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筋トレのコツ7:筋トレは「無酸素運動」でなければならない

この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、「無酸素運動の仕組み」について簡単にまとめています。

尚、この記事は「そもそも何故運動ができるのか?」という事をイメージするためのものです。なので、細かい反応とか酵素の名前とか、なるべく難しい説明は省くようにしています。

P.S.無酸素→潜水→仙水・・・?と、本当は幽遊白書の画像を使いたかったのは内緒。画像選びはどうしてもふざけたくなってしまいます(笑)


ATP(アデノシン三リン酸)の役割について簡単に

筋肉にある細胞に限らず、あらゆる細胞は「ATP」という物質をエネルギーにして活動しています。エネルギーと言えば、糖や脂肪のイメージが強いのですが、実際に使われているのはこの「ATP」です。

※ここにある画像、及び下記にある全て画像はあくまでイメージです。

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特にこの「ATP」は、正式名称を「アデノシン三リン酸」と言います。つまり「ATP」は「リン酸」が3つ結合した形になっているのですが、このリン酸一つ一つを結合させるために、大きなエネルギーが使われています。

つまり「ATP」は、結合しているリン酸を一つ外す事で、エネルギーを放出する事ができます。そのエネルギーを使って細胞を動かしているのです。

またそうしてリン酸を一つ外すと、「ADP(アデノシン二リン酸)」になります。しかし再びリン酸を一つ結合させる事で、「ATP」に戻る事ができ、エネルギーを1つ貯蔵できます。そしてエネルギーが必要になった時、リン酸を一つ外して、再びエネルギーを放出します。

そうして「ATP」を使う事で筋肉の細胞も動かしている訳です。


クレアチンリン酸によるATPの供給

この「ATP」は、糖などを代謝するための「解糖系」や、解糖系で代謝される事でできた物質(ピルビン酸)あるいは脂肪酸を代謝するための「クエン酸回路(TCA回路)」で合成されます。

ただし筋肉のように消費量や消費頻度が高い場合、その解糖系やクエン酸回路を回すだけでは、ATPの量が足りなかったり、供給が間に合わなくなる事があります。

特に「数秒」というごく短時間の無酸素運動においては、解糖系やクエン酸回路による「その場でのATPの合成」ではとても間に合いません。そこで筋肉においては「クレアチンリン酸」からも、このATPの合成を行う事ができます。この仕組みを「ATP-CP系」と言います。

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解糖系やクエン酸回路では日常的にATPを合成しています。つまり「クレアチン」を利用し、そうして合成していた「ATP」から、あらかじめリン酸を一つ受け取って「クレアチンリン酸」となり、エネルギーを貯蔵しておく事ができます。

そして短時間の無酸素運動によってエネルギーが必要になった時、そのクレアチンリン酸のリン酸を一つ外して「ADP」に結合させ「ATP」を作ります。それによって糖や脂肪を代謝するよりも速く、「ATP」を供給する事ができます。

ただしこのクレアチンリン酸に貯蔵しておけるリン酸は一つだけです。そのためクレアチンリン酸による「ATP」の供給は、ごく短時間しかできず、全力での運動では「僅か7~8秒程度」で枯渇してしまうと言われています。

そうしてクレアチンリン酸が使われた場合、何とかその場で「ATP」を合成しようと努めますが、やはり解糖系やクエン酸回路ではとても間に合いません。そのため筋肉は次第に動かしづらくなっていきます。

おそらく多くの人は、今まで考えた事もない事だと思いますが、「何故全力で運動をすると、たった数秒で、体が動かなくなってしまうのか」はこれが理由です。


クレアチンリン酸及びクレアチンの再合成

そうしてリン酸を一つ外したクレアチンリン酸は、一旦「クレアチン」という形になります。しかし解糖系やクエン酸回路から得られるATPを利用し、リン酸を一つ受け取る事で、再びクレアチンリン酸の形に戻る事ができます。

特にこのクレアチンからクレアチンリン酸への再合成は、速くて数分程度で行う事ができると言われています。これによって、すぐに次の全力運動に備える事ができます。100mを全力で走っても、休めば再び全力で走れますが、それはこれが理由です。

また一部のクレアチンはクレアチンリン酸にはならず、そのまま代謝されて「クレアチニン」となり、再吸収されずに尿と一緒に排出されてしまいます。つまりこれは運動を行う度にクレアチンの量が減ってしまうという事ですが、そうして減ってしまったクレアチンも、実は数時間程度で合成できると言われています。

このため全力での運動を行って、クレアチンあるいはクレアチンリン酸を消費してしまったとしても、その後しっかりとした休息を取れば、その日の内に再び全力での運動が可能になります。

例えば陸上競技・男子短距離の100mでは、準決勝や決勝をその日の内に行う事もあります。それができるのはこれが理由です(スケジュールが押していない限り行わない事が多いですが)。


グリコーゲンによるATPの供給

では、そうして7~8秒程度の全力運動を行った後、すなわちクレアチンリン酸によるATPの供給が尽きた状態で、更に全力での運動を続けようとするとどうなるのでしょうか。

実は筋肉にはもう一つ、エネルギーを蓄えておける場所があります。それが「グリコーゲン」です。グリコーゲンは糖の一種で、ブドウ糖の集合体であり、これを分解する事でもATPを供給する事ができます。

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このグリコーゲンはクレアチンリン酸と比べると、合成は遅く、即効性はありません。しかしグリコーゲンに含まれている複数のブドウ糖全てがATPの供給源になるので、あらかじめ作っておけば、クレアチンリン酸よりも大きなエネルギーが得られます。これを利用すれば、クレアチンリン酸によるATPの供給ができなくなった後も、しばらくの間、筋肉を動かし続ける事ができます。

ただし「しばらくの間」とは言っても、筋肉内に蓄えておけるグリコーゲンの貯蔵量にも当然限りがあります。特にこのグリコーゲンは、全力での運動では「33秒程度」で枯渇してしまうと言われています。

つまりクレアチンリン酸によるATPの供給と合わせると、合計で「約40秒程度」であり、これが「全力運動を連続で行う事ができる限界の時間」になります。例えば400m走の世界記録は43秒ですが、それはこれが理由になっています。

その40秒を過ぎた後も、一応運動を続ける事はできます。しかしクレアチンリン酸によるATPの供給も、グリコーゲンによるATPの供給もできなくなるので、次第に筋肉は動かなくなっていきます。また後述のようにグリコーゲンは合成に時間がかかります。よってクレアチンリン酸とは異なり、数時間程度休んでも回復せず、パフォーマンスは大きく低下してしまいます。


ちなみに「無酸素運動」と言われるのは、前述した「ATP-CP系」や「解糖系」では「酸素を必要としない」からです。そのまんまですね。ただし解糖系の先にあるクエン酸回路ではその場にある酸素は使います。またクエン酸回路を回せば最終的に水と二酸化炭素ができます。

このため「有酸素運動で汗が出る」というイメージですが、実際には無酸素運動でも汗が出ます。また無酸素運動そのものでは酸素を使いませんが、息を吐く量は増える事になります。


グリコーゲンの合成・貯蔵は遅い

筋肉内にあるグリコーゲンは、グルコースすなわちブドウ糖を代謝する「解糖系」内の、最初の段階で得られる物質(グルコース6-リン酸)から合成されています。つまりグリコーゲンは単純にブドウ糖から合成されます。

逆に筋肉内のグリコーゲンがエネルギーとして利用される時も、同じようにそこから解糖系に入る事になります。ただし筋肉内のグリコーゲンはグルコースに戻る事はできず、解糖系内に入った後はそのまま代謝されていきます(例外として肝臓内のグリコーゲンはグルコースに分解できる)。

また解糖系でブドウ糖あるいはグリコーゲンを代謝すると、最終的には「ピルビン酸」という物質になります。このピルビン酸は更に「アセチルCoA」に変換されてから「クエン酸回路」に入ります。そして脂肪酸も、このクエン酸回路から入ってエネルギーになります(ただし脂肪酸はそのままの形ではクエン酸回路に入れないので、β酸化などの過程を経てから入る事になる)。

しかしブドウ糖からのグリコーゲンの合成は非常に緩やかです。特に筋肉内のグリコーゲンを完全に近い形で消費した場合、消費する以前の水準まで回復させるためには、最低でも2~3日程度かかると言われています。

特にスポーツによっては、試合を行ったその次の日にも試合を行う場合があり、毎試合グリコーゲンを消費していればパフォーマンスがどんどん低下していきます。1年を通して試合があれば当然最後までパフォーマンスがもちません。

その場合、グリコーゲンはなるべく消費しないように「余計な筋力を消費しないように体を動かす」事、つまり「楽をして勝つ」という事が重要になります。


運動によってできる乳酸とリン酸

グリコーゲンを消費する事では「乳酸」が作られます。この乳酸は筋肉内、あるいは筋肉の周囲にある血管内に蓄積し、筋肉が膨らむ「パンプアップ」の原因になりますが、これは一時的なものであり、時間が経てば血液によって薄まっていきます。

また乳酸は糖が不足した時、肝臓で糖の再合成(糖新生)に利用する事ができ、ATPを作る事ができます。更に乳酸は変換される事でクエン酸回路に入る事もでき、それによってもATPを作る事ができます。

それらによるATPの供給は遅いため、運動中にはとても間に合いませんが、そのように乳酸は次第に代謝され、少しずつ減っていきます。

一方、ATPとしてエネルギーを運搬する過程では、ATPとして結合し損ねた「リン酸」ができます。特にリン酸は「カルシウム」と結合しやすい性質があるので、一部のリン酸は、神経伝達に関与しているカルシウムと結合してしまいます。これにより筋肉が上手く動かなくなっていきます。

特にクレアチンリン酸の合成は前述のように即効性がありますが、リン酸が大量にできると、筋肉の収縮が邪魔されてしまいます。また繰り返しになりますが、グリコーゲンの合成と貯蔵は遅いです。よってクレアチンリン酸が十分であっても、体が思うように動かなくなります。これらが「疲労」の主な原因です。この他、運動中に分泌される様々な神経伝達物質も、疲労の原因になります。

ちなみにそうしてカルシウムが大量に消費されると、血液中にあるカルシウムの濃度が低下する事があります。そのバランスを取るためには、骨に含まれているカルシウムを使わなければなりません。つまり激しい運動を行う習慣があり、カルシウムの摂取量が少ないと、次第に骨が脆くなっていきます。疲労骨折にはこれが一つ関係していたりします。




以上です。何かのお役に立てれば幸いです。


「サポート」とはチップのようなものみたいです。頂いたチップは食品やサプリメントなどの検証に活用させていただき、後日記事にしたいと思います。