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はじめての小説

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2020年5月の記事一覧

第五章 夏の始まり #01先の見えない戦い

6月も後半に差しかかり、夏の訪れを感じていた。だいたい5月に入った頃、急に暑くなり「もう夏かぁ〜」と一旦思うのだけれど、6月に入って雨の日が続きその気分はどこかへ行ってしまう。梅雨が明けそうな今頃にやっと夏を感じ始めるのである。

4月から浪人生活が始まり、順調に毎日勉強しているのだが、そもそも順調なのかどうかは分からない。いくら勉強したって安心できることはないし、ただひたすらに目の前のことを頑張

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第四章新しい出会い #08恋愛相談

今日もまた予備校へ向かう。だいぶこの生活にも慣れてきた。あっという間に2ヶ月が経ち、気付けば6月になっていた。予備校に着くとリョーヤンと会い、いつものように「おはよう〜」と挨拶した後、「ひろちゃん、ちょっといい?」と呼び止められた。

「ひろちゃん、昼空いてる?ちょっと相談があるんだけどいいかな?」「お〜空いてるよ。」「良かった。じゃあまたあとで」「はいよ。」相談か、、なんの相談だろう。勝手にドキ

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第四章新しい出会い #07電話っていい

高田さんとは週に一回くらいメールをするようになった。たまに電話もした。もともと電話は得意じゃない。そもそも人と話すのがそんなに得意ではないし、顔が見えないときちんと言葉で伝えなきゃいけないから緊張が増す。あと、相手が電話に出るまでの発信音を聞いている時に緊張は最高潮に達する。出ちゃったらどうしよう!と自分からかけているのに思ってしまう。でも、高田さんと話しているとあっという間に時間が過ぎていくし、

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第四章新しい出会い #06恋

第四章新しい出会い #06恋

浪人生活は、暗くて辛いものだと思っていた。もちろん恋なんかできないと思っていた。でも、私は恵まれているのかもしれない。予備校の授業は長いし辛いこともあったけど結構楽しかったし、友達との時間も楽しかった。そして、恋もしていた。予備校の人ではないけれど。蕎麦屋の高田さんだ。いつの間にか良い人から好きな人に変わっていた。まぁ、5歳も年上だし、完全に憧れの人で付き合うなんて無理だとは思うけど。高田さんのこ

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第四章新しい出会い #05ようやくの出会い

第四章新しい出会い #05ようやくの出会い

新しい出会いを心の中では求めていた。でも現実は違う、、どこか諦めていた。だけど、このまま毎日一人さみしくお昼ご飯を食べるのは嫌だ。心の中で一人葛藤していた。予備校は朝から夜まで一日中いることが多い。だから、お昼ご飯は予備校で食べるか外で食べるかなのだが、外で食べるとお金がかかってしょうがないので、だいたいお弁当を持参するか、コンビニで買って予備校内にある食事ルームで食べる。食事ルームは、予備校内で

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第四章新しい出会い #04孤独との戦い

第四章新しい出会い #04孤独との戦い

予備校に通いはじめて、すぐに友達できるかなと思ってたけど、授業受けて、自習室で自習して、また授業受けて、、で全然できない!やばい、さみしい。けど、勉強に集中しろってことか、と何とか自分に言い聞かせていた。孤独との戦いだ。ただ予備校だから、みんな浪人生。境遇は違うにしろ、一回大学落ちたっていう経験をしてる人がこんなにいるんだなぁと思うだけでも少し心強かった。それにしても、本当に毎日家と予備校の行き来

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第四章新しい出会い #03もしかして

第四章新しい出会い #03もしかして

「元気してる?」たったそれだけだったけれど、高田さんからのメールというだけで何だか嬉しかった。好きとかそういうのではないけれど、年上のちょっとかっこいいやさしいお兄さんが私のことを気にかけてくれるだけで嬉しいものだ。ただでさえ惚れやすい私は、それだけで好きになっちゃいそうだ。まぁ、こんな私を相手してくれるはずがないのだけど。

舞い上がっているのを気付かれないように「元気ですよ〜」とそっけなく返し

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第四章新しい出会い #02さようならバイト生活

第四章新しい出会い #02さようならバイト生活

バイトは3月いっぱいで辞めることにしていた。受験に専念するためだ。最後に武井さんが、お花見を企画してくれた。私はまだ未成年だったからお酒は飲めないけど、みんなでワイワイ飲んだり食べたり桜を観たり、本当に楽しかった。あ〜辞めたくないなぁとは思ったけれど、浪人生活は覚悟を決めないと乗り切れないということも分かっていたから、しょうがないと自分にいい聞かせた。不合格の知らせを聞いて、みんな励ましてくれたり

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