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Day261:『ワイズカンパニー』ー知識創造から知識実践への新しいモデル

【本について】
タイトル:ワイズカンパニー

著者:野中郁次郎・竹内弘高 /出版社:東洋経済新報社

【WHY】知識実践の必要性

私たちは変化の激しい世界に生きている。
単なる過去の延長では新しい未来にならない。

現状、

1、正しい種類の知識が利用されていない

2、未来を創るということがなされていない

3、時代にふさわしいリーダーを育成していない


【WHAT】

■「知識創造企業」と「ワイズカンパニー」


「知識創造企業」は、知識創造に着目し、それによっていかにイノベーションを活性化させるか。

「ワイズカンパニー」は、知識実践によっていかに企業が確実に生き残れるようになるか。

■知識創造と知識実践

●知識の獲得:獲得、確立、アクセス、蓄積、成文化、保存
●知識実践:知識を適用、活用、広く浸透、実行

ー知識実践の起源

アリストテレスによる知識の3分類の1つ「フロネシス」

フロネシスとは、「人間にとって良いことか、悪いことかに基づいて行動できる、真に分別の備わった状態」(『ニコマコス倫理学』)

時宜になかった賢明な判断を下させるとともに、価値観や原則やモラルに則した行動を取ることを可能にする経験的な知識。
(≠徳、ユクタ)

*徳・・共通善や道徳的卓越性を究める生き方
*ユクタ・・世の中に貢献し、社会の豊さの増進に努めることが企業の目的、利益追求の目的と考える

ーアリストテレスの知識の3分類


「フロネシス」(何をなすべきかを知る)
社会にとって何が大切か考慮される(大きな視点の配慮)
価値判断を含む

「エピステーメー」(なぜを知る)
普遍的に通用する科学的な知識、事実に関する知識
客観的で知的な徳

「テクネー」(いかにを知る)
スキルに基づいた技術的な知識、自然には生じないものを生じさせようとする知識

※哲学者たちが何世紀もフロネシスよりもエピステーメーの追究に関心を向けてきた。

ーフロネシスの理解

「行動」「文脈」「善」「目的」

フロネシスという概念が、知識実践という考え方の土台になる。倫理と社会の両方に影響を及ぼしうる。

フロネシスが集団的に育まれている組織では、メンバーが互いの経験を共有し合うことで、問題に気づいたり、取り組んだり、対策を考えたりできる。フロネシスは問題の発見と解決に役立つもので、短なる知的ツールではない。

「戦略自体に良い悪いはなく、戦略の良し悪しは特定の文脈に最も適しているかどうかできる」(『成功の技法』)

ー脳科学における知識実践

神経科学者は何十年も、脳機能だけで知識創造を説明できると思ってきたが、近年の脳機能や認知の研究では、「身体」と「行動」も同じくらい重要であることがわかってきている。

神経科学でも、あらゆる知識が行動に根ざしていることを示す証拠が次々と現れている。

ー知識創造と知識実践のモデル


●SECIプロセス:
共同化
(暗黙知から暗黙知)、表出化(暗黙知から形式知)、連結化(形式知から形式知)、内面化(形式知から暗黙知)という4要素が土台になっている。

組織的な知識実践がどのように促進され、維持され、拡大されるか概念化したもの。

●SECIスパイラル:
知識が絶えず創造され、拡大され、実践されるとともに、知識の創造と実践に関わる人が次第に増え、知識創造、実践のコミュニティが拡大していく。メンバーが高次の目的を共有している知識の創造、実践のコミュニティを育むことで、スパイラルが活性化される。

フロネシスがSECIスパイラルの原動力になる。マネージャーは、フロネシスを身につけることで、それぞれの時や条件、状況に置いて何が良いことかを見極めて、最善の行動をとり、共通善に資せるようになる。

なぜ、上昇の原動力になるかは、フロネシスの特徴が「共通善」「時宜」「人」であるから。

駒が一定以上の速さで回転していれば、外部から衝撃が加わっても、重力に逆らってバランスを保っていられる。企業の場合、それは回復力を維持でき、持続可能であることを意味する。回転が止まれば、駒は倒れる。回転させ続けるには、フロネシスが欠かせない。

ーリーダーシップの実践

共通善の追求
本質をつかむ
場の創出
本質を伝える

ーリーダーシップの役割

「形式知、暗黙知+実践知」

実践知・・経験によって培われる暗黙知、賢明な判断を下すことや、価値観とモラルに従って、実情に即した行動を取ることを可能にする知識。

リーダーが組織全体でそのような知識を育む時、その組織は新しい知識を想像するだけではなく、優れた判断を下せるようになる。それができるのが、「ワイズリーダー」

最も重要なのは、”知識と行動の間の絶えざる往復”

行動から知識が得られると、その知識からまた次の行動が生まれるという繰り返し。

知識の創造と実践の相互作用を通じて、知識は繰り返し創造される。

繰り返しの結果がイノベーション
ホンダ、シマノ、エーザイ


【WHAT IF】ワイズカンパニー(例)

ワイズカンパニーは、ワイズリーダーに率いられた企業

ワイズリーダーは、組織の中でメンバーの知恵を育もうとする取り組みが絶え間なく続けられることで初めて生まれる。

●ホンダ

過去70年の間に、何回もイノベーションを成し遂げてきた企業

自社の儲けのためだけではなく、共通善のためのイノベーションを起こした企業

ー企業の存在意義

社会貢献、世界の住み心地をよくする、ライフスタイルが変わること

ー「三現主義」

●現場・・工場や店舗など、実際に業務が行われている場所に足を運ぶこと

●現物・・実際の状況を知ることが大切。そのためにはその状況をなしている諸々の要素と自分が時期に接することが必要だとされる

●現実・・社員は実際の状況についての知識に基づいて現実的な判断をしなくてはならないと言われる

ー価値観

「買う喜び」、「売る喜び」、「作る喜び」

粘りつよい、実際的、現実的、行動志向、細部重視

「いま、ここ」にフォーカス

「現在、どういう行動をとるかで、どういう未来が築かれるか決まる」
「未来の可能性を最大限に高められるよう、「今・ここ」を息べきである」
マルティン・ハイデガー(ドイツの哲学者)

【響いたメッセージ】

・知識は身につけた瞬間から古び始めるが、知恵はいつまでも古びない。知恵は何世代にもわたり受け継がれる。知恵は時間の経過に耐えられる。

・実践知の恩恵はもっと広範囲に及び、企業やコミュニティや社会の持続可能性を高めてくれる。

・ワイズリーダー、実践知を備えたリーダーは、高次の目的、自社の儲けのためだけではなく、共通善のために事業を営む。

【アクション】

「買う喜び」、「売る喜び」、「作る喜び」を持って働く

「知識創造企業」の続編として出された「ワイズカンパニー」
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