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イラクの非日常な日常(後編:Red Zone編)

こんにちは。副代表の川崎です。
ご好評を頂いている(?)「イラクの非日常な日常」、3部作もついに最終編となりました。「前編:Green Zone編」「中編:コンテナハウスとイラクの街並み編」と繋いで、安全地帯のGreen Zoneから少し足を延ばして街中に出てみたところでしたが、ついにRed Zoneに突入です。


その前に、

前回の記事から今回までにも、当団体の理事がそれぞれの目線、経験から色々な物事をご紹介しております。私の目線からそれぞれを見てみたら、

日本の国政選挙において「国際協力」という目線はなかったなと気付かされたのはあおてつの記事
(以前香港に駐在していたもので)香港と言えばダブルデッカーという、変化の中になつかしさを感じさせる真衣の記事でした。
代表の荒木はさすがで、挑戦すること、それを後押しすることの大切さを改めて認識できました。
畠山の記事は、、、今度本人に会うのが楽しみですが、あまり体重の増減を繰り返しているとそれはそれで心配ですね。
もうすぐお子さんが誕生というイトウネシアですが、確かに名づけは難しい!自分も一人の子供の親でありますが、子供自身が気に入ってくれるとうれしいなと思っています。
山田は今大学院の試験の真っ最中?ということで、また今度記事をリリースしてもらいますので、皆さまお楽しみに。

間に、国際機関でのキャリアに関する記事を畠山が書いていますが、これからJPOに応募の時期ということで、当ブログの人気記事の一つでもある「虎の巻」や「体験談」も、ご関心ある方は是非ぽちっと購読いただければ嬉しいです。


ということで、そろそろ本題に入りたいと思います。


Red Zoneってそもそもなんですか、という話はこれまでにも少し触れてきましたが、高い塀に囲まれて安全が確保されたGreen Zoneの外になります。でも、それは逆に言えば、普通にイラクの方々が過ごしている街中。GreenとかRedとかってのは外の人間が勝手につけた話で、イラクの方からすると、Green Zoneのほうが、我が町に登場した異常なエリアとなりますよね。

とはいえ、テロや誘拐のリスクがより高い外国人にとっては、どうしてもその区分の中で安全を意識しながら過ごさないとならないものです。外国人がテロに会ってしまうのって、その国にとっても外交上やレピュテーション上の大問題となってしまいますので。


ですが、今回書くのは、そんなRed Zoneに我々外国人住んでましたよ!っていうお話です。


1.Red Zoneの生活の基本

Red Zoneに外国人が住むってことで、何より最優先はセキュリティー。
というわけで、いくつか候補を見た中で、最終的に一つの小さなホテルを貸し切り、1階のロビーをオフィスに改修し、2階の部屋に住むというまさに合宿生活をしていました。リアルに46時中会社の人と一緒で、職住近接というか、同じ建物、ってことで、プライベートは自室のみ、会社の上司・同僚とも(言葉通り)四六時中一緒という環境でしたが、それ自体は正直慣れればむしろ楽しいものでした。

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(1年ほど過ごしたお部屋。懐かしい)

そんなホテルを丸ごと囲うように、住み込みのセキュリティーが守ってくれます。ホテルに続く道の両端にはT-Wallでバリケードを張ってもらい、許可された車両しか通れなくなっていました。その道や入口にはマシンガンを持ったお兄ちゃんたちが24時間体制で外から来る人ににらみを利かしてくれていました。我々は中でのんきに過ごしていましたが、周囲の住宅の人には、何事だろうと思われていたでしょう。

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(僕らを守ってくれたお兄ちゃん)

食事は3食ホテルの食堂で、ビュッフェスタイル。といってもそんなに種類があるわけではなく、ほぼルーティンで、料理を見れば何曜日かわかる、というぐらいにはなっていました。幸い、そこそこ味は良かったので助かりましたが。

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(お米は長い。肉は主に羊)

あ、あとこれは日本にない特徴ってのは、「停電」。
市中電力の供給は全く安定しておらず、多分計画停電もあったので、基本的に建物の前に発電機があってずっと回っていましたが、これが2時間ごとに切れる設定だったんですね。
なので、2時間ごとにほぼ100%電気が切れる。たいてい30秒くらいで復旧しますが、長いと30分や1時間はとまり、そうすると仕事にならないし、何より夏場は死ぬほど熱い!なんせ外は50℃ですからね。

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(ちょうど2012ロンドンオリンピックのころだったので、ほとんど時差なく中継が見られる!と思っていたら。停電。。。)


2.Red Zoneに住むメリット

Red Zoneに住む最大のメリットは、上にも書いた通り、イラクの方々の日常に少し近づけることです。私の仕事では、ローカルスタッフの方々と毎日やり取りがあったので、Green Zoneにいては仕事上の打ち合わせや資料のやりくりなんかもままなりません。そのため、色々安全を確保したうえで、Red Zoneに住むほうが、仕事の効率等を考えると断然お得でした。

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(ローカルチームやホテルの人たちと忘年会も出来ました。ホテルが用意してくれたケーキですが、はて?)

個人的にも、業務時間中ずっとローカルスタッフや取引先と机を並べて、英語で一日仕事をしている環境というのは、語学力や異文化コミュニケーション力を高めてくれる、非常に貴重な経験となりました。


3.Red Zoneに住むデメリット

前回も書きましたが、Red Zoneというのは外国人にとっては一歩も歩いてはいけないエリアでした。Green Zoneの中のキャンプでしたら、泊まっていた建物やコンテナ以外にも、敷地内に限っては自由に歩けましたが(と言っても狭いですが)、Red Zoneでは、建物から一歩も出られません。

なので、一番のデメリットはとにかく体を動かさないこと。

昨年から、おそらく多くの方が突然リモートワークが当たり前になって、一日家で起きてから寝るまで仕事も含めて生活してました、というケースも増えてきたと思いますが、それが月単位ですから、びっくりするくらい体を動かしません。(前にも書いた通り、一応2か月に一度、一時帰国や隣国へのリフレッシュ休暇があったので、その間は思う存分羽を伸ばしていました)

朝起きて、10秒で出社(廊下を歩いて階段を降りたらオフィス!)。朝が弱い私には最強の環境でしたが、リアルに一日の歩数が200歩とかでしたね。

そんなわけで、いかに休日なり仕事以外の時間で運動不足を解消するかというのが一番の命題であったわけです。


4.そんなRed Zoneのアフターファイブ

というわけで、外にはリアルに一歩も出られない、24時間同じ顔ぶれで過ごす、という生活の中での休日は、色々と工夫が必要なもの。アフターファイブや休日をどう過ごすか、何をするかというのは悩ましいところでしたが、結局はこんな感じでした。

①寝る:とりあえず、何の予定もない、何もしなくてもだれにも何も言われない一日は、ひたすら惰眠をむさぼるに最適。洗濯炊事掃除全部付きなので、一日寝ていても生きていける生活環境は、人をベッドに括り付けます。

②ネットサーフィン:ネットの速度は決して早くはなかったですが、ブラウジングするくらいは何とかなったので、だらだらとネットを巡回。

③音楽鑑賞・映画鑑賞・読書:YouTubeはつっかえつっかえでしたが、iTunesとかで購入した音楽や映画は時間かければ何とかダウンロードできるぐらいでした。(2時間の映画をダウンロードするのに確か一晩かかっていましたが)。電子書籍も広がってきたころだったので、イラクにいても日本のエンタメがダウンロード購入できるというのは、とても助かりました。また、自分も含め、一時帰国者がDVDとか本とかを持ってきては皆で共有していたので、最後のほうは廊下に設置した棚一面本とかDVDが並んでました。

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(映画鑑賞会。1ドルずつ出し合って、iTunesとかで買った映画をみんなで見ていました)

④音楽演奏:昔少しギターをかじっていたので、日本からZO-3を持ち込んでみました。時間は有り余るほどあるので、相当上達できるのではと思っていましたが、時間が有り余ると、逆に鍛錬が必要なことって後回しにしてやらないものですね、、、

⑤ジム通い:運動不足が一番の問題だったのですが、ある時、ランニングマシーンをホテルが導入してくれて、その後も徐々にフリーウェイトとかがいつのまにかそろってきて、一人で運動するには十分すぎるくらいのジムが設置されました。時間帯によっては誰かが使っているという感じでしたが、これは相当運動不足解消に役立ちました。

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(屋上に設置されたジムinコンテナハウス。一人ワークアウトには十分)

⑥ゲーム:前回記載の通り、Wiiを持ち込んでいたので、WiiのゲームやWiiでダウンロードできる昔のファミコンのゲームとかを相当やりこんでいましたね。あと、RPGツクールで製作されていたPCゲーム。素人さんが無料で公開しているものの中にも相当作りこまれた大作もあって、大変楽しませてもらいました。(一番やりこんだのはこれ

⑦カラオケ:Wiiのソフトにカラオケができるものがありまして、外付けのマイクをつなぐとそこはカラオケボックス!。これが職場の皆様に年齢問わず大うけで、YouTubeでカラオケ動画を流しながら歌ったり。Red Zoneに日本語のカラオケが響いた初めてのことだったのではと思います。(ただし、停電で2時間ごとに止まる)

⑧麻雀:以前も書いた通り、ひたすら麻雀。これが一番やっていましたね。「中国文化研究会」と呼んでおりました。

⑨だらだら飲む:これも前回書いた通り、お酒は貴重なものでしたが、一時出国者が持ち込んだ酒を相当飲みました。一番お気に入りは、ベイルートの空港免税店で手に入った「山崎12年」。ジャパニーズウイスキーは、心にも染み渡りました。

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(中国文化を研究しながら、世界中のお酒を飲む)

⑩料理:あとは、休みの日は料理も結構しました。詳細は後述。

あれ、こうして書いてみると、結構充実したアフターファイブ・休日を過ごしていた気がしてきました・・・


5.Red Zoneの食事

Red Zoneの食事は、上記のとおり最初はホテルが用意するビュッフェだったのですが、まあ正直飽きます。そんなわけで、我々の最大の関心ごとは、いかに食事を充足させるかに移っていったわけです。

一緒に暮らしている中に何人か料理がとてもお得意な方がいらっしゃって、現地で手に入る食材や外から持ち込んだ食材で相当手の込んだものも作っていただきました。また、日本から一時帰国者が、段ボール何箱分も食材を持ってきてくれて、それが本当においしいこと。

そんな食生活の一端を写真でご紹介です。

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(こういうのが日本から大量に届くと皆大喜びです。一番人気はカップラーメンでしたが、配給制になっていました)

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(なんと冷凍した刺身をサクで持ち込んでいただいたこともありました)

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(餃子の皮を持ち込んでみんなでつつんでみたり)

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(豆腐だって手作りできちゃうのです)

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(カレーはほぼ毎週誰かが作っていました。自分も得意としてましたが、時間はいくらでもあるので、玉ねぎをじっくり2時間炒めるのもお手の物)

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(本社からおせちセットも届きました。日本にいるよりよっぽど正月らしい正月です)

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(餅だって輸入します)

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(年越しは天ぷらそばだって食べられます)

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(でも、なんたって一番はおにぎりに味噌汁。最高にうまい)


誰もが地の果てと思うかもしれないイラクで、さらにRed Zoneにいるからこそ、日本への思いが高まってくるものでした。


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(最後におまけ。ホテルの計らいで、中庭でバーベキューができるようになったのですが、これがまた最高にうまかった。外なのでセキュリティーも万全!このガードマンのお兄ちゃん、一歩も動かず外をにらんでくれていたけど、お腹すいただろうなぁ)


そんなこんなで、前編から合わせて3部作で、私の2年のイラクの非日常な日常を振り返ってみました。
大変貴重な経験であったと思いますし、自分の人生観を大きく変えた充実した2年であったと思います。

もし皆様にもこのような機会があれば、その際のイメージ作りに多少でもお役に立てるような記事になっていれば幸いです。


20 - コピー

(本当にイラクに行ってたよ、の証拠に、防爆チョッキを着た自分です)

※番外編、追記しました


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