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ワーク・ライフ・バランスは実現されるのか(1)

はじめまして。
突然ですが、正論ばかりを言うのは嫌いです。世の中のnegativeな面にばかり目を向けて躓き深掘りし、前を向かないのも私の流儀ではありません。人付き合いでも世の中でもなんでも、「北風と太陽」の太陽のやり方が正しいと固く信じています。暖かく照らせば自分も周りも居心地は良くなる、と。ですので、SNSも振り返った時に、温かい気持ちになるような楽しいお気楽なことしか載せないようにしています。

しかし、そうこうするうちに、年齢と共に、違和感にも目を瞑ることが多くなりました。それはそれで円熟味を増してきたのかもしれませんが、溜まっていた違和感が発酵し過ぎて漏れ出してきました。...コロナ発酵と名付けたい。あまりにも漏れ出し感が半端なく、貯蔵しておけなくなったので、次に何を続かせるか全く未定のまま(もしくは最初で最後?)のnoteの第一弾としてアップさせていただきました。 

(ちなみに、ちょうどNews Picksさんで「私とコラボ?!」と勝手に思った記事が出ていたことも背中をおされた要因です笑)

https://newspicks.com/news/5592573?ref=series

きっかけ

この数週間、誰に頼まれたわけでもないのに、なぜか焦って根を詰めて読んでいた本達があります。「大学4年間を10時間で」という中々乱暴な題名に手を出すこと自体焦ってる証拠だけど、とても面白く分かりやすく、感謝の念が起こるほど。出口教授、ありがとうございます。


「ワーク・ライフ・バランスなんてくそくらえだと思ってます」(某外資系投資銀行・男性)
「ワーク・ライフ・バランスなんていうCandidateは絶対連れてこないで」(某外資系投資銀行・女性)

昔外資系証券会社に勤務していた土地勘を買われ、昨年まで約2年間金融業界専門のヘッドハンティングの仕事をしてたときにクライアントに言われた言葉です。

「コロナで子供の世話で休む(もしくは早退する)同僚がいるせいで、自分の仕事が増えて本当にムカつく」(テレビで世論を引っ張る立場の友人(女性))

これは、緊急事態宣言中、グループラインで投げられた言葉。。

心底驚いてしまったのです。

私が働いてた15年前の世界じゃなく、、ある程度多分批判を覚悟の上であろう口に出された言葉達。聡明な彼・彼女達のことなので、世の中の動きに敏感じゃないわけでは決してありません。でも、出さずにはいられない、今の状況とそれまでの環境。前述の言葉達は女性だけじゃなく男性にも向けられているのですが、一般的には女性に向けられてることが多々でしょう。

というよりも、今時男女という分け方もないだろうという思いと、「女性」という単語を使うことで自分のとらえる事象を一般的事象にしてよいものか、の懸念はありますが、ここでは敢えて「女性」として括らせてください。

(「DIVERSITYの観点で女性が欲しい」と言われることも多かったです、「世の中の動き的にね~今女性が欲しいね~」と。心からというよりも建前が多かったでしょう。もちろん取り組む仕事は競争もハードだから理解するところもあるのですが。私も勤務当時は「ワーク・ライフ・アンバランス」でした)

余談ですが、自分は今まで経歴的に男子陣に入れられてたのだ!と気づいたのは子供を産んでからでした。me too matterはそれなりにありましたが、むしろ優遇されてたこともあったのかも、という遅すぎた気づき。母親になり子育てに勤しむだけで、がらりと周りからの目線と対応が変わり、驚きと大きな失望で最初は毎日を送っていました。そういった意味では、目線は「女性社会に入り込んだ男性」とも言えます。


データは正直

で、答えは多少出たのか?
まず、結論から申し上げると、漠然とした違和感と巨大な壁に改めて慄くことに。その理由として、主に以下の3点をあげます。(もちろん4冊と以下のデータだけで結論だすなという話ですが、この約15年間母親としての見聞きしてきた体感は無視できないものとも思うのでお許しください)。

まずは、こちらは内閣府の男女共同参画局のページ掲載のものです。平成24年度のものでちょっと古いですが、「教育別年齢別労働率の推移」です。
「小学・中学・高校卒の女性は,結婚・出産期に一旦離職した場合も,非正規雇用で再就職する傾向があるのに対して,短大・高専卒及び大学・大学院卒の女性は,新卒時に正規雇用で就職する割合が高いが,結婚・出産期に一旦離職した後に再就職する人の割合は相対的に少ないと言える。」
おっと。いきなり体感としてあったものがしっかり調査結果にでている。確かに、私の周りの専業主婦は高学歴の方も多い。要は復職する際に与えられる仕事が適材適所ではない、ということです。人材を無駄にしている、ということです。このデータは示唆冨み、与え関わらせる仕事内容、取り巻く社会環境やそれからもたらせる経済活動への貢献具合、女性の教育等々、分析の波及するエリアは深いと考えます。

上図のように、同じく内閣府の男女共同参画局ページ(今度は平成25年度)によると、データが示すM字カーブ(年齢を横軸にとった、年齢階級別女性の労働力率。出産や育児で労働力が低くなるとM字の谷になる)は確かに台形に近づき谷が浅くなってはきてます。浅くなってきた、ということは離職率が低くなってきたことです。しかし、前述の教育別労働率データを鑑みると、それは働きやすい社会になってきたという証拠にならないようにも思います。このデータは「企業の取り組みの差」が出たと言えるでしょう。

そして、こちらは令和2年度のもの。直近です。社会学でいう「再生産領域」のエリアの労働の男女の分担に関するデータです(「生産」領域労働は外で貨幣を生み出すもの、「再生産」領域の労働(家事育児))。言うまでもなく、今は男女ともに、両方を担うようになりました。私の周りのパパ達は、社会的に立場ある人でも再生産に深く入り込んでいる人もかなりいるので、もう少し数字が低いかと思ったのですが、、全くそうじゃない。ピンク、水色格子、からし色斜めのカテゴリーを足すと約8割を女性がやっているようです。....こ、これは、死ぬ。こちらはnewspicksさんの記事も指摘しているところです。(ちなみに、「「名もなき家事」(注1)という本を読んでみたい)

(ちなみに、SFはパロアルトに住む私のメンターのような友人とやりとりしたところ、あちらも2014年にアメリカで出版された「ハウスワイフ2.0」(注2 一時日本でも話題になりました)をそのままグレードアップさせた感ありの環境の様子…)

そして、3点目。「ライフ・ワーク・バランス」といったなんだか格好良い言葉の実態が成り立てば少子化というものも食い止められるのかな、いや、なんだか違うレベルな気がする、うまく説明できないけど、、、と思っていたところに赤川教授の本です。ずばり、「日本の少子化対策を講じる論者には、政策によって結婚や出生行動を左右できるという思い込みが強すぎる」、とありました。おっしゃる通りです。赤川教授の本はどの章も的を得ていたように思えます。「女性労働力率と出生率の関連は疑似相関であり、実際は都市化こそが両方にマイナスの影響を与える=女性が働きやすいから、出生率が高いではない」など、1段階も2段階も上の観点から論ぜられてます。「国民国家という単位は出生率の高低を論ずるには大雑把過ぎる」と断りはありますが、「一人当たり国民総所得が3万ドルを超える国」を「先進国」と定義するならば該当する30か国における出生率と女性労働力率は負の相関が認められる=女性が働く社会ほど出生率は低い、という傾向が認められる、という分析も出てます。ジレンマですね。

(出所:「これが答えだ!少子化問題」赤川学 ちくま新書 34ページ)

どうしたらよいのか

では、どうしたらよいのでしょう?M字カーブではなく独自の波波のカーブを渡ってきた一主婦の戯言ですが、解決提案なき問題提議は投げっぱなし感で気持ち悪いので稚拙ながら述べさせていただきたきます。ただ、じゃあ、具体的になにやるの?という具現化までは考えが至れてないのは、まだまだ勉強不足と不徳の致すところですが。

ずばり、今までのどの施策も男性を基準に作られてたもので、女性に寄り添うものではなく、女性も男性も独身も子持ちも、要はお互いの立場の理解不足からくることが、政策や制度に違和感を与える元凶ではないか、と当たり前過ぎる結論にいたりました。真剣に読み、改めて時間をとって考えたのですが、母親になってからの約15年間同じことを思い、やっぱりそうだよね、と確認作業だったような。でもやはり「お互いの理解不足」ですれ違いが起こっています。分かってるようで分かっていない。私もそうだったから。ということは、実は「政策」と同時、もしくはその前に「理解」を促す為の「啓蒙活動」をまずは打ち出すのがよいのではないか。

これは男女というジェンダー格差のみでなく、立場の違い(独身か既婚か、子ありか子なしか、子供が単数か複数か、親が近くにいるかいないか等)、様々なフラッグが立つと思います。お互い理解すれば、男女間の話だけじゃなく、女性同士の分断もなくなるはずです(前述のような友人の発言からくる、女性同士の分断は一番悲しい)。

影響力のあるマスメディアで取り上げられる姿で、後に続く後輩達が無理目で間違ったスタンダードを持つこともあるでしょう。例えば、硬派なメディアに取り上げられる「華々しいキャリアと共に家事育児も積極的」と謳われる女性の陰には、伴侶が専業主夫だったり、シッターさんがフルで常駐だったり(どちらも素晴らしい)。でも、その事実が、記事と同時に表には出ないのは、なぜでしょう。再生産領域の労働への不理解により、こうあるべきという姿を導かれ、どちらも出来て当たり前、もしくは頑張ればできる、という意識が取材する側にもされる側にも無意識にもできあがっているからではないでしょうか。これはお互い首を絞める結果に。逆も同じことが言えます。男性も従来の役割にだけ縛られるのは、おかしいと。

2番目として、『(仕事の)分断のない継続のための政策』から、更に踏み込んだ『中断から復帰しやすい政策』を。同じく、もちろんイクメンが増えた男性社会にも当てはまることです。イクメンは間近で育児の大変さを知ってるからイクメンになるのです。

私の周りには、それまでの仕事を潔く中断し、別の道を歩んだり、少しペースを落として働く魅力的で賢明な女性が沢山います。ご自分の稼ぎで本当は十分独り立ちできる実力があるので、結婚した今が経済的に恵まれているからという理由だけではないはずです。その時々に必要とされる子供の情緒の発育も考えるべき大切な要因の一つのようにも思います。3歳児神話がよし、と言っているわけではないです(こちらは機会があればまた触れたい)。

そのような女性を「マミートラックに自ら進んだ」という見方をすることもあるようですが、その時の自分や子供や家族をいたわる気持ちの決断は尊い。遺伝子本来の「子孫を安全に残したい」という生存欲求からくる、尊重するべきものだ、と私は思います。次世代を育てることは一つの大きな事業なので一時期はそれに集中する時期があってもしかるべき。それに、その期間にタイムマネジメント等学ぶことが多いのはよく言われることで、決して無駄ではないはずです。

ちなみに、ずっと第一線を突っ走り今はGAFAの一企業でトップを張る大学の先輩女性が、仕事に戻りたいという次女を産んだばかりの私につぶやいた言葉が忘れられません。「私は何億、何十億積まれたとしても、子供がかわいいところをもうみられないのよ。だから今を大切にしてね」と。いつもはキリっと美しく荒波を渡り歩いてきたであろう素敵な彼女がそうつぶやいたのは、意外でもあり、ちょっと切なくもありました(でもきっと、彼女には悔いはないと思います)。何十億、積まれるのも、ありだけど。両方あるといいな笑。

本当の多様性とは

冒頭にも書きましたが、世の中の不出来や不都合にばかり目を向け、そこに躓いているのは私の嗜好では決してありません。どちらかというと嫌い。でも、この違和感は記しておきたく。なんだか机上の論理ばかりが飛び交っているように感じるのです。

美しくマイペースに楽しく自分の道を歩んでいる友人達(例え「生産領域」で働いてなくても、もちろん価値はあると断言します)や、そしてそんな女性達が沢山増えて、光が当たっていけばいいなと思います。世の中のNEGATIVE HOLEをすっかり超越して、社会基準の変化を待つのではなく、自分から選び取っていく、という潔さ。相手の立場を認めあう。自助だけではなく、公助と共助。それこそが本当の、多様性のある世の中だと。

お付き合いありがとうございました。だいぶ長くなってしまいました。

その他楽しく読める関連文献

(注1)「やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた」梅田悟司 育休を4か月取得したコピーライターの著者が感じたこと。無限にある「名もなき家事」に名前をつけて70項目にまとめた本。


ちなみに、勝手に敬愛する篠田真貴子氏が書かれたこの本の書評が秀逸です。
https://note.com/hoshinomaki/n/n3c58e4c6964e名もなき家事の最たるものは(「名もなき家事に名前を付けた」) | きのう、なに読んだ?|篠田真貴子|note

(注2)ちょっと古くなりますが(2014)、状況はあまり変わってなさそう。コロナで益々その動きは加速かも?「ハウス・ワイフ2.0」エミリーマッチャー他2名 アメリカの高学歴女性の間でHOUSEWIFE回帰の動きがあると記し、話題になった本。ハーバード、エールなど一流大学を出ていながら、投資銀行、広告代理店、官庁などの職を捨てて続々と主婦になるアメリカの若い世代をまとめた本。ハウスワイフ2.0 | エミリー・マッチャー, 森嶋マリ | 社会学 | Kindleストア | Amazon

こちらも少し古い記事(2016)ですが、コモンるみ氏のブログでも同じような状況が示されています「アッパーイーストの高学歴女が専業主婦を選ぶわけ」 | だれも書かない★ニューヨーク1%未満★ (ameblo.jp)
https://ameblo.jp/rumicommon/entry-12216299884.html


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