう』の読書録はこちら。


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