12月9日
・今日はうれしいことがありました。授業そっちのけで卒業論文を書いていたら、先生が、「おれ、カポーティって映画、良いと思うんだよね」と言ったのです。
「カポーティ」は、わたしの好きな映画です。
カポーティという実在した作家の人生に関する映画ですが、その全てが二時間で語られるわけではありません。ある出会いを通して、自分と他者の境目が穏やかな闇の中に溶け込んでいくこと、それを丁寧な感性で表してみせる映像は絵画のように均整がとれていて、ベールを一枚隔てたように薄暗い。やがて二人の関係が静かな結末を迎えるとき、作家は筆をおき、映画は幕を閉じます。この映画は何より、観終えた後の余韻がすばらしい。出会った日から今日まで、自分の中に大切にとっておいた作品でした。その名前をまさか人から聞くことがあるとは思っていなくて、思わず卒業論文を書く手が止まりました。授業中に卒業論文を書くのはよくないと、深く反省しました。
・大学に行った後、アルバイトに行きました。
休憩時間に、持ち込んだパソコンで映画を観ました。濃厚なラブシーンが始まったとき、前髪を切りたての先輩が私の背後を通り、そして去っていきました。
・夜ごはんにタンメンを食べました。出来立てのタンメンがわたしのもとへやってきたとき、まずごま油の香りがしました。これは当たりだと直感、スープの湖から麺を引き上げれば、春のたんぽぽを思わせる鮮やかなちぢれ麺が顔を出します。夢中で口の中へ引きずり込みました。気付いたら麺や具はすっかりわたしの身体に収まって、静かになった水面には、まだ目を輝かせたままのわたしが映っていました。
・鍋パーティーがしたいです。
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