#SF小説が好き
【SFショートショート】プレリジン または着の身着のままゲーム機
今日こそ、このゲームをクリアする。
僕はケースからタブレットを取り出し、ミネラルウォーターで喉に流し込んだ。
薬ではない。
これが、いわばゲーム機なのだ。
ケミカルゲームマシン〈プレリジン〉。
これを飲むだけでゲーム世界に没入し、ゲームの主人公となり、まさに実体験のようにゲームをプレイすることができる。
どんなデバイスもメディアもネットワークすら必要としない、着の身着のままで遊べる
【SFショートショート】戦国時代の自動操縦(オートマタ)
そのG3型恒星には、大規模な異変が起きようとしていた。
近日中に太陽嵐が発生し、系内の惑星に高エネルギーのプラズマが到達すると予測された。
恒点観測ドローン7号は、司令船からの指示により恒星と各惑星のスキャンを行ない、その第三惑星に知的生命体の存在を発見した。
「二足歩行型の高度な知的生物が、惑星全土に棲息しています」
「文明レベルはどの程度か。太陽嵐の影響は著しいものとなりそうか」
司
【SFショートショート】Slippin’ High school またはスベり高等学校 ループ編
その小さな町の高校に入学した日、あいつは俺に言った。
「お前…また一年生か…スベったな?」
スベった?
留年のことなら「ダブった」だろ。
何を言ってるんだ?
それに俺はダブってなんかいない。
今日、入学したばかりなんだから。
あいつ…芳山健とは同じクラスだった。
そして、そのクラスには堀川祥子がいた。
「おはよう!佐々木くん!」
堀川は、初めて会ったその日から俺の名前を知ってい
【SFショートショート】黒い月 (またはイライラする挨拶代わりファーストコンタクト編)
正体不明の物体が地球に接近してきた。
世界中の天文台がその存在を確認した。
それは巨大で真っ黒な球体だった。
一時は衝突が危ぶまれたが、球体は地球の静止軌道に達するとそのまま第二の月のように地球の周りをめぐり始めた。
ほどなく、球体の中を発信源とする強力な電波が世界中で受信された。
驚くべきことに、それは地球で使われている55種類の言語による通信だった。
通信内容は、異星文明からの
【SFショートショート】侵略のポッキーゲーム(または半笑いのポッキーゲーム)
宇宙は暗黒の森林……
いつ、どこに潜んだ狩人たちが、他の星に襲いかかるかわからない。
そして、ついに地球にも恐るべき狩人の魔手が伸びてきた。
地表に落下したカプセルから現れたその不定形生物は、飛び交う電波から情報を収集し、この惑星の住民に近づいてその生命エネルギーを吸い尽くす手段をつかんだ。
すなわち、セクシーで美しい女性に変身し、その魅力で誘惑した男たちからエネルギーを吸い尽くすのだ。
【SFショートショート】金持ち教習所 高額当選編
ついに当たった。
夢の超高額当選である。
そして私は「金持ち教習所」に入った。
かつて宝くじの高額当選者には、銀行から「高額当選者の手引き」なる冊子がおくられたという。
しかし世界的な経済恐慌が長引き、大金の使い方を忘れた人々は副賞クラスの当選でも舞い上がり、その金に振り回されてほとんどが身を滅ぼしていた。
そんな人々の自滅防止につくられたのが「金持ち教習所」である。
高額当選者
【SFショートショート】侵略の季節 またはほんの一部スイカ
時は来た。
ひときわ暑い夏が。
とある惑星侵略のために身を潜めていたクマート星人は、高温多湿下で活発に活動する。
彼らが、その恐るべき科学力で造った宇宙艦隊を目覚めさせる時が来たのだ。
「発進!」
クマート星人の球形宇宙戦艦群が、ついに砂を割って姿を現した。
惑星の原住民たちが一斉に走り出す。
が…
彼らは逃げるのではなく、艦隊に向かって来た。
しかも、その姿は恐ろしく巨大だった
【SFショートショート】最後のビーム またはスナイパーの意外な使い方
おかしいと思ってはいた。
人類の存亡をかけたこの計画に、なぜ俺のような犯罪者が加わっているのか……
人類が母星を捨て外宇宙に散っていった「大離散」から数世紀。
植民惑星のひとつ〈HE16〉では、長引く内戦と気候変動によって、惑星自体が限界を迎えていた。
植民地政府は最も近い居住可能惑星〈F825〉への移住を決定。人類の安全な繁殖限界である500人の市民が選ばれ、亜高速宇宙船とコールドス