NMRに含まれる不純物まとめ

NMR測定において不純物のピークは気になるところです。なんのピークかまとめられているところがほぼないので、覚書として記載しました。

可塑剤

フタル酸ジアルキルエステル誘導体なので、芳香族領域に出てくるやっかいなやつ。

見分け方:1H NMR スペクトルでは、重クロロホルムのそば、7.4-7.8 ppm に二本のmultipletと、4 ppm付近にmultipletが見えるのが特徴。
除き方:丁寧にカラムクロマトグラフィーをするのがおすすめである。

エーテル系溶媒の反応物

THFやジオキサンを強酸性条件で反応させるとたまに混じる。THFからは4-chlorobutan-1-olが出る。

見分け方:1H NMR スペクトルでは、3.5 ppm 付近にABqのシグナルが二本見える。THFを使った場合はたまに見かけるので注意。
除き方:沸点が80℃程度と低いので、真空にして40℃くらいで加熱しておくと除ける。お手軽。

安定剤

エーテル系溶媒に含まれる、BHT(4-tert-butyl-2,6-dimethylphenol)。

見分け方:芳香族領域にsingletが一つ、2.0 ppm付近のベンジル位由来のシグナルが6H分見える。フェノールのシグナルが見えることもある。
除き方:極性が高いのでカラムで簡単に除ける。

グリース

真空にするために使用するグリースが混入することがある。シリコン系とアルキル系の2つがあるが、多くはシリコングリースを使っているので、シリコン系のグリースの不純物をよく見かける。
※最近では中圧分取カラムクロマトグラフィーでよく使用するプラスチック系のカラムを用いると見えることがあることがわかった。ジメチルシリコン系のものがカラムから流出しているのではないかと思われる。

見分け方:0.08 ppmにsingletが見える。
除き方:低極性溶媒(特にヘキサン)に溶解する。ヘキサンを貧溶媒として再結晶できるのなら、それで行う。もしくはカラムクロマトグラフィーをヘキサンを展開溶媒として行い、極性溶媒を添加して目的化合物を流出させる。

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