12月14日

・昨日は久々にお酒を飲んで、たくさん興奮してしまいました。帰ってからもしばらくふわふわしていましたが、日付が変わったあと、意識が乱暴に奪われるように眠りに落ちました。

・アラームを片手で止め、華麗なる寝坊で本日もスタートです。
最初の予定は美容室なので、何も準備せずに家を出て問題ありません。さあ、競歩でバス停まで向かいます。華麗なる滑り込みセーフが決まりました。朝のバスは人生の先輩方がたくさん乗っているので、なんとなくスマホをいじりにくい雰囲気です。初めましてのおばあさま同士が会話をしています。お互いに自分の話しかしていませんが、上手く噛み合っていて良いですね。

・5分の遅刻は、ちょっとした時空の歪みです。笑顔で入店すると、今日は店長が髪を切ってくれるようです。
店長は、お客様にするシャンプーとは思えないほど乱暴に髪を扱いますが、その痛みにさえ耐えれば、天才的なカットでわたしを満足させてくれます。
来年の卒業でアレンジが出来るように、その限界まで髪を切ってもらうようオーダーしました。こちらは競歩あがりで大変疲れているのに、スピリチュアルな話が続いて困惑しましたが、相変わらずカットのうまいこと。そしてシャンプーの雑なこと。
自分で前髪を切るのが下手なので短めにしてください、と言ったら、眉毛がひょっこり顔を出してしまいました。おかげでなんだか目が大きく見えます。これはこれでいいですね。やっぱり店長は天才だ。
就職活動以来の黒髪になりました。本当は青と紫の中間になるように頼んだのですが、大学2年から3年にかけて性格がとがりすぎていたせいで、わたしの髪は終わってしまいました。なかなか色が入りにくいようです。どこからどう見ても黒髪ですが、これはこれで肌が白く見えていいですね。やっぱり店長は天才だ。
自分磨きに精を出している話をしたら、25,000円するドライヤーをすすめられました。空気の出るところに特別な石が埋まっていて、それが髪に潤いを足すので、わたしのとがっていた時期をなかったことにしてくれるらしい。
うーん、でもあの時期はあの時期でよかったしな。携帯を壊してしまったのと、当時はあんまり写真が好きではなかったので、金髪時代の写真はほとんど残っていません。未だに修復されきらないキューティクルが、鋭い目をした20歳のわたしに繋がる、唯一の手掛かりなのです。
というか、ドライヤーは高すぎるのでお断りしました。

・美容室から歩いてすぐの図書館に行きました。わたしが中学受験の時によく自習をしていた席は、ご時世柄間引きされていました。
よく見ていた本棚のところに行くと、わたしがファンレターを出した作家の本が置いてあるではありませんか。14歳のわたしが打ち明けたしょうもない悩みに対して、丁寧にお返事をくれた人です。「小説家というのはつらいこともネタに出来るいい仕事です」と言ってくれて、それで文章を書くようになったのでした。
今思えば、わたしはかわいそうな子ではなかったし、どの悩みもちっぽけなものばかりだった。それでもささやかな武器として、書くことを教えてくれたその人には心から感謝しています。
今も元気で暮らしているといいな。

・「ブロークバック・マウンテン」という映画を観ました。
1か月くらい前に最初の30分だけ観て、あんまり好きではなかったのでそのままにしていました。年末は途中まで観た映画を一気に清算しようと思って、再生をしたのでした。
はあ、なんて良い映画なのでしょう。
前半は、美しい自然の映像が続きます。背景に似合う美しい2人の友情は、やがて形を変えていく。2人を取り巻く人や環境も変わっていく。
心安らぐ美しい映像が、じわじわと滲んで、心を蝕みます。粗末でも幸せな暮らしの中で育まれた愛は、あまりに純粋であまりに鋭すぎて、愛する人や自分自身をも傷つけてしまうのです。好奇の目やルールを侵すことの禁忌。守るべき家畜がいては、この街から逃げることも叶いません。
月日が経ち、2人の前には再び美しい川が流れています。あまりに透き通った水を前に、それでも2人は1つになることができません。
この映画はなんといっても映像が良い。目に見えないルールに縛られた、目に見えない愛は、言葉少なに、しかし確かな質量をもって映像のうちに表現されています。
良い映画でした。

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