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ドナウ 小さな水の旅

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セルビア、ベオグラード在住の詩人・翻訳家、山崎佳代子さんの新連載がはじまります。歴史や詩、山崎さんの出会う人々とともに、ドナウの支流をたどる小さな旅。およそ12回、各地の写真を添…
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#エッセイ

#10 ニーシュ、歴史の地層を訪ねて【後編】

#10 ニーシュ、歴史の地層を訪ねて【後編】

セルビア、ベオグラード在住の詩人・翻訳家、山崎佳代子さんの連載。歴史や詩、そして山崎さんの出会う人々とともに、ドナウの支流をたどる小さな旅。今回の舞台は2つの世界大戦で傷をおった土地ニーシュめぐるエッセイの後篇です。

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小さな空、弱い光

 ニシャバ川は、ニーシュの中央を流れていく。川の北にチェガルの丘が町を見下ろし、町は南へ広がる。

ニシャバ川

 ニーシュについて書きたいと、詩人

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#04 茜色の大聖堂、ジチャ修道院を訪ねて

#04 茜色の大聖堂、ジチャ修道院を訪ねて

セルビア在住の詩人、山崎佳代子さん連載『ドナウ 小さな水の旅』。歴史の荒波の中で17回破壊され、そのたび復興した平地の大聖堂、ジチャ修道院へ向かいます。

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「午后四時、晩祷。午后五時、小食堂にて、一人の夕食。人参サラダ、ビーツサラダ、野菜スープ、パン。まろやかな味。その後、夕暮れの果樹園にむかう。帰り路は闇に沈み、果樹が影を大地に伸ばす。あぜ道をライカとミルカが駆けていく。午后七時時半、

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#03 船の旅、『ドリナの橋』を訪ねて ヴィシェグラード

#03 船の旅、『ドリナの橋』を訪ねて ヴィシェグラード

セルビア在住の詩人、山崎佳代子さん連載『ドナウ 小さな水の旅』更新しました。今回は、ノーベル賞作家イヴォ・アンドリッチの小説『ドリナの橋』の町であるヴィシェグラードへ船に乗って向かいます。陽気なガイド役のゾラン氏、水の流れとともにセルビアの自然と歴史をたどる旅。

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「橋は、アンドリッチ文学の核を成す。世界の無秩序、死、無意味を克服し、希望の「彼岸」へ橋を架け

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#01 移動の詩人ベンツロビッチ、ラーチャ川からドナウへ

#01 移動の詩人ベンツロビッチ、ラーチャ川からドナウへ

セルビア、ベオグラード在住の詩人・翻訳家、山崎佳代子さんの新連載。歴史や詩、そして山崎さんの出会う人々とともに、ドナウの支流をたどる小さな旅。各地の写真を添えて、お送りします。              セルビア、ベオグラード在住の詩人・翻訳家、山崎佳代子さんのエッセイ。ドナウへ流れる「水」をたどって、信仰につづく道へ。        

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「やがて薄闇に、青く視界が開け、遥か下にドリナ川

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#00 はじめに 物語は流れはじめる

#00 はじめに 物語は流れはじめる

セルビア、ベオグラード在住の詩人・翻訳家、山崎佳代子さんの新連載。歴史や詩、そして山崎さんの出会う人々とともに、ドナウの支流をたどる小さな旅。各地の写真を添えて、お送りします。
ヨーロッパを代表するドナウ川を巡る「水」にのって、とおくセルビアへ。

「それぞれの土地が、セルビアに生きる人々の記憶をドナウに繋がる水面に、映しはじめる。」

ドナウにそそぐ水たち  セルビアの小さな旅

 水のある情景

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