[小児科医ママが解説] フォロミいるのか問題(Vol.2) カロリーは、かせげない。亜鉛・銅がゼロは、実はかなりイタい。ビタミンDも少なめ。
フォロミ連載、第2回目です。
前回は、フォロミに「多い」3つの成分①タンパク質②ミネラル③鉄 に注目して解説しました。(記事:「フォロミいるのか問題(Vol.1)タンパク質の多さは魅力。鉄も多いけど吸収率を考えるとビミョー。」)
今回は逆に、フォロミに「少ない」3つの成分に注目して解説していきます。
全3回のフォロミ連載に共通する参考文献はこちら。
※以下で「一般的な人工乳」というときは「明治、和光堂、森永、ビーンスターク、雪印」の5メーカーさんの成分を参考にしています。
また「フォローアップミルク」というときは、上記5メーカーさんからそれぞれ出されているフォローアップミルクの成分を参考にしています。(明治ステップ、和光堂ぐんぐん、森永チルミル、ビーンスタークつよいこ、雪印メグミルクたっち)
①脂質・カロリー
大人にとっては、脂質というと制限したいイメージもある成分ですが、赤ちゃんにとっては、脳の発達にも必要な、かかせない栄養素です。
また脂質は1 gあたり9 kcalの熱量にもなるので、カロリーをかせぐという意味でも大切な成分です。
もし一般的な人工乳だけを1日1000mL飲んでいる場合、脂質は35~36mg(ミルクで摂る665~683 kcalのうち 47%くらい)とることができます。
一方で、フォローアップミルクだけを1日1000mL飲んでいる場合、とれる脂質は 25.2~28 mg(ミルクで摂る 644~663 kcalのうち ぎりぎり40%)くらいです。
厚労省の食事摂取基準からみて、仮にフォローアップミルクだけを1000mLとっていても、大幅に不足しているわけではないです。
しかし少しでも脂質・カロリーを稼ぎたいという考えの場合、フォローアップミルクよりは、一般的な人工乳のほうが助けになりそうです。
②亜鉛・銅
フォローアップミルクには、亜鉛と銅が、完全に0、つまり一切含まれていません。
今まであげてきた栄養素のなかでは、あまりなじみのない成分かもしれません。が、亜鉛や銅といった「微量元素」と言われる栄養素は、実は発達や成長に非常に大切です。
亜鉛が不足している場合、体重が増えない・低身長、皮膚炎といった症状がでます。銅が不足している場合も、貧血などの影響がでます。
もし一般的な人工乳を1日1000mL飲んでいる場合、①亜鉛 3~4mg ②銅 0.4mg をとることができ、厚労省の食事摂取基準を満たすことができます。
一方で、フォローアップミルクだけでしかも食事が全く進んでいない場合、亜鉛も銅もゼロです。
仮に多少食事がすすんでいたところで、もし亜鉛を3 mgとるには、大人一食分の牛もも肉でもやっと4 mgといったところ。
レバーなどではもっと量が必要です。これはなかなかお子さんが食べるのはむずかしいのではないでしょうか。
亜鉛や銅のことを考えると、軍配は圧倒的に、一般的な人工乳にあがります。
③ビタミンD
カルシウムの吸収を助けたり、骨を作ったり、と大事な栄養素。さきほどの亜鉛や銅と比べると、なじみのある方も多いかもしれません。
不足することで、くる病などの骨の変形、また最近一部では、感染症の増加にもつながるのでは、という報告もあります。
もし一般的な人工乳を1日1000mL飲んでいる場合、8~12 μgのビタミンDをとることができ、厚労省の食事摂取基準を十分に満たせます。
一方でフォローアップミルクの場合、含まれるビタミンDがメーカーによってばらつきもあることに注意です。
ビタミンD含有が少ない(100mLあたり 0.5 μg)のフォローアップミルクの場合は、1000mL飲んでやっと、厚労省の基準の5 μgに達するなどかなりギリギリラインです。
ちなみに母乳にはどうしてもビタミンDが含まれづらく、とくに日光にあたる習慣のない妊産婦さん・赤ちゃんはより欠乏しがちです。
完全母乳栄養の場合は、より積極的に、ビタミンDを食事でとっていく必要があります。
フォロミ連載、第2回目。まとめておきましょう。
次はいよいよフォロミ連載、最後の第3回目。
じゃ、結局フォロミって、どんな子に使えばいいのよ。って結論を書いていきます。(記事:「フォロミいるのか問題(Vol.3)【食事まずまずすすんでるけど、肉・魚を食べません!】の子こそフォロミの出番では。」)
(この記事は、2023年1月26日に改訂しました。)
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