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2023年5月の記事一覧
【ショートショート】メガネ朝帰り And she was編
全ての間違いは、メガネをコンタクトにしたことにあった。
極度の近視だった俺は、買ったばかりのコンタクトレンズを会社の廊下でくしゃみしたはずみで落としてしまい、途方に暮れた。
「何探してるんですか?」
声をかけてくれたのは、ひそかに憧れていた秘書課の布都島さん。
顔はぼやけているが声でわかる。
「いやあ、コンタクト落としちゃって…」
「まあ、大変。探しましょう」
布都島さんは俺と一緒に懸命
【ショートショート】火星の別件逮捕 ファーストコンタクト編
ついに追い詰めた。
火星の赤い大地の上で、私は容疑者の前に立ちはだかった。
「トム・ゴンドー、不動産詐欺の容疑で逮捕する!」
ゴンドーはライフスーツのバイザー越しに笑って見せた。
「逮捕?一体どんな権限で逮捕するというのかね?一介の植民地保安官である君が?」
「そ…それは、地球連邦法に定められた権限に基づき…」
ゴンドーの笑い声がイヤーパッドから響く。
「知らないと思っているのかな?確かに
【ショートショート】半分ろうそく 死神エイリアン編
貨物宇宙船〈オオバヤシマル〉は致命的な危機に瀕していた。
積荷は植民惑星で採掘された鉱石だったが、そこに潜んでいたエイリアンが船倉で覚醒。
乗組員を襲いはじめたのだ。
その獰猛さはまさに「死神」。
さらに知能も備えていたエイリアンは、船の動力室を襲撃し、照明をはじめとする船内の電気を断ち切った。
乗組員たちは船の中心部にある食堂に籠城し、なんとか襲撃を凌いでいた。
そんな中、一人の乗
【ショートショート】伝書鳩パーティ ー ビジネス編
ある会社が、創立十周年を迎えた。
会社の業績は上々であったが、そんな中で社員役員の資質には変化があった。
自ら考えて仕事をより良い形で進めるより、上役の指示を無難に実行しようという方向に傾いていた。
いわば「伝書鳩」化していたのだ。
その指示も、しばしば伝わる過程で本来の主旨を欠いたものになることがあったが、社内の人々は好調な業績に多少のことには目をつぶった。
そんな時、社長は関
【ショートショート】心お弁当 覚醒編
チャイムが鳴り、女子高に昼休みが訪れた。
佳音は憂鬱な予感を抱えながら弁当箱を開ける。
「うわ、その弁当すごくね?」
隣の席の鈴香が笑った。
佳音はため息をついて、乱雑におかずが盛り付けられた自分の弁当に箸をつけた。
「ひどい盛り付けだよね…味は悪くないんだけど…」
「佳音のお母さん、不器用なの?」
「てゆーかねー。自分の手で盛り付けないからこうなるんよ」
「自分の手…って、じゃあどうやっ