221.夢のナレーター

 ふだんから狭い部屋が、夏には余計暑苦しい。本やCD、VTRテープの山がうっとうしく感じる。
「もうこんな部屋イヤだ!」
 と叫ぶとき玄関にピンポーンと音がして、そこに渡辺篤が立っていたら?

 あの〈建物探訪〉の名ナレーションでおなじみ。森羅万象を褒め上げるという、玉置宏以来の褒め系ナレーターだ。彼なら、こんなぼくの部屋をどう表現するだろうか?
「ほぅ~。ほぅ、ほぅ、ほぅ、ほぅ……」
 とまずは、何も言っていないのに何かに感心しているらしい感嘆詞で入ってくるのだろう。
「人はみんな、大人になると……」
 と、一見関係なさそうな話から切り出す。
「……学生時代を忘れてしまう。それをとどめておきたいという願望が見事に実現されてますねぇ」
 ただ雑然としてるだけなのだが、そう言われればそんな気もしてくる。
 そして矢継ぎ早に、
「いいですねぇ~、買ったまま読んでない本がこんなに積んである。これを部屋のオブジェにすれば知的で、なおかつお安く揃えられる。いやぁ、考えたもんだ」
「ははぁ。あえて安い壁紙を使って、汚れたら張り直す。合理的ですね」
「窓を開ければ、都会の雑踏の中にいることを楽める、この贅沢」
「手を伸ばせばたいていのことに用が足りる。このコンパクトな設計思想には、居住者のこだわりが感じられます」
 などと褒めてもらえれば、狭い部屋も少しは快適な気分になる(?) 国は、渡辺篤の巡回訪問制度を開始すべきだ。

【モンダイ点】
◎旅行業者は滝口順平〈ぶらり途中下車〉の訪問制度を採用すると、旅に出る人が増えるゾ!

(2002/8/21)

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