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父の闘病

父が「がん」と宣告されて多くのことを学んだ。


父が「がん」になって・・・


① 家族が「がん」と闘う気持ちを学び
家族の誰かが病気になったときに
「当事者を支える家族」の気持ちが理解できた。

② カウンセラーは家族や友人の
「カウンセリングはできない」ということを
身を持って理解した。
➺ カウンセリングを学んでいる時に
お医者様もカウンセラーも身内は
「診れない」と学んだ。そのことがよくわかった。


カウンセラーも「ひとりの人間」なので
友人や家族に対しては、自分の”気持ち”があり

「相手に対してこうなってほしい」という
自分の感情が、邪魔をして
相手に対して客観的に観る力が鈍り

相手がカウンセラーを通して
「自分自身を映し出す鏡」になれないことを
頭では理解してきたつもりでいたが
本当に、全然ダメだった。

父の大きな問題「がん」を前に
自分自身の無力感と立ち向かったのを覚えている。


父が闘病中に、がんの進行によって
「歩くことができなくなり
  車イスになるかもしれない」


主治医から説明を受けた日、
父は、とても落ち込んでいる様子だったので
私は、その日の夜、仕事が終わり
父のことが気になって病室へ向かった。

父の病室に着き、ベットに近づいたら
父は、私が来た事に気づかず
天井の一点を見つめていた。

天井を見つめる父に
「どうした?」って声をかけると

「車イスになるくらいだったら、
  死んだほうがましだ」
と私に話し始めた。


カウンセラー
なら、
それくらい「つらいんだ・・・」と
相手の感情を
受け止めるであろう自分を分かっていながら

父に対しては、
「そんな弱気なことを言って欲しくない」という
娘の感情でいっぱいになった私は


「お父さんはそうやって私の友達の
車イスの〇〇さんのことを否定するんだね」

「〇〇さんは、死んだほうがましだって
 お父さんは思ってるんだね」と、言った。

父は、普段から 私の車いすの友人のことを
とても大切にしてくれていて
私の友人も父のことを「お父さん」っていうくらい
仲良しなのに、そんなことを言う父が許せず

話の論点が違うことは分かっているのに
そんなことを父に向って言った。

父は、天井を観ていたのに
「ごめん、ごめん、そんなつもりで言ってない」
「死んだほうがましなんて言って
お父さんがバカだった」と。

がんの父は、娘の前で本来の「父親」に戻り
娘に謝った。

私は、父に
弱音を吐かせてあげることすらしなかった。

父には、最期まで
父のままで生きていてほしかった。
私は、その想いが強かった。

父が車イスになったとしても
「生きていてくれるだけでいいんだ」
「この世に存在してくれるだけでいいんだ」と
本当は伝えたかった。

その私の感情が、父を支える気持ちより
娘である自分の感情が
支配していることを痛感する。


「車イスになるくらいなら死んだほうがましだ」
父のこの言葉には
次から次に始まる治療や
つらい抗がん剤の副作用に苦しみ
自分の身体が変化していく恐怖に耐え

「つらいんだ」「怖いんだ」っていう
父の気持ちが含まれていること
重々わかっているはずなのに
父に対して、気持ちを受け止めることすら
私にはできなかった。


父の病室を出て
娘の私の力ではダメだ・・・と思った。

“家族だけの支え” では
父の心を支えきることができないかもしれない。

その気持ちを、
リボネットの活動を通して支えて頂き
基調講演の依頼などお願いしている
外科医の先生に伝えたら
先生が私の代わりに
父のカウンセラーとして
(カウンセラーのように)支えてくださった。

父の苦しみも父のわがままも
先生が傾聴してくださり支えてくださった。

そして、普段から私の活動を全面的に
応援してくださっている東京の先生も
父の病室に来てくださって
戦う力とエネルギーを与えてくださった。

父は、がんと闘い
また普通の暮らしに戻りたいと思っていたので
友人や親戚、仕事関係者の面会を拒否していた。
弱くなっている自分を見せたくなかったようだ。

家族と主治医とサポートしてくれる専門家としか
「会わない」という選択をしている父にとって
弱いところを見せられるのは
“家族以外” だったような気がする。

最期まで、家族には弱みを見せなかった。

父が天国へ旅立って3年が経つ。
今日は、父のお誕生日だ。

そんな風に父のことを思い出しながら・・・
このnoteで伝えたいことがある。

・・・・・・・・・・・・・

リボネットの講演会や
がんの患者さんを支える美容師さんに対して
講師をする時に、父との闘病生活での時間や
患者の家族として体験したことをお伝えしている。



自分の大事な人が「がん」になったとき
あなた一人で支えられないことがあります。

そのときに、あなたとあなたの大事な人のために
必要になってくるのは「人脈」です。

がんの患者さまを支えている美容師さんは、
最初は自分の「お客様の力になりたい」と
学び始めるかもしれないが
「相手のために」と思ってかけた時間と学び、
そして優しさと想いは、
必ず、自分と自分の大事な人を
助ける力になると思います。

がんの患者様を支える活動を通して、
たくさんの信頼できる先生や
患者会の方々や経験者の方に
出逢える機会があります。

がんの患者さまや家族を支えようと
活動して下さっている方々の中には
本当に素晴らしい方が多いと私は感じています。

たくさんの苦しみや悲しみを経験し、
強さと優しさを持ち合わせている方ばかりです。

知識をつける勉強の場としての活用だけでなく
この学びの「場」の中で、えられるご縁を
皆さま自身と、皆さまの大切な人のために
活用できることを覚えていてほしいと
思っています。


学びの場で出会う「素晴らしい方達」は、
自分とは違う価値観を持ち
知識や経験・体験を持っていて
何かあった時に支えてくださる可能性が高い。

大切な人を守りたいと思ったとき
周りの人の「力」を借りること
「パイプ」を持つことは
何にも替え難い財産になると私は思う。

自分に、いつ何が起こるかわからない。

その日のために
「何かあったらこの方に相談しよう」と思う
「人脈」を持つことは重要で
私自身もその人脈に助けられた。

自分のがんの患者様を支える活動が
父の助けになるとは
活動を始めた時は想像もしていなかった。


これから・・・
私自身が知識や経験を増やし
がんの患者さまや家族を支える力を
今以上につけることはもちろんのこと

そして、自分の活動を通して
素晴らしい先生方とのご縁をいただき
そのご縁を学びの場を求める皆様へ
つないでいけるような出逢いの場を
増やしていきたいと切に思います。

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