[小児科医ママが解説] フォロミいるのか問題(Vol.3) 【うちの子、肉・魚を食べません!】こそ、フォロミの出番では。
フォロミ連載、第3回目=最終回です。
第1回目では、フォロミに「多い」3つの成分①タンパク質②ミネラル③鉄 に注目して解説しました。
(記事:「フォロミいるのか問題(Vol.1)タンパク質の多さは魅力。鉄も多いけど吸収率を考えるとビミョー。」)
第2回目では、フォロミに「少ない」3つの成分①脂質(カロリー)②亜鉛・銅③ビタミンD に注目して解説しました。
(記事:「フォロミいるのか問題(Vol.2)カロリーは、かせげない。亜鉛・銅がゼロは、実はかなりイタい。ビタミンDも少なめ。」)
今回3回目・最終回では、じゃあ結局、フォロミはどういう子に使えばいいのか、結論を書いていきたいと思います。
全3回のフォロミ連載に共通する参考文献はこちら。
フォローアップミルクは(原則)「必要なし」
やはり今回3回の内容を踏まえても、この原則は変わりません。
まず、第1回目の記事でも触れましたが、WHOの言う通り、フォローアップミルク(だけでは)「栄養学的に十分な量はとれない」のです。①脂質(カロリー)②亜鉛・銅③ビタミンD が不足することを、第2回目に説明しました。
食事が全体的にすすんでおらず、絶対的なカロリーが足りていないお子さんの場合は、明らかに一般的な人工乳のほうが良いです。
(そもそも、完全母乳+離乳食が全然すすんでいないけど、哺乳瓶も一切拒否!というお子さんの場合は、なんとかしてもう離乳食をとってもらうしかないんですが・・・。)
また亜鉛が不足すると、体重増加不良・低身長の原因になります。フォロミには亜鉛はゼロ・含まれていないんでしたね。一般的な人工乳には含まれています。
フォロミに多いと言われる成分についても、ミネラル(とくにK・P・Caについては)一般的な人工乳でも十分量がとれること。
また鉄については、たしかに一般的な人工乳よりも多く含まれているものの、そもそも人工乳やミルクからの鉄の吸収率の悪さを考えると、結局フォロミでも不十分であること。これらも第1回目に説明しました。
これらを踏まえて、やはり原則は、フォロミは必要ないでしょう(むしろ一般的な人工乳のほうが、メリットがある場合も多い)といえます。
【肉・魚を食べません!】の子は、フォロミが良いかも。
・・・となると、結局、フォロミの恩恵を受けるのはどういう場合のお子さんか。結論は【食事はまずまず食べるけど、肉・魚を食べません!】という子です。
まず「食事はまずまず食べる」というのは、そこそこカロリーが取れているということです。
(カロリーで言うと、フォロミよりも、一般的な人工乳のほうが多いんでしたね。なので、カロリーがそこそこ食事で取れている、というのが、フォロミを使う前提になります。)
米やパン、うどんといった主食はよく食べる。
カロリーの稼ぎ頭になる脂質=チーズ・豆とかも、まずまず食べてる。
だから、カロリーとしてはそこそこいい感じ。
でも!タンパク質=肉や魚を食べない!筋肉つくる気あんのかーい!
っていう子は、フォロミの恩恵を受けるでしょう。
一般的な人工乳と比べて、明らかにフォロミに多くふくまれ、メリットがある成分が「タンパク質」だからです。
上記はあくまで目安です。同じお子さんでも食べムラもありますし、上記にたとえば10g達しなかったからといってすぐに体に影響が出るとか、そういう次元の話ではないです。
ただ、食事って本当にむずかしい。
その時、お子さんにヒットする食べ物があればいいですが「もう長らく、米粒しか食べてないけど大丈夫ですか」「アンパンマンパンしか食べなくなりました」「納豆しか食べなくなりました」ってお子さん、外来で山のように聞いてきました。
(そして、ぶっちゃけその後、ちゃんと成長曲線を描いているお子さんしか、私は見たことはありません。もちろん極端な栄養障害・発達障害による摂食困難など、病的なケースも世の中にはあります。でも、○○しか食べない、というお子さんは沢山いて、そのほとんどはなんだかんだでちゃんと成長していくよ!という安心材料になればうれしいです。)
そんなとき「あー今日も米粒しか食べなかったわ。でもフォロミ飲んでくれたわ。ちょっとはタンパク質とったかなー。」と思えたら、(もちろんお子さんの体にタンパク質が入った、という以上に)親御さんとしては少しでも気が休まるかな、と。
疲れた日は、もうフォロミに頼りつつ、でもなるべく、食事で色々ためして。そんな感じでフォロミでつないでいる数週間あるいは数カ月の間に、なんかいつの間にかササミがヒットしたとか、ハンバーグ食べだしたとか、ご飯に混ぜたら鮭食べたとか。なんか突破口が見つかるといいな、っていう。
そういうスタンスでのフォロミの使い方ができたら、医学的にも良いなぁと思います。
長くなりましたが、全3回、もし読んでくださった人がいたら、ありがとうございます。この回だけ・どこか1回だけでも読んでくださった方も、もちろんありがとうございます。
「なんとなくフォロミ」という方、外来でもよく聞くのですが、医学的な考え方をすると、こういう使い方があるよ、というニュアンスが伝わると嬉しいです。
そして私はいつも思っているのですが、結局じゃあフォロミ使うのか・使わないのか、決めるのは、保護者のみなさま。
24時間365日お子さまを見てくださっている保護者の方が、納得して選ぶ、というのが一番大切です。かしこく悩んで・かしこく選んでいくお手伝いをさせていただけたら、幸いです。
(この記事は、2023年1月26日に改訂しました。)
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