最近のネットプリントの感想

もう出力期間が終わっているものもありますが、すみません。

『半透明な花と翅』


天井の高さがやけにうれしくて わたし、今日、ワンピースを着ています/花浜紫檀「わたしの美しい手紙調」

この間泊まったホテルのシャンデリアがとても大きくて、まるでその光がわたしのところまで垂れ下がってきたように明るい気持ちになったのを思い出しました。

二段ベッドの上であばれて危ないねごめんね生きてるここちするから/展翅零「だ から 騒ぎ」

二段ベッドって天井に近いじゃないですか、だからあばれるあまり上気する頬が少し汗ばんでいて、その横顔を電球が黄色く照らしている、その肌の感じまで分かるような気がしました。

『実写の犬』


落としたら汚れた桃のどこまでを可食部とするかはきみ次第/宇田川美実「心霊テスト」

日常の一コマを切り取ってドラマチックに感じ取る、みたいな自分の慰め方ってあると思うのですが、この連作はむしろ逆みたいで、「はは」という乾いた笑い声がずっと聞こえてくるように感じました。

ジレンマのことをいう図のどの人も仰向けで寝るああそのせいで/鈴木黒目「破線」

この言葉とこの言葉が組み合わさったら面白いだろうな、のセンスが冴えていて、気持ちのいい数式を見ているようでした。

『冬蝶』


兄さんのことを話せば胸郭にぶわっと詰まるトーチ・リリーは
森の絵に鳩を放せば町のすみで鳩は生まれてだれもそれに気づかない/湯島はじめ


トーチリリーが上向きに炎のような花を咲かせるように、そして深い森に吸い込まれていった鳩が、どこかであらたな命を結ぶように、命は今この瞬間にも燃えていて、新しい蝋燭に火を灯そうとしている。心をじわじわと熱くする連作だと思いました。


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