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肩こりの原因と、ことのてん末。

肩がコッて仕方がない。

デスクワークなので、肩の一つや二つ、あるいは三つや四つくらい、こっても仕方がないと思う。それにしたって、私の肩は非常に硬い。硬すぎる。

肩をぐるぐると回せば、ゴリゴリと音がなる。
セルフでマッサージをしてみても、全く指が入らない。指が入るということがどういうことかもよくわかっていないが、とにかく指が入らない。

もしかすると、かの有名な指圧の名士ケンシロウであれば、あの指さばきで私のこの肩すぎる硬に、指を入れることができるかもしれない。

だがしかし、残念なことに私の周囲を見渡してもケンシロウはいない。

健太郎や健二郎は探せばいるかもしれないが、ケンシロウではない。たぶん、サノシロウでもカトウコウシロウでも、私のこの肩に指を入れることは不可能であろう。
それぐらいに私の肩の意思は硬い。

某日13:00、私は街を闊歩していた。


その日の午前中、突発的に言われた今日の昼までと指示された資料を作り終えた私は、期限内に無事提出をし安堵していた。

首を右に傾ける。
ポキッと音が鳴った。
首を左に傾ける。
ボキボキっと音が鳴った。

右に左に傾ける。
ポキッ、ボキボキ、ボキボキ、ポキっ。
なんと軽快なリズムだろう。

試しに前に傾けるも、音は鳴らない。
さらに後ろに傾けるも音は鳴らない。
急に後ろに傾けたせいで、私の喉はぐえっと声をあげた。

「大丈夫ですか?」
やさしい部下が私に声をかける。

「あ、うん。大丈夫。あれだよあれ。チョコボールのキョロちゃんの真似をしてみたんだ。ぼ、忘年会の出し物にでもしようかと思って」
私は首をそらし、再びぐえっと喉から声を出した。

「あ、ああ。お上手ですね」
困惑した部下の声は少し震えていたような気がする。笑っているのか、恐怖におののいているのか、はたまたキョロちゃんのマネが寒すぎたのか、私には彼女の真意をはかることはできなかった。

「係長、オススメの整体紹介しましょうか? 近所にあるんで」
「あ、そうなの?」
私はぐるんぐるんと首を回す。
「係長、だいぶ肩こりひどいみたいなんで」
心配そうに私を見つめる彼女の目は、さながらマザーテレサのようである。

とはいえマザーテレサの目を私は知らない。私は昔、学校の図書室で見た事のあるマザーテレサの伝記の表紙を思い出しながら、そこに鮮明に思い出すことの出来るスーパーマリオのキャラクター、テレサを当てはめてみた。

怪訝な顔をしながら部下テレサはカバンを取り出し、カバンの中から財布を出した。そして診察券を財布から引き抜くと、私にハイと手渡した。
「あ、ありがとう。今日、急ぎの仕事はないし特にチェックが必要なものもなかったら、今から休みとってもいい?」
私はテレサの診察券に書かれた整体の屋号をGoogleの検索窓に入力する。
「大丈夫ですよ」
部下テレサはほっとしたように眉間のシワを緩めた。

「ごめんね、急に」
私は診察券を部下テレサに返却する。
「いえいえ、全然」
部下テレサが笑みをこぼす。もしや、急にキョロちゃんの真似をしてぐえぐえ言い出す上司を追い出すことができて嬉しいんじゃないか、なんてことを疑ったりもせず、私は「ありがとう」と言った。

職場を出て、ランチに行く。
ランチはお気に入りのタイ料理の店に行った。
人気のタイ料理店は多少並ばなくてはならないが、意外に回転が速い。

私はトムヤムヌードルかグリーンカレーかパッタイかで悩んだが、その日はグリーンカレーにした。
と言いつつもいつもグリーンカレーを選んでしまい、他のメニューは食べたことがないのだが。

淡いグリーンのカレーをひとさじすくい、口に含む。ココナッツの甘さとスパイスのピリピリとした辛味、爽やかなパクチーの香りが口の中いっぱいに広がる。私はもうひとさじすくう。今度は具もスプーンにのせて。
カレーと具を大口を開けて放り込む。チキンはほろほろと崩れ、一緒に口の中に入ってきたタケノコがシャキシャキと音を立てる。私はごくんとそれを飲み込むと、もうひとさじすくう。今度はご飯も一緒に。ご飯にグリーンカレーがからみ、お米の一粒一粒に絡んだグリーンカレーが一気に私をタイにつれて行ってくれた。

まあ、タイには行ったことがないんだが。

むしゃむしゃとグリーンカレーを食べ続け、ランチセットのバニラアイスをペロリとたいらげる。シャリーンとバーコード決済で980円を精算する。店を出て、部下テレサに教えてもらった整体へと向かう。
予約はしていないが、平日の昼間だ。大丈夫だろう。

スマートフォンの地図アプリで場所を確認した。
駅からほど近い整体院は、大きな通りには面しておらず、路地裏のビル内にあるようだった。

私は地図アプリに従い、整体院を目指した。

よく知っている場所のはずなのに、一本入るだけで、そこは知らない世界に見えた。見たことのない店がいくつも連なっている。まるでハリーポッターのダイアゴン横丁にでも紛れ込んだようだ。

私は当初の目的である整体院のことをすっかり忘れ、店の中を覗き込んだ。ほとんどの店が、夜から開業するような飲食店だった。和食や中華料理、エスニック料理や韓国料理など、さまざまな国の料理の店が並んでいる。
私は、どこか一軒でも開いていないか、ひとつずつ見て回った。

一軒でも開いていれば、是非とも寄ってみたい雰囲気だったのだ。
とにかく好奇心がくすぐられた。できればアルコールを取り扱っている店ならなおのこといいなあ、なんて思っていた。

ガラス張りの店舗を覗き込む。
店内にはお婆さんが一人、ロッキングチェアに腰掛けていた。
ぎいぎいとロッキングチェアの揺れる音が店の外まで聞こえてくる。
私の目はゆらゆらと揺れるお婆さんとピシャリとあってしまった。

お婆さんが私に気付き、ちょいちょいと手招きした。
仕方なしに私は店の中へ入る。ギギギギギと不穏な音を立ててドアを開ける。私がドアノブから手を離すと、急にばたんと戸が閉まり、私はドキッと肩をすくめた。

「いらっしゃい」
しゃがれた声でお婆さんが声をかけてきた。

「このお店は何のお店ですか?」
店内には所狭しと色々なものが壁や棚に置かれている。私は本や、謎の液体、奇妙な人形が飾られた店内を見渡しながらお婆さんに尋ねる。
「占いだね」
お婆さんがニヤリと笑う。

「あ、そうですか」私があっさりと帰ろうとすると
「肩がコッてるんだろ。見てやろうか」とお婆さんがタバコの煙をぷうと吐いた。
「ほら、座んな」と垂れ下がった瞼の奥の目でギラリと睨みつけるようにじっと私を見てくるので、私は帰ることができず誘導されるがまま、お婆さんの前の椅子に腰掛けた。

「ああ、あんた、なんかついてるよ。これじゃ肩がコるはずさ」
「何がついてるんですか? 霊視かなんかですか? 占いじゃないんですか? この店は」
私は詰め寄った。
「まあ、見えるもんは見えちまうのさ」
お婆さんがニヤリと笑った。

「何がついてるんですか?」前のめりで私は尋ねた。
お婆さんは声を低くして、私の肩を見つめて言った。




「noteの毎日更新のプレッシャーさ」




という妄想。

オチがしょうもなくてすみません。
書き始めたら楽しくなって、ちょっとしたイタズラ心です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

毎日更新は、今のとこまだ楽しいので続けます。
さて一体、どこからどこまでが妄想でしょうかね?

創作とは、1%のひらめきと99%の妄想である。







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