無給

あの夜のほんとうのことはうちらだけ

無給

あの夜のほんとうのことはうちらだけ

最近の記事

美術館

2023秋の一人旅 1日目 その1 ・新幹線を降りるとそこは、人の海です。 三連休を待ちわびていたのは、なにも私だけではありません。ロッカーはどこもいっぱいで、とうとうあきらめた私は、2泊分の荷物と映画を観る用のパソコンが詰まったリュックを背負って、美術館までのこのこ歩いていくことを決めました。 ・「スケートボード禁止」と壁いっぱいに書いてある公園で、青年3人組が爽やかに板を蹴って漕ぎ出しました。滑っていく先、くぼんで薄暗い広場の中央で、親子が無表情におにぎりを貪っていま

    • 百合の香り

      明日からとうとう社会人になります。 本当は、社会人になることが怖くて怖くてたまりませんでした。 夢のような大学時代がぷつんと切れて、幕が開けばそこは底なしの闇、入り口も出口も分からないままもがき苦しむ生活が、これから何年も何年も続くのかもしれない。 そう思うと、あれほど眩しかった思い出すら腹立たしく、一人、また一人と東京から遠ざかる友達の背中を、だらりと両腕を垂らして見送るしかない気持ちになるのでした。 しかしそんなことばかり考えていたら、せっかくの最後の春休みをつまらな

      • お気持ち表明

        3月26日(日)、京都の梅屋アートスペースというところで、個展を開催します。 そんな人はあまりいない小学校で中学受験をしたので、私は教師に目を付けられていました。皆が分からない問題を塾で習ったからとすらすら解けば、きっとまた怒られるだろうと思って、わざと間違えたことが何度もあります。 子供のころにそんな時期があったから、皆と同じリズムに乗ることに敏感になっていたのだと思います。 中学校で、部活の先輩の機嫌がすこぶる悪い日、私の学年が頭ごなしに怒られている最中に、「あなたの

        • 1人旅 3日目 

           昨晩は、知らない老夫婦のお家に泊まらせてもらいました。  朝の犬の散歩についていって、浜辺を見に行きたいとせがみました。6時半に一緒に行こうな、と言ってくれたのに、わたしが2分遅刻したら、普通に置いていかれました。  あわてて玄関を飛び出すと、おばあちゃんが犬にリードをつけているところでした。ほんとに起きられたんか、よかったな、と笑っていました。  おばあちゃんは、わたしを本当の孫のように扱ってくれるので、わたしが道端の草や建物にいちいち足を留めていると、普通に置いてい

        美術館

          1人旅 2日目

           ホテルのレビューに、無料の朝食があまりにしょぼいと書いてありました。だからなるべく期待をしないように、ぎゅるぎゅる騒ぐお腹を両手で押さえつけて、朝食会場のロビーへと向かいました。  おそるおそるメニューを見ると、なんと、炊き込みご飯のおにぎりがあるではありませんか。その他にも肉団子、ポテトサラダ、マカロニサラダ、ポタージュにポトフ、運動会の日のお弁当ばりの一軍メンツが並んでいます。なんて楽しい朝ご飯なのでしょう。とってもご機嫌のまま、ホテルをチェックアウトしました。  朝

          1人旅 2日目

          1人旅 1日目

           青春18きっぷで5日間の一人大旅行を計画しました。大学を卒業するまでに、一人でどこかに行くことを怖がらないようにしたかったからです。  旅のしおりなんかつくっちゃって、リュックにジーンズ、お気に入りのぺたんこ靴でうっきうき、家を飛び出してさあ電車に乗ろうとすると、なんとお目当ての電車が止まっています。仕方なく迂回ルートを探索し、お昼ごはんも諦めて目的地へ急ぎました。  ぺこぺこのお腹で別の電車に乗り込むと、なんとその電車も出発してすぐに止まってしまいました。  しかしこ

          1人旅 1日目

          最近のネットプリントの感想

          もう出力期間が終わっているものもありますが、すみません。 『半透明な花と翅』 天井の高さがやけにうれしくて わたし、今日、ワンピースを着ています/花浜紫檀「わたしの美しい手紙調」 この間泊まったホテルのシャンデリアがとても大きくて、まるでその光がわたしのところまで垂れ下がってきたように明るい気持ちになったのを思い出しました。 二段ベッドの上であばれて危ないねごめんね生きてるここちするから/展翅零「だ から 騒ぎ」 二段ベッドって天井に近いじゃないですか、だからあばれ

          最近のネットプリントの感想

          2022/12/31-2023/01/01

          9時間アルバイトをした後に、初対面の人も含めて8人で夜通し歩きました。 公園の芝生がわずかに凍って、星空のように光っていました。 居酒屋の前の水槽で、金魚が目を瞑って眠っていました。 木の枝に半分に切った林檎が刺してあって、それが川沿いの何本かの木にありました。これは罠だ、はまってはだめだ。と友達が言いました。 真夜中だというのに、鴨の親子が泳ぎ出しました。 ミニストップの人に揚げ物を断られました。 川の上の温度計が、マイナス0.2度を指していました。 あと二時間くらい歩

          2022/12/31-2023/01/01

          12/28

          初めての湖畔一人旅・二日目 ・日の出を見に行こうと思って早起きしたのですが、起きた時間には思ったより明るかったので、面白くなくなって家を出るのをやめました。 ・毎日の日課の筋トレを30分して、その間にお風呂を沸かしました。いいくらいに汗をかいて、気分は最高、服を一気に脱いで浴槽に飛び込んだら、お湯の設定がまさかの42℃!芸人さながらのリアクションで浴槽を飛び出し、栓を抜きながら水を足しました。 すぐにちょうどいい温度になったので、もう一度入って、今度は大好きなアイドルの曲

          12/27

          初めての一人旅・一日目 ・自宅から目的地までの地形の変化をこの目で見たいと思って、行きは電車にしました(本当は、バスの方が安くて早いのに)。高尾行きの中央線に乗ると、ビビットカラーのリュックに、やけに紐を通すところが多い靴を履いた人ばかりです。今日は天気もいいし良かったね。高尾行きの人・途中で降りそうな人を勝手に予想して、高尾行きの人が立川で降りた時は、勝手に腹を立てました。 ・高尾を過ぎると途端に建物が減って、遮るものの無くなった日差しが伸び伸びと車内に差し込みます。し

          12月22日とか

          ・雪原が美しい、と思った時には、足元の雪はわたしの体重で押し固められ、泥でくすみ、雪原が見渡す限り雪原であった頃の美しさは失われてしまいます。何かを見て美しいと思うことは、そういう悲しさを必ず含んでいると思います。 ・草間彌生さんの展示を見に行きました。 鏡を使って無限の空間を生み出す作品がいくつかありました。作品を覗き込もうとすると、鏡に映る自分とどうしても目が合ってしまいます。草間さんの作品について考えるよりも前に、自分と向き合わざるを得ません。 その中に、チームラボに

          12月22日とか

          12月14日

          ・昨日は久々にお酒を飲んで、たくさん興奮してしまいました。帰ってからもしばらくふわふわしていましたが、日付が変わったあと、意識が乱暴に奪われるように眠りに落ちました。 ・アラームを片手で止め、華麗なる寝坊で本日もスタートです。 最初の予定は美容室なので、何も準備せずに家を出て問題ありません。さあ、競歩でバス停まで向かいます。華麗なる滑り込みセーフが決まりました。朝のバスは人生の先輩方がたくさん乗っているので、なんとなくスマホをいじりにくい雰囲気です。初めましてのおばあさま同

          12月14日

          12月13日

          ・おとといの夜にパイを焼きたくなって、昨日の夜に材料をそろえて、今日は太陽よりも早く起きました。 まずは生地をくり抜き、北向きの部屋で寝かせ、その間に林檎と洋梨を砂糖で煮込みます。 「キツネ色になるまで」は、どのキツネを指しているのか迷いませんか。頭にあらゆるキツネを思い浮かべて、一番毛がふさふさしている子を選びました。朝の台所は触る物全てが冷たかったからです。 わたしの想像は大正解でした。ふさふさキツネ色煮込みは、洋梨はごりごりした食感を残しつつも、林檎は繊維を感じさせない

          12月13日

          12月11日

          ・お昼ご飯にコンビニのシーザーサラダを食べました。今日は奮発して、温泉卵も買ってみました。ただのびしょびしょのお野菜が、温泉卵を乗せただけでなんでこんなに華やかになるんでしょうね。休憩室にいた人の中で一番笑顔で食べました。 ・いつも自分の話しかしない先輩が、急にわたしに質問をして来たから、びっくりして全然答えられませんでした。 というか、わたしは本能的に信用できない相手には、全然自分の話ができません。癖で、相手に話を振って、質問攻めにしてしまいます。 たぶんわたしは、先輩の

          12月11日

          12月9日

          ・今日はうれしいことがありました。授業そっちのけで卒業論文を書いていたら、先生が、「おれ、カポーティって映画、良いと思うんだよね」と言ったのです。 「カポーティ」は、わたしの好きな映画です。 カポーティという実在した作家の人生に関する映画ですが、その全てが二時間で語られるわけではありません。ある出会いを通して、自分と他者の境目が穏やかな闇の中に溶け込んでいくこと、それを丁寧な感性で表してみせる映像は絵画のように均整がとれていて、ベールを一枚隔てたように薄暗い。やがて二人の関係

          12月9日

          12月8日

          ・高円寺の点滅社さんに遊びに行きました。 お店に入ってすぐ、「真夜中のカーボーイ」が載っている雑誌を見つけました。今年出会った中で一番好きな映画です。びっくりして、すぐに買わせていだきました。 お会計の横でコーヒー豆を袋に詰めている方がいて、声をかけたらその場でひいてくれました。そしてわたしにもひかせてくれました。まさか本屋さんで豆がひけるとは思わなくてわくわくしましたが、非力ゆえ、すぐにリタイアしてしまいました。プロがひくと、香ばしい匂いが部屋中に広がって、すぐに買わせてい

          12月8日