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筋トレのコツ33:「アデノシン」によるバーニングと眠気

この記事では、疲労や眠気に関わる「アデノシン」と「バーニング」ついて簡単にまとめています。その特徴を理解する事で、トレーニング効率を上げていきましょう。

尚、この記事は以前書いた記事を分割させたものです。


「アデノシン」による眠気

無酸素運動のように「短時間で大きな筋力を発揮する運動」においては、「グリコーゲン」や「クレアチンリン酸」という物質が使われます。またこれらが代謝されると「アデノシン三リン酸(ATP)」という物質が作られます。

「エネルギー」と言えば、糖や脂肪のイメージが強いのですが、実はこの「ATP」こそ、細胞の活動エネルギーとして利用されているものです。

そんな「ATP」、そのように「リン酸」が3つ結合しており、何らかの原因で、それら3つのリン酸全てが外れると、「アデノシン」という物質になります。

実はこの「アデノシン」、血流に乗って脳に運ばれると、脳内の受容器に結合する事ができ、それによって「睡眠への誘導」が行われると言われています。つまり単純に「激しい運動を行って疲れると眠くなる」訳です。

「疲労物質」と聞くと「乳酸」のイメージですが、このために、実はこのアデノシンも疲労物質の一つに数える事ができます。


アデノシンによる筋肉痛、及び筋肉痛の治し方

前述のアデノシンは、無酸素運動で大量にATPが消費された時、まず筋肉の周囲に蓄積します。

それによってアデノシンは、筋肉の周囲にある神経の受容器にも結合する事ができ、特に「痛みを伝える神経」を刺激すると言われています。

しかし筋肉そのものには「痛み」を伝える神経はありません。つまりアデノシンによる「痛み」は、「筋肉の周囲による痛み」であり、実はこれが「筋肉痛特有の痛みを増大させているのではないか」と考えられています。

このため筋肉、あるいは周囲を冷やすなどして、周囲にある神経の興奮を鎮める事ができれば、筋肉痛は軽減できる可能性があります。つまり単純に「アイシング」をすれば筋肉痛は早く治まるという事です。

一方、冷やし続けると今度は血流が滞り、アデノシンが滞って逆効果になる可能性もあります。そこで、今度は、筋肉あるいはその周囲にある血流を促し、アデノシンを流しましょう。すなわち筋肉痛は、むしろ体を動かした方が治まるという事です。


アデノシンによるバーニング、それに伴う変化

例えば両手でグー→パー→グー→パー・・・と素早く繰り返していくと、前腕に「焼け付くような感覚」が得られると思います。これの事を俗に「バーン」あるいは「バーニング」と言います。

実はこのバーンの原因となるのも、前述した「アデノシン」によるものとされており、やはり神経を興奮させる事によって起こっていると言われています。運動直後の疲労感にはこれも大きく関係しています。

一方、それは「神経の変化」であって「筋肉の変化」ではないので、「筋肥大には直接関係ないのではないか?」と思ってしまいますが、実は筋肥大には、こうした「体の変化」が重要になります。

「バーン」のような変化が起こると、「その変化を元に戻そうとする機能」が働きます。例えば無酸素運動後に貯まる乳酸を薄めようとして、筋肉への血流が増える「パンプアップ」もその内の一つであり、そういった機能が促される事によって、間接的に筋肥大も促す事ができるのです。

つまりバーンを起こさせるように「神経を使う事」も、実は筋トレの効率化に繋がっていく訳ですね。時にはそうして高重量のトレーニングだけでなく、「素早い動作を繰り返すトレーニング」を取り入れてみるのも、良い刺激になるかもしれません。


疲労によって起こる睡魔と戦うには・・・?

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コーヒーや抹茶・玉露などに多く含まれている「カフェイン」には、脳内にあるアデノシンの受容器をブロックする作用があると言われています。カフェインには覚醒作用、つまり「目を覚めさせる作用」がある事で知られていますが、これがそのメカニズムです。

またカフェインには交感神経を刺激して、アドレナリンの分泌を促す作用もあります。それによってもたらされるのが「興奮作用」で、例えば心臓の鼓動や呼吸が早くなったり、血糖値が上がったり、脳の血管が拡張して血流が増えたりします(末梢では逆に血管が収縮し血圧が上昇する)。これらによっても「目が覚める」事になります。

一方、お酒に含まれている「アルコール」には、脳内のアデノシンの受容器をブロックしている「ヒスタミン」を妨害し、アデノシンの濃度を高める作用があると言われています。それによってアルコールを摂取すると、強いリラックス効果が得られる事になります。

ただしその作用は強く、睡眠への誘導が行われてしまいます。大量にお酒を飲むと眠くなるのはこのためです。また何故お酒を飲んで車を運転してはいけないのかもこれが理由です。そもそもアルコールは疲労そのものをなかった事にする訳ではないのですが、一応メカニズム的には、そのように脳の疲労感を軽減してくれる作用があります。


尚、脳内のアデノシンは、そのように普段は「ヒスタミン」によってブロックされています。つまり単純に言えば、脳内にあるヒスタミンの量を増やすだけでも、覚醒作用を得る事ができるという事です。

特にこの「ヒスタミン」は満腹感に関与しており、脳内でヒスタミンの量が増えると食欲が抑制されます。つまりたくさん食べて満腹感を得れば、ヒスタミンが増えて眠気が治まります。

ただまぁ満腹感を得る事でエンドルフィンやドーパミンなど快感を得られるホルモンも分泌されるので、実際にはそれによる眠気の方が強く出る事が多いですね。ちなみにアルコールは前述のように、そのヒスタミンを抑制します。それによって食欲を増進させる作用も得られています。

この他、皮膚炎や花粉症などのアレルギー反応にも、実はこの「ヒスタミン」が関与しています。そのためアレルギー反応が強くなると目が覚めます。またヒスタミンは「必須アミノ酸」である「ヒスチジン」から作られます。つまり血液中にアミノ酸が多い状態、例えば運動をしたりする事でも、目が覚める事になります。

逆にヒスタミンを抑えるような鼻炎薬やアレルギー薬(特に抗ヒスタミン薬)を飲むと、脳内のヒスタミンにも影響を与えてしまい、受容器にアデノシンが結合しやすくなります。鼻炎薬などで眠くなるのは実はこれが理由です。特に前述のアルコールと一緒に飲むと、その眠気の作用が強くなるので大変危険です。



以上になります。何かのお役に立てれば幸いです。

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