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筋トレのコツ35:速筋と遅筋の「元々の割合」について考える

この記事では、その人の「体質」に関係する『速筋と遅筋の「元々の割合」』について、私なりの考えをまとめています。

尚、この記事は以前書いた記事を分割させたものです。


「速筋と遅筋の元々の割合」は生まれつき?

速筋と遅筋の「元々の割合」は「生まれながらにして決まっている(両親から受け継がれる)」と言われています。

つまりたくさん筋トレをしても、速筋そのものが増える訳ではなく、またどうれだけマラソンをしても、遅筋の細胞そのものを増やす事はできないという事です。

ただ、筋トレを続けていけば、次第に筋力は大きくなっていき、またマラソンを続けていけば、次第に持久力が伸びていきます。これは何故かというと、元々の細胞の数は殆ど変化せずに、一つ一つの細胞の機能が向上する事によって、パフォーマンスが向上しているのです。


「速筋と遅筋の元々の割合」は鍛錬を重ねるほど「差」になる

筋トレやマラソンを続けていくと、そのように一つ一つの細胞の機能が向上していくので、「速筋や遅筋の元々の数」が多いほど、最終的に得られる「成果」は大きくなります。つまり肉体の鍛錬を重ねるほど、速筋と遅筋の元々の割合による「差」は、顕著に現れるようになります。

例えば陸上競技や水泳競技などの「タイムを競うようなスポーツ」で考えてみます。

特にオリンピックのように、高い技術レベルを持った者同士での競争になる場合、技術レベルが高い上に、お互いの技術レベルには大きな差がないので、タイムには単純に「肉体の差」が現れる事になります。つまり短距離ならば、より速筋を鍛えた選手の方が、長距離ならば、より遅筋を鍛えた選手の方が、タイムが良くなるという事です。

しかし肉体の鍛錬を重ねるほど、「速筋と遅筋の元々の割合による差」は大きくなっていくので、実際のタイムには「鍛錬の過程による差」よりも、生まれつきの「速筋と遅筋の元々の割合による差」の方が大きく影響する事になります。

確かに速筋を鍛えればタイムは速くなります。しかし元々の速筋の割合が低い人が鍛えた結果と、元々の速筋の割合が高い人が鍛えた結果とでは、大きな差が出てしまう訳です。この「差」はいくら鍛錬を重ねても埋める事はできません。


見た目だけでは「速筋と遅筋の元々の割合」は分からない

前述したように陸上競技や水泳競技など「タイムを競うようなスポーツ」においては、技術レベルが高くなるほど、また肉体を鍛錬するほど「速筋と遅筋の元々の割合」による影響が大きくなります。つまり生まれながらにして「向き・不向き」が分かってしまいます。

しかし逆に言えば「技術レベルが低い者同士の競争」、あるいは「技術レベルが拮抗していない者同士の競争」になる場合、タイムには「速筋と遅筋の元々の割合」よりも「技術レベルによる差」が大きく出る事になります。

つまりそのような競争の場における「タイム」という結果だけでは、その人の「速筋と遅筋の元々の割合」は分からないという事です。

例えばいわゆる「かけっこ」が得意な子どもがいたとします。その子どもは同年代と比べてタイムが良く、我々大人から見れば、見た目上は「速筋の割合が高そう」に見えます。しかしそれは「周囲の子どもより効率の良い体の使い方をしている」からこそ速く走れるのであり、実際には「速筋よりも遅筋の割合が高い」場合があります。

またそれは長距離走でも同じ事が言えます。マラソンで一等賞になれる子も、それは「長距離を走るための体の使い方が上手い」からこそ速く走れるのであり、実際には「遅筋よりも速筋の割合が高い」かもしれません。

つまり子どものように技術レベルが未熟な者同士での競争になる場合、そのように「速筋と遅筋の元々の割合」よりも、「技術レベルによる差」が成績に出やすいのです。何が言いたいのかと言うと、この時点での両親、あるいは先生などの「大人の見る目」は、あまり当てにしてはならないという事です。

まぁ一応、筋肉から細胞を取り出して、速筋と遅筋の割合を調べる・・・という事はできなくもないですが、わざわざそのような事をする日本人の親はほぼいません。やはり周囲の大人による「見た目による早期の勝手な決めつけ」は良くないと私は思います。


日本人は「遅筋の元々の割合」が高いらしい

繰り返しになりますが、陸上競技や水泳競技など「タイムを競うようなスポーツ」においては、技術レベルが高くなるほど、また肉体を鍛錬するほど「速筋と遅筋の元々の割合」による影響が大きくなります。つまり生まれながらにして「向き・不向き」が分かってしまいます。

一方、「タイムを競うようなスポーツ」ほどではないものの、これは他のスポーツでも同じ事が言えます。

つまり速筋の割合が高ければ、速筋が要求されるスポーツに向いていて、鍛錬を重ねた際の成果も出やすくなり、また遅筋の割合が高ければ、遅筋が要求されるスポーツに向いていて、速筋が要求されるスポーツには向いていないという事になります。

特に日本人は「平均的に遅筋の割合が高い民族」とされており、速筋が30%程度なのに対し、遅筋は70%程度あると言われています(これは聞いた話によるもの。この数値が実際に正しいのかどうかは分からない。個人差も大きいので一概にも言えない。また後述のようにそもそも鍛錬してみないと分からない・・・)。

その割合が正しいとすれば、この速筋と遅筋の割合だけを考えると、日本人は「生まれながらにして、長時間の有酸素運動を行うようなスポーツに向いている」という事になります。

またどのようなスポーツを行うにしても、鍛錬後、その筋肉の特性を活かす事ができるような「プレースタイル」が重要になるという事もここから分かります。つまり力任せに相手を圧倒するのではなく、粘りながらチャンスを伺うという事です。実際そういう日本人選手多いですよね。

尚、それは日常生活においても同じです。日本人は短時間で大きな力を発揮するような運動よりも、少しずつ力を使って、長時間体を動かし続けるような運動の方が向いています。

つまりそのような仕事を選んだり、あるいは普段からそのように体を動かす事で、仕事や家事など日常生活の効率を上げる事ができます。それによっていわゆる「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」の向上にも繋がるはずです。


「速筋と遅筋の元々の割合」だけで全てが決まってしまう訳ではない

ただし、そのような「長時間の運動に向いている素質」は「速筋と遅筋の元々の割合」の事だけを考えた場合の話であり、実際の「長時間の運動能力」には様々な要素が関係しています。

例えば血管の太さ・強度・枝分かれ、血液を作る能力、ミトコンドリアの量・その能力、肺や心臓の大きさ・能力、ホルモンの分泌量やそのバランス、単純な走る技術・体の使い方・ペース配分・駆け引きなどです。もちろん遅筋自体も、細胞の数は増やせませんが、使い込む事でエネルギー効率を上げる事ができます。

特にこれらの中には「後天的に鍛える事ができる能力」も含まれており、それらの能力を鍛えれば、例え自分よりも遅筋の割合が高い人との競争でも、あるいは速筋の割合が高く、土俵の違う人との競争であっても、それなりに勝負する事ができるようになります。

つまり前述では「タイムを競うようなスポーツでは、生まれつきの要素が大きい」と言いましたが、例えタイムを競うようなスポーツであっても、全てが「速筋と遅筋の元々の割合」だけで決まってしまう訳ではないという事です。

確かに「生まれつきの向き・不向き」はあるものの、それは鍛錬してみないとその「差」は分からない訳ですから、どんなスポーツを選んだって良い訳です。


「速筋と遅筋の元々の割合」を気にして良いのは、よっぽど自分を追い込んでいる人だけ

例えば「オリンピック・陸上競技・男子100m走の決勝」で活躍するような選手の場合、その殆どが「速筋の割合が高い」と言われています。特にジャマイカなど南米の選手の場合、速筋の割合は実に80%以上とも言われており、そもそも民族的に速筋の割合が高いそうです。

そのような「速筋の元々の割合」だけを考えると、彼らは生まれながらにして、短距離走などの「瞬発的に大きな力を要するようなスポーツに向いている」という事になります。選手になるべくしてなったという事です。

逆に日本人選手が未だにあの舞台で走る事ができていないのは、前述したように速筋の元々の割合が低く、またいくら筋肉を鍛えたとしても、その速筋の元々の割合を変える事ができないからです。

特に速筋は、鍛えれば鍛えるほど太く大きくする事ができ、それに伴って筋力も大きくなります。このため速筋の元々の割合による「差」は、トレーニングを重ねるほど大きな差となって現れる事になります。

例えば速筋の元々の割合が30%程度しかない人と、80%以上ある人が、同じペースで同じ分だけトレーニングを積み重ねた場合、当然速筋の元々の割合が80%以上ある人の方が、トレーニングの結果は良いものになります。これは仕方がない事であり、トレーニングをすればするほど「速筋の元々の差」を強く実感してしまいます。

しかしそれは「速筋の元々の割合による影響が大きくなるほど、技術レベルを限界まで高めている」場合や、「速筋の元々の割合が影響するほどにまで、肉体を鍛えている」場合に限った話です。

とりわけ我々のような一般人では、速筋や遅筋の元々の割合が影響するほどにまで、自分を追い込む事は稀であり、「生まれつきの筋肉の質」による「差」を実感として得られる人は殆どいません。つまり本来は「気にしても仕方のない事」なのです。


自分の「体質」を言い訳にするな!

大人では、例えば「太りやすい体質」「脂肪が燃えにくいあ体質」「筋肉がつきにくい体質」「スポーツや運動には向いていない」「元々鈍臭い」「運動神経が悪い」などというように、勝手に決めつけ、それを運動をしたくない事の理由にしてしまっています。

また自分がそういう考え方だと「自分(親)がこうだから、自分の子どもも同じに違いない」などというように、自分の子どもにも、その考えを押し付けてしまいます。

しかしここまで書いてきたように、よっぽどストイックに自分を追い込んでいない限りは、そういった「向き・不向き」は、見た目では誰にも分からない事なのです。

またそのように「見た目で分からない」という事は、後から工夫次第でいくらでも改善できるという事です。「自分はこういう体質だから」と決めつけ、何もしないで諦めてしまうのではなく、できる事から少しずつ積み重ねていくべきではないでしょうか。




以上です。何かのお役に立てれば幸いです。

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