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「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」感想

三島由紀夫のドキュメンタリー映画

夫に誘われ、「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」というドキュメンタリー映画を観に行った。

映画館の鑑賞代は高いので、よほど惹かれる要素がない限り観に行かないのだが(地上波とかWOWOWで放送されるまで待つタイプ)、今回の映画は予告編を見ただけで絶対行きたいと思った。

まず、三島由紀夫という人間にすごく興味があったこと、そして、1960年代学生運動に熱狂した彼らについて知りたかったから。

結論を先に述べると、あの映画を十分堪能するには私はその背景を知らなさすぎた。

趣味が読書といいながら、そんなに三島の作品を読めてないし、三島と東大生の会話が高レベルすぎて付いていけないところも・・・。

でもそんな私でも面白いと思えたので、浅学なりに感想を述べたいと思う。

(※ネタバレありなのでご注意!!)

出てくる男たちがみんなカッコイイ

いきなり、ミーハーな感想ですみません。(笑)

三島由紀夫はもちろんのこと、全共闘の学生たちがみんな魅力的だった。

まず東大生だけに、頭のいい男はカッコイイ。(※三島も東大卒)

やはり、出演者が魅力的でないと見る気がしないですよね。(笑)

しかもプロの俳優ではないのに(三島は俳優業もしていたそうだが)、一介の大学生である木村修、芥正彦、小阪修平の3人ともルックスが良く、立ったり座ったり喋ったりしているだけで絵になるのだ。

そうじゃないと映画として成立しないと思うし、ここまで話題にもならなかったのではないか。

これは本当にすごいことだと思った。

おじいちゃんになっても素敵

キーポイントは、”50年”という歳月である。

この映画では、元全共闘のメンバーたちが70代になった現在、インタビューに答えている。

特に印象に残っているのが、三島に直接この討論会のオファーを出した木村修と、舌鋒鋭い論客だけど赤ちゃんを連れた若いパパというギャップが印象的な芥正彦の二人。

ということで、彼らについてクローズアップした感想を書きたい。

(「元全共闘E」とされる小阪修平は東大中退後、哲学や現代思想などの評論者として活躍。2007年に急逝心不全で急逝したため、彼のインタビューを聞けなかったのは残念である。)

元全共闘A 木村修

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木村修(きむらおさむ)
1947年生まれ。東大焚祭(ふんさい)委員会の主催者。討論会のため、三島に直接連絡を取った張本人。討論当日、学生服で司会をしていた。東大農学部農業工学科卒業後、地方公務員となる。定年退職後は三島についての研究を続けている。

この方、全共闘の代表の一人とは思えないくらい、おぼっちゃんオーラがすごいです!!

東大生というより、幼稚園から大学までエスカレーターで学習院に通ってそうな感じ。

上品でおっとりとした顔立ち、そのまま銀行とかに就職できそうな七三分け、そして大学生なのに似合う学ラン。(この学ランは行儀良さの象徴ではなく、当時、保守主義、反動主義といわれる右翼陣営が着る服装として認識されていた。反動的と指摘され、途中で学生服を脱いだとのこと。)

そして、敵であるはずの三島を冒頭で「三島先生」と呼んでしまい、場の空気を和ませます。こういうところにも育ちの良さが感じられるような・・・。

私はそういう男性が好きなので、50年後、木村氏がどんなおじいちゃんになっているのか、ワクワクしながら観ました。

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予想通り、品のいいおじいちゃまでした。

50年経っても面影があるし、全共闘という過激な活動をしながらも東大を卒業し、地方公務員を勤めあげたという経歴を見ると、とても真っ当な人生を歩まれています。

定年退職後は三島の研究をされているそうで、生前の彼を知る一人として、そんな余生を選ぶのもわかる気がします。

「東大焚祭」の後、三島から電話がかかってきた時にその時の状況を聞かれ、「ガールフレンド(現在の奥様)といる。」と答えたら、「代わってほしい。」と言われ、三島が奥様に「彼を愛しているか?」と聞いたというエピソードがすごく素敵だなと思いました。

大学時代からお付き合いのある女性と結婚して、現在も夫婦仲良く暮らしているところも納得でした。

元全共闘C  芥正彦

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芥 正彦(あくた まさひこ)
1946年生。‘67前衛劇団を主宰、自ら作、演出、主演で『太平洋戦争なんか知らないよ』でデビューし、『ぼくのモナリザ・まぬけ大通り』『Oh!イエローサブマリン』『誕生パーティ』と約1年間に連続4作品を上演、大島渚(‘67)土方巽(‘68)寺山修司(‘68)三島由紀夫(‘69)と劇的に出会い合う。代表作に『空間都市』(‘69)、『形態都市』シリーズ、『ホモフィクタス宣言』があり、その後舞踏オペラ『天皇劇』シリーズ、『アルトー劇』シリーズ。現在はメタ=ドラマシリーズに取り組んでいる。最新作にノイズオペラ“60年代からの手紙”『灰と、灰の灰』(2019)。
ホモフィクタス主宰。劇作・詩・演出・舞踊・俳優・アートパフォーマーと活躍は多岐にわたる。

この方は、背が高くて肩幅もあって、飄々とした感じがなんともかっこいいです。(三島にさり気なくタバコの火を点けてあげる仕草も良かった)

三島相手にまったくひるむことなく自然体で討論できてるし、言ってることが一番難しくて理解するのに苦労しました。(苦笑)

そして「戦いの場」に場違いとも思われる赤ちゃん(長女)を連れてきている点でも、聴衆の注目を浴びます。

この赤ちゃん、芥氏にだっこされている間は泣かない大人しい子で(カットされてるかもしれませんが)、彼女の存在は議場の刺々しい空気をガラッと変えました。

この赤ちゃん連れが芥氏の作戦だったとしたら、とんでもない策士です。

映画でも天才と評されていますが、頭が切れるだけでなく、アーティスティックなオーラがすごくて、「この人、絶対官僚とか公務員とかサラリーマンにはならないタイプだな」と思っていたら・・・。

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50年後・・・ただのおじいちゃんではありませんでした。

70代になってもその勢いはとどまるところを知らず、前衛的なオーラはさらに増すばかり。

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なんとTwitterもフルに活用されてます!!スゴイとしか言いようがない・・・。

印象的だったのは、インタビュアーに三島の死について聞かれ、「本人にとって本懐で、良かったんじゃないですか?」みたいなことをキッパリ言い切ってるところでした。

やはり芸術家は言うことが違います。

東出昌大のナレーション

例の騒動で叩かれまくりの東出氏ですが、私は俳優としての彼が好きです。

今回の映画のナレーションもいい声で素敵でした。

彼を応援しているので、これから徐々に仕事が増えることを願ってやみません。

総論

というわけで、ミーハー女子視点から見た、「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」の感想でした。

私は「有名人などが過去の映像を振り返りながらインタビューする」という企画がたまらなく好きなんですね。

この映画を観て一番に思ったことは、「もっと本を読まなければ」ということでした。

(三島は「サルトルが大嫌い」と言いながら、サルトルの著書の一節をスラスラと述べるシーンがあってカッコイイと思いました。嫌いなのにちゃんと読んでるところが偉い。)

では早速三島の作品を・・・と思いつつ、いっぱいありすぎて迷ってしまいますが。(苦笑)

おまけ:三島ゆかりの地に行ったレポート

三島由紀夫が自決した場所ということで、あまりにも有名な市谷駐屯地。
現在その地は防衛省と名を変え、三島事件の舞台となった建物は移築され当時の姿を残しています。
2020年1月、防衛省見学した様子をブログ「サユリスト.com」で紹介してますので、是非ご覧ください。
「【防衛省見学ツアー】極東軍事裁判や三島事件の現場を体験」

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