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「稚拙で猥雑な戦争劇場」4

場面4/ルバム・とある村・フセインの邸宅

    孤児3人ピーチクパーが絵を描いて遊んでいる。
    そこに御麿がバケツにごはんを持ち登場。
    孤児たちにごはんを配給する(おわんにゴム)。

御麿  「ケツコーラ、ケツモチ、モチモチ」
3人  「アツギリ、シットリ」

    3人喜んで食べるが、もちが噛み切れずにいる。
    やがて往年のゆーとぴあのギャグのようなゴムネタ。
    そこへやってくる百合子、織部、ピーター。
    孤児たち少し隠れるが、織部の怪我を見て。

百合子 「すいません!すいません!」
ピー  「ホケンヤ」
チク  「ホケンヤ」
御麿  「確かに怪我をしてるマロ。どうしたマロか?」
織部  「あ痛ったたたた!」
百合子 「少しの間、ここで匿っていただけませんか」
御麿  「あら珍しい。日本人ね」
ピーター「私はアメリカ人です」
御麿  「やだー。アメリカ人なんて匿えないマロ」
ピーター「そこを何とか。仏の顔も三度までです」
百合子 「お願いしますよ。他に頼れるところがないんです」
御麿  「・・・分かったわ。いらっしゃい」
百合子 「ありがとうございます白塗りさん」
ピーター「サンキュー白塗り」
御麿  「こういうときはお互いさま。私もよく石を投げられるの。こっち
     へ来るでオマ」

    御麿、撃たれた織部の肩を汚い布で縛る。
    その様子を見ている孤児たち。

御麿  「ここはいつ誰が死んでもおかしくないでマロ。こんなかすり傷で
     済んでよかったでマロ」
織部  「いたいいたいいたい」
御麿  「こんなかすり傷くらいで」
織部  「だって痛いんだもん。ピストルで撃たれたんですよ」
ピー  「シビレフグ」
パー  「シビレフグ」
チク  「テッチリテッサ」
御麿  「あっちで遊ぶがいいでマロ。はい!終わりマロ」

    孤児たち、離れたところで無邪気に遊び始める。

織部  「ありがとうございます。ルバム市民は政府に守られてるって聞いてたのに、これは・・・みんな白塗りさんの子?」
御麿  「私は子供が生めないの。この子たちはみんなみなしごでオマ」
百合子 「みなしご?この子たちのご両親は?」
御麿  「ルバム無差別爆撃のときにみんな死んでしまったでマロ」
百合子 「ルバム無差別爆撃?」
御麿  「1999年にアメリカ軍が起こした、あれでオマ」
織部  「なんですその事件は?そんな事件聞いたことないですよ」
百合子 「あ・・・」
織部  「どうかしました?」
百合子 「フセイン閣下が私の父に言っていたような」
御麿  「フセイン閣下に会ったのでオマか?」
織部  「僕たちはフセイン閣下の邸宅から逃げてきたんですよ」
御麿  「そうだったでオマか」
百合子 「ルバム無差別爆撃、確かその事件のことを言ってたと思います」
織部  「それってどんな事件なんですか?」
御麿  「1999年にアメリカ軍が攻撃をしたんでオマ。ルバムの人たち
     は逃げる間もなく死んでしまった。2万人が殺されたんでオマ」
織部  「知ってた?」
百合子 「全然知らないです」
織部  「僕は一応毎日新聞を読んでますが・・・報道されてないんじゃ」
御麿  「きっと政府が報道規制を敷いたんでオマ」
百合子 「報道規制?」
織部  「日本政府にとって都合が悪いニュースだから?そんなのあり?」
御麿  「その報復としてアメリカ同時多発テロを起こしたんでオマ」
織部  「同時多発テロはよーく知ってます」
百合子 「ええ、ニュースでも特集を組んでたし」
御麿  「きっと政府に都合のよいニュースだったんでオマ」
百合子 「そんな・・・」
織部  「じゃあ、この国が好景気だというのもウソなんですか」
御麿  「好景気?みんな生きていくことだけで必死でオマ」
織部  「日本は全然景気が良くならないからここに車を売りに来たのに」
百合子 「そうかしら。日本の景気はいいってニュースで言ってたわ」
織部  「景気がいいのは金持ちだけです。とにかく全然ノルマ達成できな
     いんだから。こんな不景気続きご勘弁ですよ。その上税金まで上
     げられたもんだから総理大臣は僕らに死ねって言ってるようなも
     んですよ」
御麿  「日本も切実ですね」
百合子 「努力が足りないだけなんじゃないかしら」
織部  「なんだって?」
百合子 「日本は充分裕福だと思いますよ」
織部  「社会に出たこともないヒヨっ子に言われたくないですね」
御麿  「ちょっと失礼するでオマ。ゆっくりしてるといいでオマ」
百合子 「あ、ありがとうございます」
織部  「どうもすいません」
百合子 「あの子たちを見て。この国に比べたら日本は裕福だと思いません
     か?」
織部  「それとこれとは全然違う話でしょ」
百合子 「なぜ日本が裕福だか考えたことがありますか?」
織部  「急になに?そんなこと考える余裕もないよ」
百合子 「アメリカがずっと戦争をし続けて、武器を売り続けているからで
     す。戦争がなくならないから日本はずっとアメリカの恩恵を受け
     ていられるんです。あの子たちが戦争で親をなくしたおかげで日
     本は裕福な暮らしをしていられるんです。恥ずかしいとは思いま
     せんか」
織部  「僕が生まれたときはもう日本は戦争に負けた後なんです。アメリ
     カがどうとか日本がどうとか。この国の子が何で不幸なのかと
     か。僕が何とかできることじゃないでしょ。僕はとにかく生きて   
     帰りたいの。車が売れるようになって欲しいの。それだけ」
百合子 「じゃあこの国の子どもたちが幸せじゃなくてもいいっていう
     の?」
織部  「そんなこと言ってないでしょ。僕にできることなんて何もないで
     しょう」
百合子 「最低!」
織部  「なんで最低なんだよ。そんなこと僕たち庶民が考えることじゃな
     いでしょう」
百合子 「おじさんみたいな自分勝手な人ばっかりだから世界がダメになる
     のよ」
織部  「百合子ちゃんも大人になればわかるよ」
百合子 「そんなんだから車が売れないのよ」
織部  「車が売れないのは不景気だからだって言ってるでしょ」
百合子 「おじさんには夢はある?したいことないでしょ!世界のことを考
     えようともしないでそれで大人って言えるの?」
織部  「怒った。おじさん怒ったよ。世界平和?そんなものはマイケルジ
     ャクソンとミッキーマウスが世界中に伝えてるでしょ。それでも
     平和にならないのはマイケルが死んじゃったからだよ。その分ミ
     ッキーと・・・キティちゃんが頑張ればやがては平和が来るんじ
     ゃないの?」
百合子 「本気?」
織部  「ある意味本気。あとはアメリカと日本が対等になれれば少しは変
     わるかも知れないね。日本は世界唯一の被爆国ですから・・・も
     し僕が総理大臣だったらそこを頑張るな。アメリカに従属してて
     も何にもならない」
百合子 「もしアメリカと戦争になったとしても?」
織部  「戦争にはならないでしょう。憲法で戦争を放棄してる国に攻撃し
     たら大問題になるもの」
百合子 「おじさん、馬鹿じゃないんだね」
織部  「馬鹿だと思ってたんだね。僕、もし総理大臣に会ったら絶対言っ
     てやるんだ。アメリカにへいこらしなくても日本は生きていける
     って」
百合子 「そうしたら世界が平和になるかもしれないね。総理大臣に会った
     ら言ってあげなよ」
織部  「うん。もし会ったら言ってやる。でもその前に、僕の暮らしを楽
     にしてもらいたいけどね」
百合子 「おじさん、見直して損しちゃったよ」
織部  「百合子ちゃん、お金より大切なものはないよ。お金はないとね」
百合子 「確かにそれはそれで大切だとは思いますけど・・・」
ピーター「ラブ&ピースですね」
織部  「ジョンレノンか」

    孤児たちと御麿が来て

孤児たち「ポルテ!ポルテ!マルガリーテ!」
織部  「なに?どうした?」
御麿  「あんたたちと一緒に遊びたいんだって(織部の方を叩く)」
織部  「いたったた。僕、撃たれたんだけど」
御麿  「そんなの私のツバつければ治るでマロ。ペッペッ!」
織部  「いいですいいです」
ピーター「鬼殺し、鬼殺し!」

    舞台アウトする連中。百合子と御麿残る。
    爆撃の音。

御麿  「あらいやだ。また爆撃でオマ」

    みんなを追うようにしてアウト。
    そこにベルマーレが来る。

ベルマ 「(土の匂いを嗅いで)テニス!」

    エロが来て。

エロ  「テニス!オマロ?」

    フセイン邸。
    フセインとフーセンが来る。明神は布をまとっているが犬扱い。

明神  「ワンワンワーン」
フーセン「それは本当なのね!」
フセイン「百合子が生きていたか・・・よく見つけてくれました」
エロ  「ありがとうございます。ベルマーレの鼻のおかげです」
フセイン「よくやりましたベルマーレ。しかし何故そこで捕らえなかったの
     です?」
エロ  「御麿がいたので」
フセイン「御麿が?」
エロ  「はい」
フーセン「早く確保して頂戴・・・そうだ、私をその村に連れて行きなさ
     い」
フセイン「ママ、ママはうちの玄関すら通れないじゃないですか」
フーセン「言わないでちょうだい」
明神  「すごい!わがままボディですね」
フーセン「うるさい犬ねえ」
明神  「この状況にだんだん慣れてきてる自分がいるんですが、お願いが
     あります」
フセイン「なんですか?」
明神  「せめて放し飼いにしてくれませんか?」
フセイン「それは無理な注文です」
明神  「もし何かあれば殺してくれてもいいから」
フセイン「あらそう」
明神  「とにかく首がかゆくて仕方ないんだよ」
エロ  「閣下、いかがでしょう」
フセイン「エロ、この犬に不審な動きがあれば即刻処刑しなさい」
エロ  「分かりました」
明神  「俺には明神健一郎って名前があるんだ。健さんって呼んでくれ」
フセイン「リードを外してあげなさい」
エロ  「は!ベルマーレ、ヨサク!」
ベルマ 「テニス」
明神  「エロさん、俺、頑張りまーす」
エロ  「何を頑張る?」

    首輪からリードを外していると、現れる神田川総理。

明神  「総理大臣!」
神田川 「フセイン閣下、これは一体どういうことだ?」
明神  「やっと人間になれたところです。もしかして助けに来たんです
     か?」
神田川 「君のことは見えていない」
明神  「ワン!」
フセイン「どういうこととは?」
神田川 「空爆が再開しているではないか。何かアメリカに連絡をしたの
     か」
フセイン「神田川総理、我々が何を言ったってアメリカが動かないことはご
     承知のはず。私は神田川総理の仕業かと思っていましたが、そう
     でないならば。両国にとって残念なことです」
神田川 「どういう意味だ」
フーセン「日本もまた、本当の意味でアメリカと同盟国ではないのですよ。
     あなたの個人的な頼みでアメリカは数日は我が国への爆撃をやめ
     ました。しかし、その指令は神田川総理の意のままに動かせるわ
     けではないと、オバマはあくまで日本はアメリカの属国なのだと
     示したのかもしれませんね」
神田川 「早くこの国との戦いを終らせたいだけだろう」
フセイン「神田川総理、私たちは一方的にアメリカに攻撃を受けているだけ
     です」
神田川 「報復をしても、戦争は終らない。アメリカは戦争をするために戦
     争をしている。それくらいはあなたも分かっているだろう」
フーセン「我々は正当な主張をしています。我々ルバム国民が不自由なく暮
     らせるだけの土地さえ返還されればこの戦いを終らせたい。しか
     しアメリカの目的はそれだけではないでしょう」
神田川 「戦争を終らせるきっかけは作れるはずだ。たとえアメリカの目的
     が石油だとしても」
フセイン「日本はアメリカの属国であるがゆえに世界でも有数の経済大国に
     なりましたね。アメリカが戦争をするたびに日本は潤います。そ
     して日本は集団的自衛権の決議と国際協力隊の結成を以て、軍事
     面でさえもアメリカに従属した。これは神田川総理、あなたの重
     罪です」
神田川 「それは違う。我々は属国からの脱却のために集団的自衛権と国際
     協力隊を打ち立てたのだ。確かにアメリカは集団的自衛権を以て
     日本の自衛隊を戦争に送り込めるようになったと喜んでいる。米
     軍だけではなく自衛隊員も異国の地で戦死することになると、そ
     う思っている。しかしそれは我々の本意ではない。日本がアメリ
     カと対等に会話できるようになるために必要なコンテンツなの
     だ」
フセイン「本当ですか?日本人は何枚も舌を持っていると聞きます」
神田川 「本当だ」
フーセン「ところで集団的自衛権の決議を機に、多くのテロリストが日本の
     都市を標的にし始めたと噂が流れていますよ」
神田川 「我々はテロには屈しない」
フセイン「・・・石油なんかいくらでも渡してあげたいくらいです」
神田川 「ここを世界の火薬庫と言い出したのはアメリカの学者だそうだ」
フーセン「質の悪いアメリカンジョークですね。ほっほっほっほっほ」
神田川 「そろそろ本当のことを教えていただこう。私の娘をどこへ隠し
     た?生きているんだろう?死んだというなら亡骸を見せてくれ」
フセイン「申し訳ないが死体は見つかっていません。おそらくあの爆撃で
     は・・・」
神田川 「亡骸も出せないならば、あなたを信用するわけには行かない」
フセイン「そうですか」
神田川 「百合子を返してくれ。今も、私の秘書が国中を探している。必ず
     百合子を見つけて連れて帰る」
フセイン「連れて帰る?神田川総理、ここは世界の火薬庫、ルバムですよ。
     無事に帰れると思ってらしたんですか?」
神田川 「なんだと」

    エロとベルマーレ、が神田川を囲む。

明神  「すいません・・・百合子って誰ですか?」
神田川 「私の娘だ」
明神  「ええ?総理大臣の娘?それって・・・(さっき生きてるって)」
フセイン「ハウス」
明神  「ワンワン」

    暗転。

5へ続く

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