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自分のなかに「担当編集者」をもとう

こんにちは!
今日もお読みくださり、ありがとうございます。

「編集者だったら書くのは得意だよね」と時々言われます。

でも、ごめんなさい。
編集者の本来の仕事は「書くこと」ではないんです。
中には書くのが苦手な方もいるし、私も決して得意ではありません。
いつもヒーヒー言いつつ、しんどい思いをしながら書いています。

「書くプロ」といえば、記者やライターさん、文筆家の方々。じゃあ、編集者は何をする人なのかといえば「書いてもらうプロ」

そして、この技術は、結構役に立ちます。
誰か(他者)に対して使うこともできるけれど、何より「自分」に対して使っていってほしい
自分のなかに「担当編集者」を育てられると最高なんです。


「日本でいちばん有名な編集者」は?

話はかわりますが、
「日本でいちばん有名な編集者」
といえば、誰をイメージするでしょうか?

近ごろは様々なジャンルで活躍する編集者が増えました。でも、私にとって「元祖・編集者」といえばこの方です。

アニメ「サザエさん」の「ノリスケさん」です。

ノリスケさんは、大手出版社に勤める25〜26歳(思った以上に若い!)。
サザエさんのお隣にお住まいの伊佐坂先生の担当編集者です。

アニメ中のノリスケさんは、仕事と称してしょっちゅうサザエさんの家で寛いでいます。「あんなに遊んでいていいのか?」と感じるかもしれませんが、実際に編集者になって、よくわかりました。ノリスケさんは、ちゃんと「編集者としての仕事」をしているんです。

「書く」ってしんどい。だからサポートする人がいてほしい

ノリスケさんは、伊佐坂先生の担当編集者。
伊佐坂先生に原稿を書いてもらうために、何度も足を運んでいるわけです。

ただ、文章を書いた経験のある方ならわかるはずです。
文章は「書いてください」→「わかりました」→「はい、できました」と、ベルトコンベア式に出来上がるものではありません

書くのは「人間」。天気ひとつで気分や感情がコロコロ移ろうような、とても繊細な生き物です。「締切」や「約束」だけでは、どうしたって動けないこともあるのです。

それに「書く」って、内的な営みです。
外面的には何もしていないように見えて、実は色んなことを考えたり、構想を練っていたり……ということもあるのです。この「何もしていないように見える時間」は「書く」うえで、とても大切だったりするけれど、周囲からは文字通り「何もやっていない」ようにしか見えません
となると、がんばっているのに、なかなか応援してもらえません。それどころか「暇そうだから」と、別の仕事を頼まれたり、邪魔が入ったりすることもあります。そうなると、どんどん完成は遠のいていきます。

「書く」って本質的には「しんどい」行為です。
だから、何もプレッシャーがない状態だと、いつまで経っても進まない……これは本当よくあること。

そうなんです。「書く」って本当に一筋縄ではいかないんです。
とても人間らしい営みで、私は、そんな人間らしさを愛しています。
だけど、その人間らしさゆえに「不確定要素」が多すぎる、マネジメントしづらい営みです。

だから、本来は誰かのサポートが必要なのです。

その点、出版社は、そんな不確定要素の大きい「原稿」をもとにビジネスをしています。ビジネスには「スケジュール」が必須。ビジネスモデル的に「この日までに原稿を上げてもらわなければ、資金繰りに行き詰まる可能性がある」なんていう、会社の存続を賭けた話だって起こり得ます。

だからこそ、著者と編集者(出版社)のあいだには「締切」をめぐる攻防戦、駆け引きが生まれます。そして、この状況のなかで編集者の「書いてもらうスキル」が鍛えられていくわけです。

(余談ですが、古今東西の作家の〆切をめぐる苦悩をまとめた『〆切本』は名作です)

表現者の壁「ライターズブロック」を乗り越えるには?

「書いてもらうのが仕事」の編集者の力量が求められるのは、どんな時か。それは「ライターズブロック」と呼ばれる現象が起きたときです。

○ライターズブロックとは?

ライターズ・ブロックとは頻繁に文章を書いている人間に訪れる、ある種のスランプのようなもので、それまで書けていた文章が、とつぜん書けなくなってしまう現象です。文章を扱う人間からすれば非常に厄介な現象

文章が書けなくなる「ライターズブロック」になったときの対処法

「約束したことなのに、書けない」
「締切が迫っているのに、書けない」

伊佐坂先生も、時々、ノリスケさんから逃げるように出かけていく様子がありましたよね。この時の伊佐坂先生は「ライターズブロック」に陥っていたのではないでしょうか。

この状態を乗り越えられるか。それは表現者としての真価が問われる時です。そして、同時に「編集者のサポート」が力を発揮する段階です。

ライターズブロックには、色んなタイプがあります。
それぞれのタイプで、少しずつ対処法は違ってくるけれど、大まかに言えば「アメ(栄養)とムチ(プレッシャー)」を使いこなすことで、乗り越えていけます。

「アメ(栄養)」は、優しさや賞賛、ストレス解消など。これは、結構簡単です。
一方「ムチ(プレッシャー)」は、結構難しい。
出産に「陣痛」というプレッシャーが欠かせないように、原稿を仕上げる際にもある程度の「プレッシャー」は必要です。でも弱すぎたら効かないし、強すぎると、最悪の場合は積み上げてきたものを破壊してしまうことだってあります。

その点「サザエさん」のノリスケさんは、とても自然に「ムチ(プレッシャー)」を与えていたように見えました。

「サザエさん」の世界には、メールやSNS、オンライン会議もありません。
だから、ノリスケさんは、頻繁に伊佐坂先生の近くに行っていたのでしょう。

直接会ったほうがいいタイミングもあれば、少し離れたところから(隣の家(=サザエさんの家)から)見守るくらいの距離感のほうがいいこともある。この「付かず離れずの距離感」を保ちつつ、プレッシャーをかけるべきところで、かけていく

いつもサボって、軽口を叩いているように見えるけれど、「編集者」として押さえるべきところは押さえている。
ノリスケさんが天性の性格でやっているのか、それとも工夫してやっているのかは、わかりません。でも、見習える部分はたくさんあります。

自分のなかに「担当編集者」をもとう

とはいえ、全ての書き手に、ノリスケさんのような編集者がいるわけではありません。
「担当編集者」がつく書き手なんて、ごく限られた人たちです。
そして残念なことに、出版社の編集者たちはどんどん忙しくなり、一人あたりの書き手にかけられる労力は少なくなっています。
そうなると、サポートが受けられるのは、一部の「完成された表現」ができる人たちか、自分で編集者を雇えるお金がある人たちだけ。

私、この状況がすごく嫌だなと思っていました。
だから、noteで「編集」について書こうと思ったんです。

出版社の「中」に閉じ込められていた「編集の技術」を、もっとオープンにしていきたい
編集の技術に誰もがアクセスできるようになると、自分のなかに「担当編集者」をもつことができるようになります。
すると、自分の想いや願いを表現したいと願う方が、もっとより良い表現ができるようになる。そうなると、世の中が少しずつ動いていくのではないか

そんな野望を抱きながら、この連載を書いています。

編集者がいるって、心強いです。
ライターズブロックを乗り越えるうえでも、自分の想い・願いを必要な人に届けていくうえでも、「編集者」の存在は、大きな助けを与えてくれます。

そして、自分のなかに「編集者的な自分」をつくたら、表現者としては最高です。「本当に届けたいこと」を「届け続ける」ことができる。そんな表現者になっていくことができるのですから。

とういうわけで、編集の技術を学んでみませんか?
そして「いつか自分の本をだす時がきたら(もしくはメディアで連載が決まったら)編集者についてもらおう」とまだ見ぬワンチャンを狙うのではなく、自分のなかに「担当編集者」を育ててみませんか?

それが、表現者・書き手としてのブレイクスルーにつながっていくはずですよ。

あなたの言葉が、必要な方に届いていきますように!
さいごまでお読みくださりありがとうございました。

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