見出し画像

上司の不安を見える化してあげよう

米系企業で長年、多くの上司に仕えてきました。自分も上司という立場だったので、わかるのですが、パッと見、自信満々に見えても、上司の頭の中は「あれどうなってるかな、これが起きたらどうなるんだろ」などと、あれこれ不安が起きる場面を想定しまくっています。

自分も含めて、上司は前向きなアイディアは大して浮かばないのに、心配要因については想像力も創造力も抜群で、思いつくたびに「もしあの商談がうまくいかなかったら、今年の売上どうなる?」「円安が今より5円すすんだら、今年の利益どうなる?」などと、追加の計算作業を部下に頼みまくります。

今日は、過去に様々な上司に仕えた経験から、「いかにして上司の不安を取り除き、同時に部下の業務負荷も減らすか」についてお話しします。

目次

  1. 不安というオバケを見える化する

  2. 不安の要因が1つの場合

  3. 不安の要因が2つある場合


1. 不安というオバケを見える化する

上司にとって、不安が最大レベルの状態というのは「どの程度の悪いことが起きるのか、見当もつかない」時です。いってみれば、相手がおばけや透明人間のようなものです。よって、部下は「リスクの範囲」を見える化してあげるだけで、上司の心配は「無限大→有限」と大幅に改善されます。

たまに、ビジネス書などで、「シナリオ分析」「感度分析」といった分析手法を目にします。少しきどった言い方なのでとっつきにくいですが、これは「起こる可能性のある悪い結末を具体化する分析」なので、オバケに不安を抱いている上司にはもってこいのツールです。次のセクションでこのツールの使い方を具体的にご説明します。

2. 不安要素がひとつの場合

まず初めに上司が不安に思っている要素がひとつだけの場合です。また、年初にたてた利益目標を50とします。

仮定
-「売上減少」が唯一の利益を押し下げる不安要素
-  年初に立てた利益目標は「50」

上司の頭の中は「売上減によって、今年の利益は当初計画からどれだけ下がるのか」で頭がいっぱいです。

そこで、部下は売上に関して以下の3つの場合を想定して、利益を計算します。

売上について3つの場合を想定

  • 当初の計画通り

  • 最新の見込み (計画より少し減る)

  • 最悪の場合 (計画より大幅に減る)

上の3つの場合を想定して利益予測を計算すると以下の表のようになりました。これがオバケの見える化です。

年初の利益目標が50であるのに対して、今現在の最新の見込みだと利益は40、最悪の場合は30になります。

これにより、上司としては利益がゼロやマイナスになるリスクはないことを知り、オバケの大きさが見えるだけで少し不安が取り除かれます

また、この表とともに、部下は「オバケをやっつけるための提案」ができると上司はさらに安心します。例えば、今のまま行くと当初計画していた50の利益に対して、40になるリスクがあり、10足りなくなります。そこで、足りない10の利益を補う策として、例えば「チラシ広告を少し減らして費用を10節約しましょう」といった感じです。それが最善の策でなくても、上司にとってはオバケ退治、すなわちリスク削減のための叩き台にはなります。

次に、心配要因が二つある上司のための、不安範囲の具体化方法をお話しします。

2. 不安の要素が2つある場合。

上司は、「売上減」だけでなく、昨今のインフレによる「原材料費の高騰」にも不安を感じています。売上減少と原材料費高によるダブルパンチで、利益がどうなるかを、以下のような形で、具体化してあげます。

横軸に「売上減」、縦軸に「原材料費高騰」がそれぞれどうなるか、3つの場合を想定します。もしも売上も原材料費も最悪の場合には、利益は当初の目標の50から10にまで下がることがわかります。上司はここでも「最悪でも利益はゼロやマイナスにならないな。」とオバケの大きさを認識できます。

この表の利点は売上と原材料費がそれぞれどう動くかによって、利益にどう影響するかの9通りのパターンが一覧表になっているので、一度作って、上司に渡してしまえば、あとは1人で頭の中であれこれ妄想できます。部下に空想が思いつくたびに、いちいち「売上はXXXX、原材料費は〇〇〇の場合、利益はいくらになるの?」といった質問をする必要がなくなります。

なので、最初にこの表を作って上司に渡しておけば、部下も毎回呼び出されて計算作業をせずに済みます。

私の過去の経験上、利益に影響する最も大きな要因はほぼ決まっていて、たいていの場合、主要な2つの要因が利益の7-8割を決めます。また上の表の形で上司の不安、すなわちリスクを限定してあげると、どんな上司も、不安が少し和らぎます。理由は次に自分が取るべきアクションが明確になるからです。今後は目標利益に足りない分をどう補うかの議論に集中できます。

まとめ

今日は「上司に対する不安の見える化」と「部下の業務負荷軽減」の両方を同時に達成する方法についてお話ししました。私の経験では日本人はもとより、アングロサクソンもラテンも、上司はみな前述のリスク範囲の具体化によって、落ち着きを取り戻します。また、部下も場当たり的な上司の計算依頼から解放され、より前向きな仕事、すなわち今後のリスク削減のための対策案に集中できます。

ぜひ、ご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ありがとうございます😄