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とことん TVのモンダイ点

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記事一覧

226.ガーシガシガシガシ!

 今年の夏の終わりに、両側から茂った木立ちがトンネルのようになった道を、自転車で走り抜けた。生命の最期の時を歌い上げる蝉の声が、木の葉からしたたり落ちるように、ぼくの全身に大量に降り注ぐ。

 するとぼくの記憶は一気に少年の頃に戻る。故郷の父がこの蝉の声のことを「ガーシガシガシガシ」と表現していたのを思い出すのだ。
 なに言ってるんだ。蝉の鳴き声というのは普通はミーンミンかジージー、それにツクツク

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225.レポーターの超能力

「このへんに、***がいると聞いてやってきたんですが……」
 というのはレポーターが登場早々、歩きながら言うお決まりの文句だ。***の部分に入るのは「すごい特技を持った美人中学生」でもいいし、「ラブラブの年の差ご夫婦」でもいい。「行列のできるラーメン屋さん」の場合は表現が「***がある」と少し変わるが、基本的には同じ。
 そしてレポーターは、この言葉を発した3秒後には目指す対象を探し出し「あ、いま

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224.モーニング娘。の秘密

 モーニング娘。のメンバーが、またもや大きく変わるというので、世間は騒いでいる。
 これは誰も指摘していないのでぼくが言ってしまうのだが、プロデューサーであるつんくが偉いのは、モー娘。をヒットさせたことではない。あれは(こういっては失礼だが)まぐれかもしれない。だが、ヒットしてしまってから、おそらく彼は気付いたんですね。何に?

 ぼくはもう十年以上前、番組発の企画ものユニットをいろいろデビューさ

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223.言いわけ

 子供の頃、期日までに宿題が出来ていないと「風邪で熱が出て」などと言いわけをした経験は誰でもあるだろう。もっとも、まるっきりの嘘と言うわけではない。たしかに多少熱っぽかったのを強調したのだけれど。
 ぼくなど大人になった今でも、原稿の締切りに遅れると「実は、体のシビレが出て」と言いわけをしているもの。これまた、誰にでもある経験だろう(締切りと体のシビレが、誰にでも?)。

 話は変わって今年、連続

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222.夏休み

 およそ15年くらい前から、ニュース番組や情報番組、ワイドショーは「**キャスターは2週間の夏休みです」と堂々と言えるようになった。
 かつては「メインの出演者は、雨が降ろうと槍が降ろうと休むべきではない」という勤勉実直農耕民族的律義さがあった。また出演者側には「休んでも現場が困らなければ、アイツいらないんじゃないか? と言われてしまう」という安穏怠惰公務員的恐れもあった。

 が、今はむしろ、ち

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221.夢のナレーター

 ふだんから狭い部屋が、夏には余計暑苦しい。本やCD、VTRテープの山がうっとうしく感じる。
「もうこんな部屋イヤだ!」
 と叫ぶとき玄関にピンポーンと音がして、そこに渡辺篤が立っていたら?

 あの〈建物探訪〉の名ナレーションでおなじみ。森羅万象を褒め上げるという、玉置宏以来の褒め系ナレーターだ。彼なら、こんなぼくの部屋をどう表現するだろうか?
「ほぅ~。ほぅ、ほぅ、ほぅ、ほぅ……」
 とまずは

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220.練習風景

 W杯の熱狂が終わり「今こそJリーグに注目を!」と言われる。で、スポーツニュースを注目しているのだが、時に映るサッカーの練習風景というのは、あれはなにかヘンではないか?
 たいていみんな一列になって、ランニングだかスキップだかわからない走り方でぴょんぴょん跳び跳ねながら、両手を左右に振って右を見たり左を見たりしている。

 我々が思うスポーツの練習とは、野球ならば泥と汗で汚れたユニフォームで「あと

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219.ラジオの人

 ドン上野、といっても普通の方はご存知ないだろう。本名は上野修。ラジオ界では有名な人物で、かつてテレビに押されて気息エンエンのラジオを若者のメディアとして立て直した人と言われる。
 世間には「家つきカーつきババァ抜き」という言葉を作ったことや、せんだみつお氏を育てたことで知られている。『宇宙戦艦ヤマトの長時間生ラジオドラマ』を作った、前回アニメブームの仕掛人といえば、思い出す世代の方もいるだろう。

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218.ダブルブッキング

 ドタキャンやダブルブッキングという言葉は、どちらかというとこれまで芸能界で使われることが多かった。が、最近急に一般に認知される言葉となった。すべて、和泉元彌ママのおかげである。
 ダブルブッキングとは同じ時間に二カ所の仕事を入れてしまうミスだが、実は和泉元彌のこの件については、ぼくたち放送作家はあまりあきれていない。というのは、放送作家とはダブルブッキングをよくやるからだ。

 Aという放送局と

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217.適材適所

 ぼくの知り合いで通販番組の台本を書いている作家がいる(放送作家というのはこういう原稿も書くのだ)。
 当然、その商品がいかに優れているかを、あの手この手で表現していくわけだ。おそらくはNASAだとか活性酸素だとかマイナスイオンだとかを引き合いに出してね。
 より説得力があるように、よりお得に感じるように、より安心感があるように……と何度も推敲を重ねているうちに、その作家は、
「だんだんその商品が

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216.日本代表再び

 きれいごとで締めくくってはいけない。W杯日本代表の戦い方についてだ。最後のトルコ戦はひどい試合だったのだから、それは責めるべき。全部ひっくるめて「感動をありがとう」ではいけないのだ(あぁ、こんなことを書くと感動さめやらぬサポーターやマスコミに怒られるだろうなぁ…)。
 このW杯は「トルシエのおかげで勝ち、トルシエのおかげで敗れた」と見ている。彼は元来、試合がはじまると何もできない人だった。優秀な

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215.日本代表

 18世紀。スコットランドの羊飼いは、自分たちが暮らす草原にボールを転がすゲームを始めた。生活空間をゲームの場にするというのがゴルフ発祥の精神だったのだ。だが、いまやゴルフ場は生活空間と切り離され、人工的に整備された場所になっている。現代において我々の暮らすフィールドは都市だ。もう一度ゴルフ発祥の精神を取り戻し、人々よ、街でゴルフを楽しもう! という趣旨で作ったのが藤井青銅原作のゲーム『ストリート

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214.格付け問題

 ムーディーズの国債格付けで、日本が二段階引き下げられた。
 日本はかつての最上級Aaaランクから、Aa3ランク(台湾・香港と同じ)へ、そしてさらにA2ランク(ポーランド、ラトビア、ギリシャと同じ)へと落ちたのだ。
 日本政府は「客観的な基準を欠く」「一私企業の格付けにすぎない」などと怒っている。
 怒るよりも、いい手がある。あらたに、同様な格付けをいくつも始めてしまうのだ。その際のポイントは、格

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213.新水戸黄門

 今年も高額納税者番付が発表された。なんといっても、話題はトップになった高橋氏。
 いや、トップであることが話題なのではない。この方は某企業グループを率いて、以前から高額納税者番付の常連。今回一位になったからといって、別に驚かない。
 話題なのは、その住所。高橋氏は沖縄の小さな村に住民票を移していたので、その村の税収がいっきに上がってしまったのだ。国のヒモつきではない巨額の財源が転がり込んだのだ。

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