218.ダブルブッキング

 ドタキャンやダブルブッキングという言葉は、どちらかというとこれまで芸能界で使われることが多かった。が、最近急に一般に認知される言葉となった。すべて、和泉元彌ママのおかげである。
 ダブルブッキングとは同じ時間に二カ所の仕事を入れてしまうミスだが、実は和泉元彌のこの件については、ぼくたち放送作家はあまりあきれていない。というのは、放送作家とはダブルブッキングをよくやるからだ。

 Aという放送局とBという放送局で、同じ時間に会議が入ってしまうことがある。この場合、両方の会議に出るには①A局とB局の間に時差がある②タイムマシーンを開発した③実は双子の兄弟がいる……ということでもなければ不可能だ。
 だが、手だれの放送作家は平気な顔でこのダブルブッキングを処理してしまうのだ。有名なのは、古来より伝わる「置き手帳」や「置き鞄」というテクニック。これはまずA局の会議に出て「私はここにいますよ」という存在証明のために手帳や鞄を置いたまま、途中ふらりと行方不明になる。で、B局の会議に出席し、何食わぬ顔でまたA局の会議に戻ってくるという手だ(ぼくはやったことないですよ!)。

 この他にも色々な手法が伝わっている。それを駆使してダブルどころか、トリプルブッキングをこなしたという先輩の伝説もある。ここで元彌ママにそれを教えてやりたがったが、あまり詳しくバラすと放送作家協会影の刺客集団から狙われるので、これ以上は明かせない。悪しからず。

【モンダイ点】
◎今回のジェット機移動によるダブルブッキング処理は、西村京太郎に学んだのか?

(2002/7/24)

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