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イラクの非日常な日常(中編:コンテナハウスとイラクの街並み編)

みなさま、こんにちは。副代表の川崎です。
前回ご好評(?)を頂いた「イラクの非日常な日常」。今回は中編をお届けしたいと思います。

その前に、毎回恒例となってきたゆるふわ日記の振り返りです。自画自賛ですが、本ブログの記事は多様なバックグラウンドを持ったメンバーによる気付きにあふれる記事ばかりですので、まだお読みでない方は、是非一度ご覧いただければ幸いです。

全くの偶然ですが、この1か月ほどの間にブログに集まった記事は、「常識ってなんだろう」というのがテーマのようです。
日本、イギリス、香港で子育てに取り組む真衣の海外学校あるある話は、日本の学校の常識って世界の常識?(逆も然り)ってお話しです。さすがに授業中に紅茶を飲みながら(しかもビスケットを紅茶に浸すって、え、イギリスだと常識なんですか?)というのは全くの驚きでした。
代表の荒木の記事は、新たなキャンパスライフの常識が生まれようとしている瞬間のお話しです。リモートワークに慣れ切った私は、僭越ながら学生もリモート授業を好むのでは?と荒木教授に聞きましたが、「大学は学問・生活協同体としてのメンバー間のインタラクションにこそ価値がある、みんなリモートでよければ放送大学があれば十分じゃない?」と教えられ、当方の常識(?)も、なるほどー、と覆されたところでした。
山田のお話は、「バイアス」という(ある種の)「常識」について。自分も物を見る時は自分目線になってしまうことばかりですが、「バイアス」や「ステレオタイプ」という偏った「常識」があることを忘れずに、自分を客観的に、違った立場で見られるか、ということの大切さに改めて気付かされました。
イトウネシア杏子は、キャリアにおけるプライベートや子育てのお話し。ちょっとずれてしまいますが、特に子育てはいろいろな「常識」や「かくあるべき」が言われるテーマですが、イトウネシア杏子の言葉を借りれば、どう育てるかってのはまさに「正解の無い問い」。子育てをしていると、毎日変化と発見で、常に「常識」が塗り替えていく日々かなと思います(だから楽しい!)。
最後に畠山の記事で、タイトルを見た瞬間に、「お、イトウネシア杏子に乗っかって音楽紹介かな」と思ったら、まさかのガチ(筋肉)ネタという。人によってモチベーションってかくも違うのかー、と新たな常識を突き付けられた瞬間でした。

さて、そんな「常識ってなんだろう」の流れに乗っかって、今回も皆様の「常識」をどれだけ裏切れるかというのが私の密かな楽しみです。
では、私の経験した非日常な日常のバグダッドライフ、2回目です。題して、「コンテナハウスとイラクの街並み編」


1.コンテナハウス?

前編では「軍のキャンプ」における間借りの様子をご紹介しましたが、住んでいる間に、理由はわかりませんが、当時契約していた警護会社がこのキャンプを出ることになりました。そこでお引越しをすることになったのですが、それが「コンテナハウス」。コンテナハウスとネットで調べると「コンテナハウス おしゃれ」という検索ワードが出てくるくらい、おしゃれなカフェとかを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、ここはバグダッド。「コンテナ(そのまま)ハウス」というのが、引っ越し先でした。
前の記事でも写真を掲載したのですが、40FTコンテナを積み上げて、内装を施して利用します。一応新築(?)なもので、内装は意外ときれいで、ユニットシャワーなんかも新品なので、前のキャンプよりもきれいで感激しました。

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(コンテナハウス3段積み。敷地内にこういう車両が普通にいるのはさすがですね)

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(ユニットシャワートイレ新品で感動!なぜか左右からもシャワーが出る仕様で最初はびっくりしました)

ただし、突貫工事なもので、雨漏り、漏電は当たり前。ただでさえ熱いバグダッドで、ルームエアコン一台でどれほど快適に過ごせるのかというと、ご想像の通りです。私がいたのはちょうど冬だったのですが、逆に寒すぎるのにエアコンが効かず、薄い毛布一枚の支給という逆の意味でやばかったです(毎晩ジャケット着て寝てました)。

ここに結局3ヶ月ほど住んでいました。

2.砂嵐の夜

砂嵐ってほとんど体験された方はいらっしゃらないと思いますが、砂漠の国イラクでは日常。砂嵐が町を覆うと、一瞬で世界がオレンジになり、あらゆるものが細かい砂で覆われます。

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(砂嵐が通過すると、隙間風だらけのコンテナハウスは中までしっかり砂だらけ)

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(外の世界はオレンジに染まる)

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(怪しい人ではありません。こうでもしないと息ができないのです)

最初は拭き掃除していましたが、すぐにあきらめましたね。
何より、このパウダーのような砂交じりの空気を普通に呼吸しているというのが心配でしたが、もうどうしようもないですね。
そんなわけで、バグダッドにいる間は、ひげも鼻毛も必要に駆られて放置状態。

なお、砂嵐がくると、視界が悪くなります。
さて、そうなるとバグダッドでは何かが飛んできます。

正解は、「ロケット弾」。
監視の目が届きにくくなり、レーダーも効かなくなる?とかだったと思いますが、どこからともなくロケット弾が飛んできてどっかに落ちる(多分撃つほうも見えていないので適当)という夜でした。私も夜にそれらしい光跡を見ましたが、きっとあれは流れ星だったと信じています。

3.街を車で走る

これも前回書いた通り、街中に出るのはとても貴重な体験です。大体週に2回あるかないかだったでしょうか。
街中に出るときは、コンボイを組んで、防弾車に乗って、防爆チョッキをつけてとなりますが、それでもずっとキャンプやコンテナ村に閉じこもっていることからすると気分転換になったものでした。
キャンプのあるGreen Zoneの中は、前回も書いた通り制限エリアだったもので、車はほとんど走っておらず、渋滞なんてものはないのですが、いざチェックポイントを超えて外に出ると、基本大渋滞。
ちなみに、Green Zoneの外は何と呼ばれていたかというと、、、そう、Red Zoneです。(Redに反応したあなたは、きっと理事の畠山とは古い付き合いの方ですね)

なぜ大渋滞か。
①信号、ありません!!(交差点は警察官の手信号。しかもやる気なくて下手。。。)
②数百メートルごとにチェックポイント!!(身分証のチェック、移動許可証のチェック、銃の携帯許可証のチェック、トランク開けて見て変なもの積んでいないかチェック)
③道路のあちこちに「Bump」!!(日本では見かけませんが、道路がわざと盛り上げてありスピードを出せないようになっています)
④さらに、T-Wallで道がクランク!!(クランクしていると車がスピードを緩めざるをえないため、爆弾を積んだ車が突っ込んできても安心!)

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(建物入り口のT-Wallによるクランク。ついでに、うっすらと町がホコリに覆われているような感じなのが日常。)

そんな中、我々の乗った警護車両は、車両の頑丈さをもって、一般車両の間にぐいぐい突っ込んで割り込みながら行くので、さらに渋滞を引き起こします。

ちなみに、このチェックポイントに、ある時画期的な変化がありました。
それは「爆弾探知機」が導入されたこと。といっても、ジャグリングみたいな装置で、手に持ったアンテナが曲がったらダメらしいのですが、それで爆弾が見つかったというのを聞いたことがありませんでした。でも、チェックポイントの通過がちょっと簡略化されたのは助かりました(逆に怪しい車も素通りしやすくなったので危険??)。

4.車窓から見える景色

このような街中移動のため、イラクに2年いましたが一度もバグダッドのRed Zoneを自分の足で歩いたことがありません。(唯一客先の建物の駐車場から建物まで、というのはありますが)
そのため、自分の中のイラクの景色って、基本車窓から見えたものがほとんどです。
そうして見える街並みは、ごく普通のもの。街には商店があり、おいしそうなパン屋があり、学校や、色々な建物があって、人々がサッカーに興じている。

ただ、砂漠の国らしく全体的に赤茶けていて、古ぼけていて(新しい建物がない)、視界の大半はT-Wallで塞がれていて、街中に当たり前に軍用車が止まっていて、銃を持った人がいる。戦車もみましたが軍や警察なんかの写真撮影は厳禁だったので写真はありません。

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(街の中はT-Wallが沢山。でも、もちろん人々の日常もあります。サッカーはイラクでも大人気!)


そして、ごくたまに戦争やテロの跡が見える。
ごくたまに、っては、数が少なかったという意味ではなく、そういうテロが多いエリアやテロが発生した跡を、コンボイで移動時に意図的に避けていたからだと思います。火事場見学にいったら、リアルに巻き込まれますからね。

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(爆弾テロの跡。どれほどの勢いだったかがわかる)


面白かったのは、街中にいっぱい羊がいるんですよね。線路脇で羊が飼われていて、道路沿いで肉が売ってある。つまり、とても新鮮なはず!
この羊君たちも、道路渋滞に一役買っていたものと思います。

5.街に浮かぶもの

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(バグダッドの空に浮かぶ怪しい飛行船)

そんなバグダッドの街中には、空高く白い気球というか飛行船みたいなものが浮いています。
さて、なんでしょうか。
もちろん、観光客が遊覧飛行をしているとか、誰かが広告を掲げている、というようなことはバグダッドでは考えられません。

結局私も真相は不明なのですが、噂によると、ロケット弾の発着点を空から監視しているのだとか。

バグダッド、あるあるですね!

6.地方へ。そこはあらゆるものの源があるところ

時々ですが、仕事の関係でバグダッドを離れてイラクの地方都市に行く機会がありました。
もちろん、地方都市に行っても、ここはイラク。バグダッドからコンボイに乗って、8時間というような時間を、防爆チョッキを着て走っていきます。
でも、バグダッドという都会を離れ、地平線の向こうまで砂漠(というか土漠)というところをひた走るという経験もなかなかできるものではありません。

特に南のほうに行くと、原油地帯になりますので、あちこちに油井から立ち上る炎と煙が見えます。
人類に多種多様な利便性を与えてくれるものであり、権力闘争と戦争の火種にもなるもの。イラクに原油がなかったら、イラクは戦争の舞台にならなかったかもしれないし、そうしたら自分もここにはいなかったかもしれない。初めて遠くに立ち上るのを見たときは、いろいろなことを考えさせられ、感慨深いものでした。

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(地平線の果てまでの砂漠の中ににょきにょき生える油井)

さて、この地方遠征でいく都市のひとつにバスラというイラク第2の都市があるのですが、そこは当時多少危険度が低かったというのもあり、ホテルに宿泊することができました。唯一外国人が泊まれるホテル(元外資系の五つ星ホテルだったところ)があり、もちろん古いのですが、キャンプでもコンテナでもないホテルのベッドに寝られ、湯船にお湯(と言っても茶色いけど)を張って、防爆チョッキにやられた腰をいたわり、さらに、イラク料理のレストランでご飯を食べるという、体験ができたのは、大変貴重なことでした。
(一泊500ドルとか1,000ドルとかしましたけどね、確か。大半は警護料)

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(イラクにこんな豪華なホテルがあったなんて!)

ということで、前回よりも少し街中に飛び出して(注:車で)感じたイラクの非日常な日常でした。
次回は、後編:Red Zone編の予定です。

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