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劇評

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主に石川県金沢市での、演劇・ダンスの観劇記録です。
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2018年8月の記事一覧

(劇評)踊りたいんだ、僕は

アクラム・カーン カンパニー『Chotto Desh チョット・デッシュ』の劇評です。
2018年8月17日(金)14:00 金沢21世紀美術館 シアター21

撮影:池田ひらく 写真提供:金沢21世紀美術館

 これが僕のやりたいこと。
 君のやりたいことは何?
 アクラム・カーン カンパニーの『Chotto Desh チョット・デッシュ』は、満面の笑顔でそう問いかけてくるような作品だった。

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(劇評)幻想より出でしもの

(劇評)幻想より出でしもの

エイチエムピー・シアターカンパニー「金沢ナイトミュージアム BUNGAKU Night 泉鏡花 『高野聖』」の劇評です。
2018年8月11日(土)19:00 泉鏡花記念館

 拍子木の音に合わせて演者が動き、止まる。コマ送りのようなその動きの中、止まった時の表情を、体つきを、こちらを凝視する目を、直視してもいいものかと思えてしまう。

 エイチエムピー・シアターカンパニーによる『高野聖』が、作者

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(劇評)私は父と踊れるか?

(劇評)私は父と踊れるか?

伊藤郁女『私は言葉を信じないので踊る』の劇評です。
2018年8月4日(土)19:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 私は父と踊れるか?
 私は父と、踊るようなコミュニケーションを取ることができるだろうか?
『私は言葉を信じないので踊る』が、伊藤郁女と伊藤博史の、実の親子によるダンスだということを知ってから、私は自分と父親の関係を考えていた。

 会場に入ると、上手に置かれた背もたれのある

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(劇評)強い気持ち、強い憎しみ

(劇評)強い気持ち、強い憎しみ

百景社「金沢ナイトミュージアム BUNGAKU Night 宮沢賢治 『土神と狐』」の劇評です。
2018年8月3日(金)19:00 金沢くらしの博物館

 宮沢賢治の『土神と狐』を百景社が上演した(演出:志賀亮史)。リーディング公演であり、役者達はテキストを持ってはいるが、そのテキストすら小道具のようで、台詞を覚えて行う通常の公演のような趣きであった。
 この公演は二日間、場所を変えて上演された

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(劇評)人の気を知るまでに

(劇評)人の気を知るまでに

iaku『人の気も知らないで』の劇評です。
2018年7月29日(日)17:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 これ言ったら失礼だろうかとか、相手のことを慮り過ぎては、何も話すことができない。会話が起きない状態では、相手について無関心なのではないかと疑われてしまう。それを避けるために私達は、差し障りのない話をするだろう。ひととき、会話は生まれる。だが、表面だけなぞったような会話で、相手の何

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