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[小児科医ママが解説] おうちで健診:よくある離乳食Q and A。離乳食にまつわる情報まとめ。

「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。

今回は離乳食について。

6~7ヶ月のフライヤーでは「離乳食を始めたが、食べてくれなくて心配」という項目がでてきましたが・・・
ぶっちゃけ「食べてくれない」以外にも、離乳食の悩みって本当につきないですよね。

離乳食をはじめるタイミングからはじまって、回数や1回の量、メニュー、手作りかレトルトか問題、なぜか食後に吐く、離乳食はじめてから便秘・下痢、食べたら口周りが赤くなってアレルギーなのかどうかわからん、卵をはじめていいのか不安・・・

外来でもオンラインでも、離乳食のお悩みは山ほど聞かれます。

ものすごい乱暴な言い方をしちゃうと、ぶっちゃけ、お子さんの体重が・お子さんなりの成長曲線をえがいて増えて、毎日元気にしてくれていれば、小児科医的には、もうなんでもいいです。

くり返します、上記はめちゃくちゃ乱暴な言い方です。

が、○ヶ月で○回食とか、おかずは○品がいいのかとか、毎日決まった時間がいいのかとか、そんなことは医学的に絶対これ!という科学的根拠のある方法はないんです。


そもそもこっちがめちゃくちゃ考え抜いて提供したところで、すべて吐き出された・投げ飛ばされた、で終了。みたいなのもザラなのが離乳食です。

いろんな育児書やネットにあふれている情報の中から、親御さんが納得できる方法・お子さんにもムリせず取り入れられる方法にめぐりあえること。

その結果、お子さんの体重が増えること。
親御さんもお子さんも、
なるべく笑顔でおだやかに過ごせる時間がふえること。

それでOKなんです。


・・・といっても難しいので、今回は、離乳食にまつわるよくある質問をピックアップして、お答えします

そして文末に、小児科医として「これだけは知っておいてくれたら嬉しい!」と思う(ある程度エビデンスにもとづいた)情報リンクをまとめておきます。


Q.離乳食を始める目安は?

A.一般的には生後5~6ヶ月から。ほかにも目安となるサインがいくつかあります。


離乳食を始める時期については、たぶんみなさんもご存知のとおり、

厚生労働省は生後5~6ヶ月ころから。
世界保健機関(WHO)は(遅くとも)生後6ヶ月から。

という文言があります。

たしかに赤ちゃんの消化機能や、舌を使って押し出そうとする口の神経の反射のよわまり、お母さんから受けついだ鉄が不足してくる、動き出してきてそろそろ母乳やミルクだけのカロリーでは不足してくる・・・

といった事を考えると、上記が妥当です。


なかには生後4ヶ月後半で、どーーーしても母乳やミルクを拒否してしまい、全然体重が増えなくなってしまった。
そんな場合は、赤ちゃんの体重を増やすことを優先して、早めに離乳食をはじめることもあります。
体重増加の目安、ふえないときの受診の目安などは、過去の記事を参照ください。)

ほかには以下のサインも参考になります。

【赤ちゃんが、離乳食の準備ができていそうか、のサイン】

●首がしっかり座って、支えていればお座りできる。
首すわりお座りについては、それぞれ過去の記事を参照ください。

手でオモチャを口にいれる。
口腔過敏がないという目安にもなります。

●食べ物を見るとその方向にのりだして、口をあける。
赤ちゃんの気持ち・興味が、一番大事です。

「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」阪下和美、東京医学社、2017年



Q.離乳食の、回数や量をupするタイミングがわからない・・・。

A.回数や量も、絶対的なエビデンスはなし。胃のサイズは体重✕30mL。1日何回かにわけてトライできれば、それでOK。


厚生労働省の文言をはじめ、育児書などにも書かれている量や回数は、あくまで目安です。

体が大きくなるにつれて、ミルクや母乳だけではまかなえなくなった、栄養素やカロリー。それを1日のうちで、それを何回かにわけて取れればそれでOK!という気軽な感じでとらえていただきたいです。


たとえば生後7ヶ月の赤ちゃんの場合。

厚生労働省の指標では、1日600kcalくらいの摂取が目安です。

そしてもし体重7kgだとしたら、胃の容量は210mL(体重✕30mL)くらい。1回にとれる食事の量は、水分とあわせて210mLが限界です。

生後7ヶ月だと、離乳食は2回という目安が多く書いてありますが、別に2回にこだわる必要はありません。

一日600kcalくらいを達成するために、母乳やミルク以外にとるカロリーを、1日何回かにわけて、こまめにかせいでいくイメージです。

赤ちゃんの消化機能は未熟ですし、まだ母乳やミルクをたっぷり飲んでいて良い時期です。
離乳食の前後でとる母乳やミルクのことをふまえると、さらに、赤ちゃんが1回に口からとれる食事の量は、意外と結構すくないです。


なお、母乳やミルクをたっぷり飲んで、それだけで1日600kcal達成している、という場合もままあると思います。

その場合は「(離乳食で)カロリーを補充する」というのではなく、「(とくに母乳の場合)どうしても不足しがちな鉄やビタミンDを摂取する「いろんな食材や食感に慣れていく」というのが、離乳食の目的になります。
モリモリ食べる必要はないわけです。

こういう意味で、教えて!ドクターのフライヤーでも「食べなくても心配ないですよ」と伝えてくれているんですね。


ほか詳しい情報は、WHOの情報がベースになっている下記のリンクを参照ください。

【ちょっと理系な育児 ホームページ】
●離乳食の回数の決め方
●WHOが定める(離乳食の)質・量・頻度
●(離乳食の)量の計算方法
●離乳食の1回食・2回食という考え方はもう古い?


Q.卵・乳・小麦など、アレルギーが心配な食材は、遅らせたほうがいい?

A.どんな食材でも「遅らせる」ことが「絶対にアレルギー発症予防になる」というエビデンスはない。


とくに3大アレルゲンとよばれる卵・乳・小麦。

食べさせて症状が出るかもしれないので、食べさせるのが怖い。早くに食べさせたらアレルギーになるから、遅く始めたほうがいいのでは?そんなご意見もききます。

医学的な結論としては「どんな食材でも、早けりゃいい。遅くすりゃいい。そんな単純な研究の結果はでていない。離乳食をはじめたら、少しずつ・色んな食材を試していって。」ということです。


生後4ヶ月などの「むしろ早い時期から、卵を食べさせることで、将来の卵アレルギーの発症を予防できるのではないか?」という研究の報告はいくつかあります。

【PETITスタディ】
https://pediatric-allergy.com/2017/06/26/post-2903/
https://pediatric-allergy.com/2016/12/10/post-282/

【BEATスタディ】
https://pediatric-allergy.com/2016/10/27/post-243/


一方で「早くから卵を食べても、将来のアレルギー発症は予防できなかったよ」という報告もあります。

【HEAPスタディ】
https://pediatric-allergy.com/2016/10/26/post-242/

これらの研究の対象は、もともとアトピー性皮膚炎と診断されたお子さんだったり、卵の加熱方法や量なども細かく指定されていたりしています。
「一般的にすべてのお子さんで、卵は早く食べたほうがいいよー!」というには、まだまだ情報がたりません。


少なくとも、(卵・乳・小麦もふくめて)色んな食材を生後4ヶ月など早くから試してみても、絶対にアレルギーになりやすいという報告はない。
そして逆に遅らせたからといって、必ずしもアレルギーになりにくいという報告もない

という見解は、世界で一致しています。
https://pediatric-allergy.com/2016/06/24/post-148/
https://pediatric-allergy.com/2016/03/12/post-50/


なおWHOは離乳食スタートを(遅くとも)「生後6ヶ月から」としていますが、これは別にアレルギーを発症させないためにこの時期にしているのではありません。

前述のとおり、お母さんからの鉄もなくなってくるし・母乳だけじゃカロリー足りなくなってくる時期だし・・・という意味でこの時期にされています。

というわけで、医学的には「卵・乳・小麦だからといって、ほかの食材よりもあえて遅らせる・早くする必要はない」ということです。

ただし、たしかに卵・乳・小麦は3大アレルゲン。
3歳までに20%くらいのお子さんが何らかの食物アレルギーを認めるとされる状況で、卵・乳・小麦を全部あわせると、アレルゲンの食材の70%を占めます(食物アレルギー診療ガイドライン2016)。

なので、初めて食べさせるときや、量をupするときには、こうした食材は注意をしていただきたいです。(下記のQ and Aを参照)


Q.新しい食材は毎日あげてもいいの?量は毎日upしていいの?

A.医学的な・絶対的なエビデンスはなし。ただし、とくに卵・乳・小麦、また新しい食材を試すとき・量をupするときは「平日の午前中に」。


育児書などにも、○日あけて、あるいは○日ごとに○gずつあげて・・・などと書いてあるものもありますが、医学的に確固たるエビデンスはありません。

基本的には、毎日量をあげていってもOKだし、毎日新しい食材をあげてもいいんです。

ただし、とくに卵・乳・小麦といった3大アレルゲンや、新しい食材を試すとき、また量をupするときは「平日の午前中に」行ってください。


食物アレルギーの症状は、一番多い皮膚の症状もふくめて、一般的には食後すぐ~15分以内などすぐ出ることが多いです。

しかし赤ちゃんの消化機能は未熟なので、腸から食材がとりこまれて・全身のアレルギーの症状が出るまで、時間がかかることもあります。

それも踏まえて、食物アレルギーの症状は「食後2~3時間までは注意して見ましょう」というのが一般的です。(食物アレルギー診療ガイドライン2016)


たとえば、お昼の11時ころに食べた食材なら、その2~3時間後つまり13~14時くらいまでは、症状が出る可能性があります。

かかりつけや近所の病院で、日中と同じ医療スタッフの数や設備で対応できる時間帯を考えると、新しい食材や量upは「平日の午前中に」していただけると、お子さま・医療者としてもwin winというわけです。



Q.食べたら口のまわりが赤くなった!食物アレルギーなの?

A.必ずしも食物アレルギーではなく、食物が直接ふれたことによる、接触性皮膚炎やよだれ皮膚炎のことが多いです。


食べたら口周りが赤くなった・・・というのは、必ずしも食物アレルギーではないケースのほうが多いです。

食べ物や調味料、そのほかよだれなどが、肌に直接ついてしまったことで、一時的に皮膚炎を起こしている場合が多いです。
いろんな食材で、同じように赤くなってしまう場合は、とくにこのようなケースが考えられるでしょう。

離乳食を始める前に、口周りにプロペトやワセリンを塗って、皮膚を保護してあげることで、食材やよだれが肌につくのを防ぐことで、症状やわらぐお子さんもいます。

特定の食材で、口周りが赤くなるという場合は、その後もどれくらい同じ症状がくりかえされるかなどを、総合的に判断して、アレルギーかどうか・摂取を制限する必要があるかなどを考えていきます。


Q.離乳食をはじめたら、母乳やミルクは、減らしたほうが良い?離乳食の前には、飲ませないほうがいい?

A.食べさせるために母乳やミルクを減らすのは、体重や発達を考えると、安全な方法ではありません。離乳食の前に、母乳やミルクを飲んでもOKです。


これはもう完全に日本語のネーミングの問題ですが、「離乳食」って本当は「離乳」のためではないんです。
世界的には「補完食」と呼ばれるのを聞いたことのある親御さんもいると思います。

つまり、体が成長してきて「母乳やミルクだけでどうしても不足してしまうカロリーや栄養素を、補うための食事」が本来の意味です。

なので「離乳食をとらせるために、母乳やミルクをへらす」というのは本末転倒なんです。

むしろ離乳食がすすまず・体重が伸び悩むようなお子さんは、ベースとなる母乳やミルクをしっかりあげることも、大事なんです。
食事では十分なカロリーや栄養素がとれないので、ここでムリに離乳させると、体重や発達に影響が出る可能性もあります。

離乳食の前に母乳やミルクをあげちゃいけない、と思っている・言われたという方もいらっしゃいますが、これも別に根拠はありません。

お腹がすいて不機嫌MAX!!!なときに、離乳食をむりやり食べさせても、進むかどうか・・といわれると微妙です。
それなら母乳やミルクを少しあげて、ご機嫌ととりもどしてあげたから、食事をあげたほうが進むこともあります。


なお「離乳食を全然たべないから、フォローアップミルクをあげたほうがいいのか」というのもよくいただく質問です。
「基本的なカロリーをかせぐには(フォローアップではなく)普通ミルクのほうが適している。フォローアップミルクは、魚や肉などのタンパク質を全然取ってくれない!というお子さんに向いている」ということを過去の記事にも書いているので、参照ください。



Q.離乳食のあとに吐く(でも元気)。これって何よ?

A.1回量が多い。ゲップと一緒に戻ってきた。実は便秘。などが多い原因です。

離乳食はもぐもぐ食べたのに、その後マーライオンのようにリバース。でも本人はニコニコしてケロっと元気・・・離乳食をはじめてから、こんなことがよくある気がする。原因は何?というご質問もよくいただきます。


これについても医学的な検証の報告はなく、それぞれ○%くらいの割合でいる、というのは申し上げられません。

おそらく ①1回量が多い ②ゲップ ③便秘  あたりが多い原因かと思われます。1つずつ見てみましょう。

【吐いちゃう原因① 1回量が多い】

●育児書などの1回量や回数は、あくまで目安です。
その時のお子さまの消化機能、どれくらいのスピードで食べたのか、ほかに(母乳やミルクを含む)水分を食事の前後でどれくらいとったのか・・・などなどで、お子さまの胃が受け入れられる量は変わってきます。

●お子さんが不機嫌にならない程度に、1回量を少しだけ減らしてみて、そのかわり1日の食事の回数を3回から4回にするなど、少しずつ・こまめにあげることで、嘔吐が改善されるケースもあります。

●食材の形態やサイズについては難しいところです。
丸のみして・すごいスピードで食べてしまうお子さんについては、それも嘔吐の原因になるので、食べるスピード・ペースをゆっくりにする目的で、形態やサイズをアップすると、効果が出るお子さんもいます。

が、形態やサイズを変えると、食事自体を嫌がってしまうケースもあるので、こういう場合はムリに変えなくてもOKです。

●また離乳食のために母乳やミルクを減らすのは本末転倒だと前述しましたが、食事の前後で、母乳やミルクなど、水分をあげる時間をすこし空けてみるのは一つの対策です。


【吐いちゃう原因② ゲップ】

生後1年間くらいは、ゲップとともにゲボーと戻してしまう、という現象はよくあります(胃食道逆流)。
胃と食道の境目になる筋肉もまだ発達していないこと、食事のときに一緒に空気を飲んでしまいやすいことなどが原因で、これ自体は病気ではありません。

●ときに摂取してから1時間以上たった後だったり、マーライオンにみたいに勢いのある嘔吐だったりしますが、お子さまの機嫌がよくケロッとして、ほかに症状がない場合は、様子をみられます。


とくにまだ母乳やミルクを飲んでいる場合の対策としては、以下があります。
●授乳の途中でもゲップさせる
・哺乳瓶の場合は、60-90mLのんだら、一度ゲップ。
・母乳の場合は、片乳が終わったあとに、一度ゲップ。
●哺乳瓶の場合、乳首から出るミルクのスピードを遅くする(乳首のサイズを小さくする)。
●(なかなかゲップが出ない場合)赤ちゃんをあお向けに寝かせて、足を自転車をこぐように動かす。おちついた・安全な状況なら、そのままうつぶせにして、またあお向けにもどす。

また1回の食事や飲水量が原因になることも多いので、①と同様に、1回あたりの量をすくなく・逆に回数を増やしてみるのも一つの手です。

●米国小児科学会:"Why Babies Spit Up"、"Breaking Up Gas"
●「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」阪下和美、東京医学社、2017年


【吐いちゃう原因③ 便秘】

離乳食をはじめるタイミングは、便秘になりやすいタイミングでもあります。

これまで毎日でていたのに、急に数日に1回・ふんばって出すようになった。硬い粘土のようなものを、泣きながら出す。こんな状態になるお子さんも少なくありません。

1週間に○回ウンチがでなかったら便秘なのか。日常生活でできることはあるか。便秘の薬はクセにならないのか。受診の目安は?
これらについては、過去の記事を参考にされてください。


なお上記の原因のほかにも、皮膚などほかの症状が全くないのに、嘔吐だけがアレルギー症状として出る、かなり特殊なアレルギーの場合もありえますが、頻度はまれです消化管アレルギー)。

Q.丸のみしてしまうのは、どうしたらいい?

A.まだかむ・飲み込むの機能も発達途中なので、ある程度の丸のみは仕方ない場合も。形態やサイズをアップすると、効果が出るお子さんも。


お子さんのために良かれと思って、やわらかい形態にしたり・サイズを小さくしたり・・とすると、飲み込みやすいゆえに、お子さんも丸のみしてしまう、ということもあります。

月齢ごとの形態やサイズは、あくまで目安でしたね。

お子さまが嫌がらない程度に、形態やサイズをアップしてみて「自分が無理なく食べられる一口ってこれくらいなんだ」とお子さまが学んでいくのを、手助けしてあげるのは一つの方法です。


また「食事を口に含んで→お口を閉じて→飲み込む」という流れがうまく身についていない時期にも、丸のみはよく起こります。

お子さんに食べさせるときに、お子さんが口を閉じてから・スプーンを引き抜くなことで「まず口を閉じてから飲み込むんだよ」ということを、動作で教えてあげるのも一つの対策になります(乳幼児の咀嚼機能 発達支援マニュアル)。


Q.離乳食をはじめてから、下痢(でも元気)。どうしたらいい?

A.成長にともなう腸内細菌の変化など、正常の範囲内であることがほとんど。元気なら様子をみてOK。元気でも1~2週間つづいたら受診を検討。


さきほどの便秘とは逆で、なんだか離乳食をはじめてから、下痢がつづいている。これどうしたらいいの?というご相談もよくいただきます。

お子さまの活気があり、おしっこもよくでている場合は、成長に伴う腸内細菌の変化。あるいは、お食事が腸に入ったことによる一時的なウンチの変化。こうしたケースがほとんどです。


生後1年間は、おどろくほどに、腸内細菌がダイナミックに変化しています。(Biosci Microbiota Food Health. 2014;33(3):99-116.など)

なので離乳食に関係なくとも「元気なんだけど下痢」みたいなことは、お子さまではよくあることなのです。
食事やミルクを止める必要もありません。受診すると整腸剤を処方されることもあると思いますが、正直、劇的に良くなるという保証はありません。

ただし、元気なんだけど、1~2週間たっても下痢が全然よくならない・どんどん回数も増えてきてしまう。そんな場合は、一度受診を検討していただけたら幸いです

一時的に、乳糖が分解しづらくなる「(二次性)乳糖不耐症」になっている可能性があり、この場合は、乳糖の分解を助けるお薬で、症状が良くなることがあるからです。

またまれですが、消化管アレルギーという特殊なアレルギーによって、ほかに皮膚の症状などが全くないのに、特定の食材を食べた後に下痢だけがでてしまうこともあります。

体重も増えていて、お子さまの全身状態が良好という場合はいそぎませんが、下痢の回数がどんどん増える・体重も増えなくなってしまった、などの場合は、診断や治療が必要になる場合もあります。
体重増加の目安や、増えない場合の受診の目安は、過去の記事を参照ください。




Q.ウンチの中に、食材がそのままでてきた。サイズや形態を変えないとダメ?

A.便の中に、食材がそのままでてくることは、医学的には問題ではありません。食材の形態やサイズも、お子さまが食べやすい・好んで食べてくれるものでOKです。

ウンチネタがつづきますが、これもあるあるなご質問です。

医学的にいえば、別に食材そのものが便にでてきてしまうのは、問題にはなりません。まだ十分に咀嚼できるわけでもないし、消化機能も成熟していません。致し方ないことなんですね。

形態やサイズを少し変えただけで、食事そのものを受けつけなくなってしまうお子さまも少なくありません。お子さまが食べやすい・食べてくれる形態やサイズをつづけてOKです。



Q.うちの子、偏食なんだけど、大丈夫なの?

A.偏食自体はつづいても、偏食の食材が変化していくため、長い目で見ると、ちゃんと成長・発達できるケースがほとんど。無理やり食べさせても、効果は乏しい。

もう。めちゃくちゃ。あるあるなご相談です。

離乳食をはじめて少したった1歳前からはじまり、3歳こえたお子さんでもよーくご相談されます。あれこれ工夫したところで、子どもが食べてくれないことには、どうしようもないですよね。

これについては○○したから偏食がなくなります!みたいな医学的なエビデンスもない領域です。が、一応以下のような報告があります。


1歳半でも3歳になっても、半数ちかく・あるいはそれ以上のお子さんが、なんらかの偏食がある。

●1歳半から3歳という、1年半の間にも、嫌いな食べ物は変化しうる。

無理やり食べさせられたという経験は、成人になっても記憶残りうる。そして結局、その食べ物は成人になっても、嫌いなまま。

●偏食対策のひとつとしては、子ども自身が、食事に何らかの参加を促すのが良いのではないか。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/71/6/71_323/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshhe/81/1/81_3/_pdf/-char/ja

実際に外来でご相談されるケースを見ていても、偏食自体はつづくけれども、その中で、これなら食べる!という食材が変化していくことはよくあります。

その結果、トータルで見るとまぁその子に必要な栄養はとれていて、結果としてちゃんと成長・発達していくというケースがほとんどです。

とはいえ、偏食ばっかりで、体になにか影響がないか、心配になるお気持ちも非常にわかります。

たしかに、偏食が強すぎ・長すぎて、(ビタミンDやカルシウムが欠乏することによって)くる病を発症したという報告もあります。
「極端な偏食でビタミンD欠乏性くる病を発症した自閉症スペクトラム障害」、日児誌 120: 1637-1642, 2016


ただし報告を見ると、ただ単に「ちょっと偏食ぎみ」のレベルではないことがわかります。

●このお子さんはもともと言語面での発達の遅れ(3歳5ヶ月で2語文など)が指摘されていた(この偏食での受診をきっかけに、自閉症スペクトラムの診断となった)。

●日常生活のリズムも不規則かつ、夜間にずれこみ。正午ごろ起床、夕方~22時まで就寝、その後覚醒、0~4時にまた就寝。

あまりに、かんしゃくがひどいため、ほとんど外出しない・できない時期がつづいていた。

●偏食の内容としては、白米やパンなどの白い食品のみ。肉・魚・卵は摂取せず。水分もりんごジュースのみ。その結果、カロリーは年齢相当に摂取できていたが、カルシウムは必要量の50%程度、ビタミンDにいたってはほぼゼロのまま数ヶ月以上が経っていた。

どうでしょうか。

たしかに一時期、肉などを食べずに、炭水化物だけブームがくるお子さんはたくさんいます。
が、数ヶ月~年単位でつづくことはレアですし、よく聞くと、卵やヨーグルトなど、何らかのタンパク質・ビタミンD・カルシウムが入った食材や飲み物を、そこそこ摂取できているケースが多いです。

先ほども書いたとおり、これしか食べない、という状態がつづいても、食べる食材自体は、マイナー・メジャーチェンジしていくことがほとんどです。基本的には、体重がふえて・お子さまが元気にしていれば、問題ないと思ってください。
体重増加の目安や、増えない場合の受診の目安は、過去の記事を参照ください。



Q.手づかみ食べは、いつまでさせてOK?

A.手と口の協調運動の発達・また五感の発達のためにも、手づかみ食べは大事。医学的には制限する理由はない。

大人の感覚でいうと、手づかみで食べるのはお行儀がきになる。食器をつかって早く食べてくれるようになって欲しい。そういうお悩みも聞かれます。

が、結論からいうと、のちのち食器を上手に使うためにも、手づかみ食べはしっかりさせたほうが良いです。

「手づかみ食べ」と一口にいっても、赤ちゃんにとっては非常にたくさんの動作があります。

「自分の食べたい食材をみつけて → 手をそこまで伸ばして → 食べ物を指でつかんで → 自分の口まで持っていって → 口を開けて → 口を閉じて → もぐもぐして → 飲みこむ」

・・・大人にとっては当たり前の動作でも、自分の五感をフル活用して、さらに手や口をうまく協調して動かさないと、手づかみ食べはできません。

この段階があるほうが、スプーンなどの食器を使った食べ方にもスムーズに移行しやすいというのは昔から言われています。

手づかみすると散らかるし、(外食するときなど)周りの目も気になるし・・・と親御さんとしては大変な点が多いのは重々承知ですが、赤ちゃんの発達を考えると、手づかみは非常に大事です。

手づかみするともれなく床に落とす・投げるも鉄板なので、床にレジャーシートをしいたり・ゴミ袋をしいたりして、少しでもラクに片付けができる対策をしていきましょう。

2歳くらいになると、やっとスプーンなどの食器も一人で使えるようになるお子さんも増えてきます。
でも個人差もありますし、まだまだこぼしてもおかしくない時期がつづきます。たまに手づかみしていても、医学的には止めさせる必要はありません。

また「マナー」「お行儀」という概念も、基本的にはお子さんには非常にわかりにくい概念です。

「他人がどう思うから、自分はこのように行動しないといけない」という自分への客観視は、5~6歳をこえたころから少しずつ芽生えてきます。
4歳くらいまでは、他人の気持ちを正確に把握できないのでさえ、正常です。

外食時やここぞというときなど、どうしても手づかみをしてほしくないなと思うときは、「手よりもスプーンで食べたほうがおいしいと思うよ」「ママは、スプーンで食べてくれたほうが嬉しい」などと、お子さんでもわかる理由をつけて、話してあげる必要があります。
(これも、言語受容がすすむ1歳3ヶ月以後から、でもその後はいよいよ自我の発達がすすんできて、むずかしいことも多いです。)


Q.歩き回って、食べさせるのに一苦労です・・・。

A.とくに1歳代なら「歩き回れない」環境をつくってあげるのが大事。チェアやテーブルなどで物理的な工夫を。

とくに1歳代に非常に多いご相談です。つかまり立ちや独り歩きなど、新しいスキルを覚えていく時期なので、お子さんも動きたい盛り。
「リビング中を走り回る子どもを追いかけながら、おにぎりを口に放りこんでます・・・」というケースもよく聞きます。

医学的には、思わぬ動きで窒息してしまわないかが心配なので、もちろん座って食べられたほうが安全です。

ただ1歳代のお子さんが「窒息するから座って食べて」という指示を理解するのは、発達の観点からみてもむずかしいです。マナー・お行儀というのも、当然理解できない年齢です

いたずらしたくて・困らせたくて歩き回る、という駆け引きも、まだ1歳代の頭の中では存在しません。単純に「動きたいから」食事中でも動くのです。

・・・ということで、こちらも冷静に「歩き回れない」ようにする物理的な対策をとるしかありません。

特定の製品をおすすめするのは、企業とも何の関連もないですし、一個人としてあまりしたくないのですが、ベビービョルンさんのハイチェアは、そういった観点からは非常に優秀だと思います。
ベルトやテーブルの前後もちゃんとすれば、お子さんがまさに「歩き回れない」「動けない」構造になっています。


Q.大人と同じ食事をあげてもいいのは、いつから?

A.食材や形態がクリアできているなら、いつからでもOK!でも味は薄めて。


離乳食後期などになってくると、食べられる食材の種類や、少し大きい・かたい食事も食べられるようになってきます。大人の食事からとりわけてもいいの?というのも、よく頂くご相談です。

結論からいえば「食材・サイズ・形態がクリアできているなら、大人からのとりわけでもOK。でも塩分には気をつけて」ということです。

大人と一緒のものを食べている、という状況が理解できたほうが、食事がすすむお子さんも大変多いです。そういう意味でも、とりわけて食べるのはわるくありません。
が、お子さんにとって塩分が多すぎる可能性が高いので、その点だけ注意してもらいたいです。

子どもが摂取していい塩分って、意外と少ないです。

【子どもの塩分摂取量の目安(厚生労働省の基準)】
※以下はすべて「食塩相当」のグラム数

●生後6~11ヶ月:約1.5g
●1~2歳:約3.5g未満
●3~5歳:約4.5g未満

ちなみに成人は、約7g未満が目安です。成人でも、ちょっと味の濃いものを食べたりすると、1日トータル7gは簡単にこえてしまうともいわれています。

実際に市販のベビーフードや子ども用のレトルトも、ほとんどしょっぱさを感じないように作られていますが、こうした理由からなんですね。

大人用のをとりわけたあとに、煮物をお湯やお水でうすめるなどして、とにかく薄味を心がけてもらえれば、とりわけ自体はOKです。

なお、はちみつが含まれているものは、1歳未満のお子さんは食べないでください。1歳未満のお子さんがはちみつを摂取すると、乳児ボツリヌス症で命に関わる可能性がありますので、食べてはいけません。

Q.レトルト・ベビーフードは使ってもいいの?

A.衛生面・摂取した栄養の詳細がわかるという意味では、むしろレトルト・ベビーフードのほうが勝っていることもあります。医学的には制限する理由がありません。

手作りとくらべて、添加物が多いんじゃないか・味つけが濃いんじゃないか。なんとなくレトルトをポンと出すのは罪悪感がある。そんな親御さんも少なくないと思います。

が、医学的には、衛生的な製造ラインで・お子さんの月齢や年齢にあわせたカロリーや、栄養のバランスで作られたベビーフード・子ども用のレトルトであれば、使用することに何の問題もないです。


育児に家事に忙しい毎日の中で、食材やブレンダーを買いそろえて、一緒に遊んで欲しいとグズるお子さんを横目に、一から食事をつくったとしても、それを食べてくれる保証はどこにもありません。

それならレトルト・ベビーフードをポンとだしてあげて、食べなかったらそれでOK!とわり切ってしまったほうが、時間もお金も実は節約できるケースが多いです。
どれくらいのカロリーや栄養素があるのかなど、お子さんが摂取した詳細を把握しやすいのも、既製品のメリットです。

添加物を心配される親御さんもいますが、厚生労働省が許可している中からさらに制限した添加物を、最小限の使用にとどめています。大手のメーカーでは(管理)栄養士さんも監修しています。日本ベビーフード協議会

実際に世界の親御さんが、どれくらい、離乳食をつくるのに時間をかけているのか、統計はみあたりませんが、海外の知人が口をそろえて言うのは「こんなに手作りしてんの、日本くらいだよ!」ということです。
海外のスーパーは、ベビーフードや子ども用のレトルト食品の品揃えも、豊富だとも聞きます。

もちろん、手作りを否定するわけでも全然ないですし、お野菜を一緒にちぎるなど・お子さんも一緒に食べ物を作るプロセスに参加することは、もちろん素晴らしいことです。
でも物理的・心理的にムリして手作りするくらいなら、ぜひベビーフード・レトルトを活用していいんだよ!ということです。

最後に、上記でも参考文献として挙げた情報もふくめ、離乳食にまつわる(医学的な観点からみて妥当だと判断できる)情報リンクをまとめておきます。


離乳食の情報リンクまとめ


●厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
言わずとしれた、厚生労働省の離乳食ガイド。
でもあくまで「日本の指標」として、1つの目安としてとらえられると良いと思います。○ヶ月で○回、という回数ひとつとっても、医学的なエビデンスはないんでしたね。

●小児アレルギー科医の備忘録
食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などについて、文献を紹介くださったり、最新の知見を共有してくださったりしています。いつも勉強させていただき、ありがとうございます。

●ちょっと理系な育児
大学研究員の牧野すみれさんが、ご自身の育児体験をつうじて、エビデンスのある情報にたどりつく大変さを実感された。
そんな経験から、WHOのガイドラインをご自分で訳され、ブログで発信されたり、書籍を出版されたりしています。
離乳食だけではなく、授乳に関してもたくさんの情報をのせてくださっています。

●農林水産省
食中毒などの対策が簡単にかいてあります。
なお厚生労働省のほうでは、乳幼児に限らず、一般的な食中毒対策が細かく書いてあります。

●日本ラクテーション・コンサルタント協会「補完食」
こちらもWHOのガイドラインをベースにしている文献です。
「母乳で育っている子どもの食事」となっていますが、別に混合栄養でも完全ミルクの場合でも、通じる内容です。

●教えて!ドクター
とりあえず、離乳食について、これだけ知っておいてくれたらいいよ!ってことを、かわいいイラストもまじえて、非常によくまとめてくださっています。

●食品安全委員会
大きさや形態から、窒息をおこしやすい食材について、記載されています。
具体的には・・・ナッツ、丸いアメ、ぶどう、プチトマト、もち、ちくわ、たくあん、こんにゃく入ゼリー、生にじん、棒状セロリ、リンゴ、ソーセージ、肉、こんにゃく、ポップコーン、おせんべい、ベビー用のおやつ。

●乳幼児の咀嚼機能 発達支援マニュアル
離乳食について指導する側むけの資料ではありますが、比較的わかりやすく、よくあるお悩みとともに情報がまとまっていると思います。


いかがでしょうか。

離乳食については、とくに色んな情報があふれていて、しかも思い通りにいかないことが多く、育児の中でも大きな悩みの一つになっています。

「医学的に絶対こう!」という方法はないこと。
少しでも楽に・楽しく、お子さんが成長・発達していくのを見られるのが一番大事なこと。

そんなことが伝われば幸いです。

(この記事は、2023年2月2日に改訂しました。)



・・・ちなみに外来で外国籍(しかも赤ちゃんちょうど離乳食はじめたかなーくらいのお子さん)がいらしたときに、お子さん離乳食なに食べてるんですかー?と伺うのがちょっと楽しみな白井なんですが・・・


みなさんすごい順応されていて(というか日本のスーパーで買える食材が限られているということもありますが)高い確率で「うーん、お野菜とお米かな♪」と答えられる方が多いです。笑


気になって今回ネットで調べてみたのですが、まぁほんとに色々あるんですね。食材の内容はもちろん、いつから何を食べさせたらいいと言われているのか、本当にそれぞれです。


世界のいろんな離乳食情報をみているうちに「・・・なんか小麦いつからあげたらいいとか、赤い魚と白い魚どっちからあげたらいいとか、1日2回か3回かとか、もうどうでもよくなってきたわ」みたいになってきました、みたいな親御さんの声もきかれます。


離乳食は悩みのつきない時期ですが、ちょっとでもこんな楽しい時間がすごせると良いですよね

(・・・という白井も、子どもの食べない・ちらかす問題には、ひじょーに悩まされました・・。涙 よそさまの子どもにはえらそうにアドバイスさせていただくくせに、いざ自分の子どものことになると、とたんにクヨクヨ・イライラ・ワタワタします・・・。またこちらのブログでも書いてきたいと思います。)




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