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2023年に続く大冒険の振り返り④

履歴書を毎週のようにチーズ屋さんに持っていくものの、なかなか面接をしてくれるお店はなく弱気になりかけていた時、あるチーズ屋さんからご連絡をいただきました。

もらったのは面接の案内。いただいた時は信じられず、間違いではないかとメールの文面を何度も確認した記憶があります。面接は店長のいる本店でまずやり、その面接の結果が良ければその後に別の店舗で店長と副店長と三人でやると言われました。
面接の日はドキドキしながらお店に向かったことを覚えています。第一回目の面接ではひたすら自分のチーズに対する思いを語り、どうしても働きたい意志を伝えました。思いが通じたのか、なんとか一回目の面接に合格し、第二回目に。二回目はチーズの歴史やアレンジに関しての質問が中心でした。
フランス語はネイティブには到底及ばないけれど、熱意だけは届くよう必死で話しました。応答自体は大変でしたが、店長さんや副店長さんが私の拙いフランス語を真剣に聞いてくれたことが嬉しくもありました。


後日いただいた結果は、、、なんと合格。



留学一年未満で外国人で正社員として雇ってもらうことは奇跡に近く、報告を聞いた時は嬉し泣きしたのを覚えています。チーズはまだ一般的に開かれた分野ではないので母数としての学校も少なく、特段外国人に関してはハードルが高い分野です。また、どの学校もこうした条件をクリアしないと入学できないのは難しいことだと自身の経験で痛感しました。しかし、その分、喜びはひとしおでした。

心配していた労働VISAもチーズ屋さんがすぐに申請をしてくれたのでそれにもとても感謝の気持ちでした。合格をもらってすぐにお店にご挨拶に伺うと、スタッフの皆さんが「一緒に働けるのを楽しみにしているよ!」といってくださったのも涙が出るくらい嬉しいことでした。
不安も大きく、面接をさせてもらうために毎日チーズ屋さんを巡ったのも簡単なことではなかったけれど、努力してよかったなとしみじみ思ったのでした。



と、そこまでは順調でした。
しかし、チーズ屋さんが申請してくれたものの大使館から労働VISAの許可がおりないまま月日は経っていきました。あまりに長いので雇ってくれたチーズ屋さんにも何度も労働VISAの状況を聞いたのですが進捗なしとのご連絡しかなく、、気がついたら留学期間(語学学校に通うと決めていた期間)も終盤。VISAを申請してから半年が経とうとしていました。



そんな時、またチーズ屋さんの店長さんから連絡をもらいました。内容は「来週からお店は夏のバカンスに入る。(フランスはバカンス中はほとんどのお店が1ヶ月や2ヶ月など大型の休暇をとります。)バカンスが終わるとその後はクリスマス年末年始といった繁忙期に向けてお店が体制をつくっていかなければならず、従業員を雇わなければいけない。そのため、労働VISAが出るか待てるのは今週まで。もし今週までに政府から連絡が来なければ今回の面接の合格は無効となり、うちで働かせることはできない。今週まで進捗があったら連絡するが、もしなければ残念ながらそれまでになる。」と言うものでした。


結果、その週に連絡はいただけませんでした。数日間、悔しい気持ちと涙とが止まらず、焦燥感に包まれた日々を過ごしました。再度他に雇ってくれるお店を探そうとも考えましたが、例え雇ってもらえてもまたVISAという自分の努力でどうにもならない問題が立ちはだかります。リヨンは美食の街と言われるだけあり、料理人を夢見て留学にくる学生もいましたがそうした子も同じようにVISAが通らず帰国する姿をこれまで何度も見てきました。このまま待っていても同じだ。そう思った私は日本に帰国することを決めました。自分の努力次第でなんとかなるのであればチーズ屋さんの面接のように足が動く限り行動するけれど、そうではないという状況が決定打となりました。


帰国を決めたはよかったのですが、やりきれない思いはあり、あの時はモヤモヤした思いと悲しみの中から抜けきれずにいました。チーズについて学びたいと気合いだけでフランスにきて結局学校にも行けず、自分はなんのためにここまできたんだろうと自問自答する日々。何一つ成し遂げられなかったことが不甲斐なくて、自分に対して失望と情けなさばかり感じていました。



そんな時に支えてくれたのがパートナーや周りの友人たちや先生方でした。その中にはフランスにきてから知り合った人々もいて。こうして彼らと繋がれたことはフランスに来たからこそできたこと。
また、パートナー含め日本の友人にもたくさん支えてもらい、改めて周りにいる人々の大切さを感じました。みんなのサポートのお陰で少しずつ元気になっていくとともに、より周囲の存在の重要さを意識するようになりましたし、一期一会の出会いがあったこの日々こそが自分の留学の財産なのだと感じるようになりました。加えて、こうした出会いから生まれた経験も自分にとって糧となり一生の宝物になる時間だったと再認識しました。そう気づいてから、留学にきたことは正しかった、何も意味がないなんて思うのはやめようと思えるようになっていきました。


同時に、私はこの経験を今後に活かしたいと思いました。
VISAという自分ではどうにもならない問題でチーズについて学ぶことはできなかったけれど、きっとどの国にもこうした問題はあり、悩んでいる人はいる。また、何かをしたいとう夢をもつ人はたくさんいれど、行動することに迷う人や、夢を叶えるためにどうして良いかわからない人々も世の中には多くいるかもしれない。何かそうした人の手助けになること、そうした人に勇気やパワーを与えて背中を押してあげられるような何かをしたい。そんな風に思うようになりました。
加えて、コロナ中にチーズを学ぶことで生きる楽しみを与えられたように、自分自身これからもワクワクできることをしようとも思いました。


私にとっては、それが書くことでした。
なので、コロナで全て打ち切りになってしまったライター業を復活させることにしたのです。ただし、今回は趣味ではなく、これを自分の本業にしようと思いました。

そうして、私は自分の大好きな「食」について書くライターになることを決めました。私の記事を読んでくださる読者の方々はもちろん、夢を追う人々にパワーや楽しみ、必要な情報を届けられるような記事も書いていけたらと考えています。


書くことは大好きだけれど、やはりフランスでチーズの勉強を諦めたことを思い出すと今でも胸が痛くなり、文字にするまでに時間がかかりました。
しかし、やっと気持ちの整理ができ、書き上げることができた今、自分は一皮剥けた気がします。これで本当の意味でも新たに出発ができる気がしています。

これから自分にとっても、読者の方々にとっても、心からわくわくするような記事を執筆できるよう日々精進していきますので、どうぞライター「SaveurAmi」をよろしくお願いします。

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