変革と伝統 #6 仏具職人の娘が考える利益追求と自己実現、社会貢献のバランス
『中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた』を読んで思ったことを書いていたら、「利益追求と自己実現、社会貢献」の部分で思ったことが超分厚くなったので、一つの記事として独立させることにした。
目次 『中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた』
はじめに 本書の読み方<「志」ある商売には何が必要か>
PROLOGUE 「もうひとつの日本」をつくるアナザー・ジャパン
1章 会社と中期経営計画
会社とはなにか?
中期経営計画
2章 競争戦略と戦術
競争戦略、戦術とは何か?
競争戦略をつくる3つのアプローチ
3章 3つの現状分析
現状分析(収支)
現状分析(3C)
現状分析(SWOT分析)
4章 マーケティング
マーケティングのフレームワーク
STP分析
AISAS
5章 ブランディング
ブランディングとは何か?
ポジショニング
コンテンツの3つのレイヤー
ブランドの組み立て
6章 ビジョン
ビジョンのつくり方
ビジョンの決め方
7章 コンセプト
コンセプトとは何か?
アナザー・ジャパンのコンセプト設計
8章 ミッション、バリュー、行動規範
ミッション、バリュー、行動規範
中期経営計画のまとめ
COLUMN-1 キュウシュウのコンセプトと商品セレクト
9章 ファンクション① プロダクト
3つのファンクションチーム
プロダクト
売り場演出
10章 ファンクション② コミュニケーション
コミュニケーション総論
コミュニケーション設計の流れ
コミュニケーションで最も重要なのは「愛と積み重ね」
11章 ファンクション③ オペレーション
オペレーション総論
レジ設計
オペレーションが差を作る
12章 問題解決
COLUMN-2 キュウシュウ、ホッカイドウトウホクのその後
アナザー・ジャパンの現場で見てきたビジョンファースト経営の重要性
おわりに
利益追求と自己実現、社会貢献
例えばアパレルなら
自己実現…こんな服を作りたい!
利益追求…安く作って高く売る
社会貢献…海外の安い労働力の搾取
こういう事が問題視されている。
その社会貢献の課題に対してCSR的なアプローチするなら、生産を担っている国に寄付をするといった行動になるのだろう。
しかし、それってマッチポンプだよね?そもそも搾取しないで成立できるビジネスしないといけないんじゃないの?がCSVの考え方だ。
「自己実現」なのか?「社会貢献」なのか?
「父の稼業を途絶えさせない」は「自己実現」だろうか?「社会貢献」だろうか?
それは「What is 父の稼業」によるかもしれない。
例えば、大阪で代々続くたこ焼き店があったとして、私も妹も継がなかったら父の代で廃業になる、とする。
この店を継がねば!は、さや家の「自己実現」であっても、「社会貢献」と言えるほどのものでもないだろう。
大阪名物たこ焼き店はいくらでもあるのだから。
この例と、いま自分が取り組もうとしているテーマとの違いはこうだ。
自己実現……そもそも「代々続いていた」訳ではない。俺がやりたい事をやるために仏表具の職人になり、二人の娘にも「自分がやりたい事をやれ!」と言って自分で選択させた。結果、一代限りで廃業かもしれない。
社会貢献……うちの仏表具工房としての歴史は父の代で創業したものだけど、技術自体は長年受け継がれてきたものだ。日本の歴史の各時代で制作された信仰物や美術工芸品も、ほおっておけば自然の摂理に従って経年劣化し朽ち果てていく。それを失いたくないという関わって来た人達の想いと、その物自体に歴史的価値があり、それらを後世に残すための技術には、日本に残すべき意味がある。
私は自己実現を選択して生きて来た結果、小さなIT会社の総務さんをしているが、「父の跡を継がない」選択をした私には「じゃあ、この技術をどう残すか?」を考える責任・義務はあるんじゃないだろうか?
私という個人の利益追求と自己実現は、今まで社会貢献と繋がっていなかった。
とは言っても、全く考えて来なかった訳でもない。
考えていた事は二つ。
日本文化のオリジナリティ
価値を生む人を支える管理(間接)部門としてやるべき事
日本文化のオリジナリティ
「日本のガラパゴス化」は大体悪い意味で使われるが、それは世界にオンリーワンの個性を持っているという事でもある。
そして、その個性に魅了されている人たちが世界中にいる。
この文化、技術は、日本人の自己満足だけでなく世界からも必要とされるものであるはずだ。
日本が日本らしさを失わないってどういうことだ。
どうやって日本文化を海外に向けて見せていくか、これまで接客接遇やコンテンツ制作をしながら常にテーマとして頭に引っかかっていた。
価値を生む人を支える管理(間接)部門としてやるべき事
昭和生まれの私は、高校の時にバブル崩壊を迎えた。
物心ついた頃に借家暮らしだった我が家は、私が10歳の時に一軒家を買って引っ越した。
13歳の時に父は工房から独立。
独立したばかりだというのに銀行が「お金借りてくれ」って持ちかけてくるんや、と話す父は誇らしげだった。
16歳の時に家の一階をぶち抜いて自分の工房に改築した。
そしてバブル崩壊。
二階にいる私に、一階の父の愚痴が毎日聞こえていた。
土地持ちである実家に電話する母の声が聞こえた。
バイトの面接に行く交通費の工面に困っていたら、「家庭菜園の野菜でしのげるから」と母が1000円貸してくれた。
今にして思えば、あんな社会環境ではいかに経営効率化したところで焼け石に水だっただろう。
それでも私は、「経営を改善しなきゃ、人材育成をしなきゃ」と、おぼろげに曖昧な思いだけ強く持った。
その後、いろんな職業を経験してきて、今の会社で一人総務に着任したのが2017年7月。
「売上げを立てる仕事」を最大限スムーズにするための仕事は、追い付かないと17人の赤子がギャン泣きし出す阿鼻叫喚地獄なんだけどめちゃくちゃ面白くて、「これ私がやりたかった仕事やん!」と気が付いた。
つまり、私は父を継ぐというより、父を支える母の仕事を継ぎたいのだとも言える。
もう一つ私の原体験として「高校コーラス部の部長」があるんだけど、これはまた別の機会に。
私のテーマ
と、言う訳で、私の中のテーマとして常に「日本文化の継承発信」と「主役を輝かせる役割」があり、いろんな経験を経て今ならやれるという根拠のない自信に満ち溢れている。
だからこの「変革と伝統シリーズ」は、アカウントを変えず「さや・小さな会社の一人総務」として書いている。
私の中では地続きだからだ。
日本文化を継承する人を輝かせる
これは今の私にとって「めっちゃやりたい事」であり「自己実現」である。
そしてこのテーマはそのまま、生まれた国に対する社会貢献と言えないだろうか。
であれば、これを現実的に継続していけるビジネスを作れれば利益追求と自己実現、社会貢献のすべてを満たしたプロジェクトになる。
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