Satochem

年間10コマ以上の講義をこなす大学教員。専門は化学系。noteは備忘録と主に研究とはあ…

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年間10コマ以上の講義をこなす大学教員。専門は化学系。noteは備忘録と主に研究とはあまり関係ないつぶやきを書いていこうと思っています。

最近の記事

学会多すぎ問題

みなさんは年間に何回学会に出ているだろうか? 最近ちょっと考えることがあったので書き連ねてみたい。 学生時代の学会参加数 研究室に所属すると学会に参加する機会がある。その学会に出て発表することがまず目標になるだろう。 化学系では年に一度大きな学会が開かれる。とりあえず毎年その学会に出られることを目標にした。同じ学会では同じ成果は発表できないことから、割ときつい目標だったけど、それなりにペース配分を考える上では良かったと思う。 学年が上がっていくうちに参加する学会が増えた。

    • 研究室の常日頃のお掃除:7エタの活用が捗る話

      皆さんは研究室の掃除をどうやっているでしょうか?一年に1回ないしは2回程度、大掃除を行ってキレイにしているところが多いのではないかと思いますが、常日頃の掃除も重要だと思います。 実験室もそうですが、デスクワークを行う机も使っているとだんだんと汚くなっていって、気分もよくないし、健康にもあまりよくありません。 COVID-19のパンデミックを経て、殺菌効果のある洗剤や空気清浄機などが注目されましたが、研究の分野では"7ETA"と呼ばれる物質が殺菌のためによく活用されてきました。

      • 国際学会に参加するときに準備すること

        2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、国際学会も対面で参加しやすくなった。久々に対面で国際学会に参加してきたので、感想と、COVID-19以前との違いについて感じたことを書こうと思います。 事前準備:手続き編参加した学会の情報 ・アメリカ電気化学会 ・開催場所:サンフランシスコ ・形式:対面とデジタルプレゼンテーション(後述) 学会に参加したきっかけ この学会は複数のテーマについてのセッションで構成されている。それぞれのセッションにはセッション

        • 北大のニュースについて思うところ

          これ、他の記事では割と広々とした実験室もそのままだったのだけど、研究室業務なし、学科の業務なしで一人で実験だけできるのなら、それはそれで良い、かも?とも思ったり。 他に何か圧力とかあるのだろうか?

        学会多すぎ問題

          AIによる英文校正ツールの使用感など

          論文を書くときに必要になるのが英文校正で、昔はEditageとかEnagoとかの英文構成業者を使っていた人も少なくないと思います。自分で校正できたらよいのですが、どうしてもNativeのようなうまい表現を求めると外部に頼りたくなってしまいます。 最近ではAIによるEditing toolが出てきていて、これを利用すれば業者よりも安価にかつ望み通りの校正ができるかもしれないと思いました。昔はGrammerly一択だったのですが、色々なツールがでてきてどれを使ったらいいのか迷って

          AIによる英文校正ツールの使用感など

          研究室という特殊な環境

          アカハラ、パワハラ、研究不正etcなどのニュースを見るに、大学の研究室って特殊な環境だなあと思う。 構成員が短期間でほぼ確実にいなくなる こう書くとぎょっとすると思うけども、大学の研究室の構成員は学部学生、大学院生がほとんどだ。彼らは学位を修得すると企業に就職したり、他の研究機関にいったりしていなくなる。まともな研究室なら最大6年でほぼ確実に構成員がいなくなる。企業でいうと6年失業率100%だ。このことは短期間で構成員ががらっと変わってしまうということを意味している。構成

          研究室という特殊な環境

          見てるのは分子の実像か虚像か

          有機化学という分野の研究は、とりあえずものを作ってみることが大前提だ。ただし、このものというのが分子という目で見えないとても小さなもので、本当に実在しているのか定かでない。いや、実在していないとそもそもこれまでの有機化学とはなんだったのか、ということになるのだけど。 構造有機化学という怪しい分野 有機化学の分野は大きく、ものを作る新しい反応を作り出すか、新しいものを作り出すかの二つに分けられる。そのうち、後者は新しい分子の「形」をデザインして新しいものを生み出す。考えてみ

          見てるのは分子の実像か虚像か

          NMRに含まれる不純物まとめ

          NMR測定において不純物のピークは気になるところです。なんのピークかまとめられているところがほぼないので、覚書として記載しました。 可塑剤 フタル酸ジアルキルエステル誘導体なので、芳香族領域に出てくるやっかいなやつ。 見分け方:1H NMR スペクトルでは、重クロロホルムのそば、7.4-7.8 ppm に二本のmultipletと、4 ppm付近にmultipletが見えるのが特徴。 除き方:丁寧にカラムクロマトグラフィーをするのがおすすめである。 エーテル系溶媒の反

          NMRに含まれる不純物まとめ

          まだ間に合う!大学院入試(自然科学系)の日程について(私学・関西)

          前回は国立大に絞ったけど、私学の情報も掲載。但し、多すぎるので関関同立のみ。私立大はもともと学部の人数が国立大に比べて多く、大学院から入るのはなかなか大変な印象。 立命館大学学内者の試験と外部の受験者の試験が分けられているのが特徴。一般枠は基本的に少なめ。 先端総合学術研究科 第3回の入試が2月に開催される。 ・出願期間は12月中旬〜1月上旬 ・試験日は2月上旬。合格発表は2月下旬。 ・出願には研究計画書と年次計画書の提出が必要。英語はなさそう? ・試験は専門科目と面接

          まだ間に合う!大学院入試(自然科学系)の日程について(私学・関西)

          研究室選びについて補足

          研究室を主宰して、色々な学生を見てきた観点から、研究室配属もしくは大学院選びについて、数あるアドバイスとは違った観点での選び方を示したい。 以前、博士課程に進学する人向けに同じテーマでしたためたが、今回はそれの一般的なバージョン。 直感を信じようこう書かれては元も子もないと思うだろうけど、結局は自分の直感を信じるしかないように思う。理由はいくつか。 ・研究室の雰囲気は今いる人でころころ変わる。見学に行ったときにいた先輩が配属されたらいなかったなんてのもザラ。 ・研究テーマ

          研究室選びについて補足

          まだ間に合う!大学院入試(自然科学系)の日程について(関西)

          大学院は8-9月に入試を実施してそれで終わりのところが多い。しかし、それになにかの間違いで残念な結果になってしまった場合、まだ学生を募集している大学院を探さないといけません。大学の入試の情報は多々あるものの、大学院に関しては情報が少ないので、関西の国公立大学についてめぼしいところの情報をまとめてみました。 旧帝大【京都大学】エネルギー科学研究科 ・試験は9月下旬実施。願書提出は8月末〜9月初旬。 ・英語試験はTOEICまたはTOEFL。令和6年度版では、受験時期が指定され

          まだ間に合う!大学院入試(自然科学系)の日程について(関西)

          有機化学の参考書はどれがいい?

          こんにちは。有機化学の講義を多数やっている都合上、色々な教科書を所持しています。どの教科書もクセがあって一長一短で「これ」という教科書がない印象ですが、それぞれどんな特徴があるかを紹介したいと思います。 ※私が持っている教科書のみ 基礎的な教科書ベーシック有機化学[第2版] 大体の有機化学の知識を網羅的に記述している入門的立ち位置の教科書。章立てはオーソドックスに、原子の構造から入る形式。 ・酸・塩基(pKa)や反応エネルギーなど、物理化学的な部分は大分省略されている。

          有機化学の参考書はどれがいい?

          研究室の選び方:博士課程進学を考えている人編

          こんにちは。 今回は研究室の選び方についてコメントします。すでに色々なサイトが研究室の選択について指標を示していますが、ここでは博士課程進学を考えている学生、もしくは可能性を考えている学生に向けて、どのような基準で選ぶと良いかを提案しようと思います。 自らの経験、および、PIとして色々な研究室を見てきた経験に基づくものですので、絶対ではないことを最初に言っておきたいと思います。 JSPSの特別研究員に採用されたことがある、もしくは、指導学生が特別研究員に採用されたことがある

          研究室の選び方:博士課程進学を考えている人編

          明らかなブラック研究室を避けるために

          誰の目に止まるかわからないけれど、明らかにブラックと思われる研究室を選ぶ学生がいるので、この記事をしたためる。 ブラック研究室とは何か?について色々書いてあるブログやYoutube動画がUploadされているが、実情を書いているのはなかなかないと思う。時間拘束とかHPの更新頻度なんかはいくらでも取り繕えるので、全く当てにならない。というか、ブラックと思われる研究室はそう思われないように、色々画策しているものである。また、成長できるか?という指標も実際に入って時間を過ごしてみ

          明らかなブラック研究室を避けるために