I’m“S”

Webライター。巣ごもりの成果を発表させていただきたく。フィクショナルな小説が現実体験…

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Webライター。巣ごもりの成果を発表させていただきたく。フィクショナルな小説が現実体験を上回る日がくるまで。

マガジン

  • 小説の部屋

    話し声や音を取り込む音波、視覚から入ってくる電磁波、鼓膜を揺り動かす振動、臭覚が取り入れる化学物質・・・。これらが同時に紡ぐ現実体験を、視覚言語という電磁波体験のみで新たな現実体験を想起させる小説。 そんな人という種にしか不可能な、曲芸の世界を垣間見ましょう。

  • 長編小説『ネバーダイ』

    こんにちは。ご清覧ありがとうございます。 レン&トオルの物語第3弾、長編小説『ネバーダイ』は、人類誕生の物語です。けれど、人類というビーグルにはあらかじめ、様々な咎が負わされております。性向いわゆる遺伝情報ですね。その辺りを楽しんでいただければと思います、一杯のハーブティーとともに。

  • 映画の部屋

    ご清覧、ありがとうございます。 演技の質に着目し、好みの映画を取り上げます。

  • コラム

    発生したコトバを書き留めておく場所。

  • 短編小説「世界はかならず瓦解する」

最近の記事

「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第5話 渡邊 聡

「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第5話  渡邊 聡 涙が止まったころにはもう、彼は山脈のはるか上空、四千メートルを西に向って飛行していた。  いつしか彼の横には、人間鳥が一体、彼を見守るようにして並走していた。  気が付いても彼は、その人間鳥を無視して、飛び続けた。  どこまでいってもその人間鳥は、彼の左三メートル余横を彼の方に首を傾げながら、飛び続けた。  彼は、残り少ない感情が、抗っていることを自覚した。そうして並走を続けられると、彼の気持ちはささくれ苛立ち、最後

    • 「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第4話渡邊 聡

      「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第4話 渡邊 聡 第四景 翼 鳥人間である彼の最初の記憶は、まばらな雲を蹴散らす、高速飛行で始まった。 いつか飛行機の中から見下ろしたような景色が今や、飛行機そのものに成り代わって疾走する彼の眼下に拡がっている。 マッチ箱ほどのおおきさの、升目にくぎられた畑が、カーブを描き、芝のように盛り上がった林でくぎられ、米粒大の家が、山の裾野まで深く食い込んでいる。 そこから序々にたちあがってきた山が、彼を捕まえにでも来るように、左前からこちら

      • 「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第3話                    渡邊 聡

        「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第3話                     渡邊 聡  二時。  小屋をあとにする。  巻き道をつめる。  昨日意識しなかった、雪渓のしたをすべる水。  踏みしめる音。  反響が、近づいては遠のき、近づく。  一陣の風が二人のからだを後ろから壁に向かって 突き上げてくる。  足の裏の鋭利で、固い感触。  ガレ場の到来である。  道は傾斜をます。  もう、取り付きで、ある。  サーチライトで壁を照らした。  山のような岩が、二つ。  

        • 「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第2話                    渡邊 聡

          「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第2話                     渡邊 聡 第二景 大岩壁                                ハイウェイのつなぎ目が 「カコン、カコン」 と規則的に、響いてくる。  シートからつたわる堅い感触が、やがて羽毛のクッションになりかわり身体を包みはじめる。  それらが「うん」と手をのばし、まぶたを閉じさせようとやっきになっている。  おまけに、絹の光沢が一面にかぶさりコウはすっかり抵抗力を失ったようだ

        「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第5話 渡邊 聡

        • 「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第4話渡邊 聡

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        • レンとトオルの物語【短編小説編】
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        記事

          「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第1話                   渡邊 聡

          「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第1話                    渡邊 聡 あらすじ  第一景「壁」。朝起きてバスに乗り電車に乗る、いつもの光景の日常。が、息苦しさを感じた途端、まわりがぼくを圧迫し、まわりの人がぼくを圧迫してきて、耐え難くなる(一人称)。第二景「大岩壁」新進気鋭のクライマーが未踏の大岩壁にフリーで挑む。自然に挑めど壁は高く。第三景「変身」ある日気が付くと、自宅のベランダ下に生える雑草であったぼく。あり得ない生理に翻弄され子どもは成長し、妻

          「今ぼくを悩ませている4つの閉塞状況」第1話                   渡邊 聡

          「HOME SWEET HOME~ロック&ロック&ロック」 第1話                                   渡邊 聡

          「HOME SWEET HOME~ロック&ロック&ロック」 第1話                                    渡邊 聡 あらすじ 一夜を共にしたアンナが、幼い頃の思い出を語りだした。その時アンナは散歩中のベンチの上で、記憶を取り戻す。そしてアンナはどうも、自分がさらわれて、監禁されていることに気付き、それは確信に変わる。幼いアンナの身体は老婆のように力が入らず、逃げ切れず捉えられてしまう。虎視眈々とその時を狙うアンナ。幾度か失敗の後、アンナは脱

          「HOME SWEET HOME~ロック&ロック&ロック」 第1話                                   渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第4話  渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第4話   渡邊 聡 絶望と希望 木枯らしに強く吹かれて、立て続けに落ちる落ち葉のように、トオルの目から涙が落下する。泣きながらトオルは、レンが焼いた大きなハンバーグを頬張っている。大好きなデミソースを口から溢れさせながら。 「トオル」 レンが、パイル地赤子の涙をそっとぬぐう様に、トオルに声をかける。 トオルは赤子のしゃっくりのように二度小さくヒックヒックと息を吸い、またハラハラ涙を流しながら、口一杯で咀嚼する。 トオルのやるせなさが、レン

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第4話  渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第3話  渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第3話   渡邊 聡 召喚と審問と 「トオルの力は、現時点でまったく未知である」 統治の言をよそに、トオルが慟哭する姿は、一夜にしてトオルに関する流布を、逆方向に、定めつつあった。 「ね~、トオルって、キュウセイシュじゃないよね」 甘い菓子を頬張りながら幼子は、そう、トオルを揶揄した。 ゲンプク前のスクールの子供たちは、トオルが慟哭する姿そのものに、衝撃を受けた。 かつてトオルを信奉していた者ほど、代わり身が、甚だしかった。 彼らはトオルを

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第3話  渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第2話 渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第2話  渡邊 聡 残る総帥のレポート シティの現状 通称「運命の岩」 この岩を中心にして、海まで広がるシティ。 遠浅の海岸から白い砂丘は森につながり、やがて見渡す限りの硬い一枚の、岩盤の上に造られた高層ビル群、シティに連なる。 この星の、唯一の大陸、シティに居住する我々には、旧人類の痕跡がそのまま残っている。 もっとも旧人類が何を達成し、どのような歴史を持ち、どこから来たか?いかなる理由で変異を獲得し、あるいは滅びたか?その詳細な足跡は、

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第2話 渡邊 聡

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第1話

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第1話 渡邊 聡 あらすじ レンとトオルは誰が見てもお似合いで、周囲の羨望を一身に受けるカップル。レンはその慈愛で。トオルはその、生来のリーダーシップとセンス、運動能力やタレントで、彼らに悪意を向ける者も少ない一族だ。さらに予言によりトオルは救世主の存在を、レンはその伴侶にして巫女を、約束されていた。先にレンにその兆候が表れる。巫女になったレンはトオルの元服を待つ。も、いつまでたってもその兆候は表れない。焦るトオル。そしてようやく迎えた元服。

          「人類誕生~レンとトオルの物語」第1話

          「ダウン・ザ・ロード」第2話                                  渡邊 聡

          「ダウン・ザ・ロード」第2話                                   渡邊 聡  月曜日の昼下がり。  東京の郊外の、Sデパートの屋上。  子供のための、小さな遊園地の隅に置かれたプラスチックのベンチ。  ピエロのような風体の、一人の男が腰かけている。  男は、首を上げず、瞼を上げる。  ポップコーンの販売機の横で、親が子供の首に口を寄せ、首を鷲掴みにする。  怯えた子供の背中を、人目を避けてねじり上げる。  子供は声も出さず、唇を噛み涙をこぼす

          「ダウン・ザ・ロード」第2話                                  渡邊 聡

          「ダウン・ザ・ロード」第1話

          「ダウン・ザ・ロード」第1話                          渡邊 聡 あらすじ  朝、気が付くと部屋に漂う異臭。その原因を探すぼく。突然ひとり娘の耳から、ラーメン状の何かがこぼれる。いつもの日常に降って沸いた、ありえない災難が徐々に加速され、翻弄されつつも、なんとか娘を救おうと、主人公であるぼくは奔走する。あらゆる手立てを尽くすも、依然として娘の状態が、病がわからないまま、時間だけが過ぎてゆく。途方に暮れ、逡巡し、走り、不眠不休の数日の後、ぼくの日常は、

          「ダウン・ザ・ロード」第1話

          「HOME SWEET HOME~ロック&ロック&ロック」 第2話

          「「HOME SWEET HOME」ロック&ロック&ロック」第2話                                    渡邊 聡  ランドマーク全体が影になって、神々しい光の中に、立脚していたよ。 ぼくはとアンナは座ったまま、抱き合い、ぼくはいつまでもアンナの髪の毛を撫でながら・・・ぼくらは静かに泣いていたと思う。解らなくなんかないよ。アンナの作り話でもない。ぼくだからこそ、それは、解ってる。なにが  変わったって?そう、実感と、同じかな。幾つかの言葉の

          「HOME SWEET HOME~ロック&ロック&ロック」 第2話

          映画「グランド・ジョー」2014年公開

           モノトーンの暗く長い夜と、常に緊迫感と抱き合わせであったお日様の元、前科者が坂を転げ落ちていくように取り込まれる、お決まりの、アルアルな閉塞状況~環境ガチャ、親ガチャ、貧困、DV、アル中、暴力、悪意、悪行、そして重犯。  なにより、ささやかな夢~平穏な日常に少しでも長く身を於く儚い想いは、出会いと、他者の意思と選択によってもたらされる現実によって苛まれ、それらに対する行動の選択によって、好まざるに関わらず、落下は止められない。  では何故に、汚物だらけのこの、創造的現実

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          世界を変えよう、漕ぎ続けよう

          「国民の半分は両腕がない」千原せいじ、世界最貧国で目撃した残酷な現実を語る「少年兵はみんな目が死んでてシャブ漬け」 | TRILL【トリル】過去に仕事でアフリカ大陸54ヶ国中、32ヶ国を巡った経験を持つ、お笑いコンビ「千原兄弟」の千原せいじが「紛争があったシエラレオネの国民の半数には腕がない」と衝撃発言。その腕を切り落としたのは、内戦の最前…  さて、  「この怖ろしい世界は変えられるのか」  正確に言えば、  「言語野の局在という遺伝的変異を得た“人”という種が、“記憶”

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          変える方法は

          人は変わらない。 けれど、自分は変えられる。 自分が変わると、人も変わる。 結果、人は、変わる。

          変える方法は