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購入した器が微妙だった、でも結論を急がない

通販で買って届いた器がアレ?という事がよくあるのですが、器に関しては、私は結論を急がないようにしています。

器は使ってみないとわからない。そういう場合が多いからです。

もしかしたら、自分の知識が足りないだけ?という事も視野に置きつつ、どうやって使いこなそうかと模索してゆくと、意外な発見をしたり、価値観の幅が広がる経験をする事があります。

(写真左が今回ご紹介する器、北窯・宮城正孝工房の呉須イッチン皿/直径21cm/購入店 もやい工藝

失敗した買いもの

初めて通販で買った器は「やちむん」でした。やちむんとは、沖縄の方言で「やきもの」のことをいいます。

1枚目を購入して気に入り、すぐに2枚目を注文。あいにく完売だった為、次の窯焚きまで入荷待ちとなります。お店からは次のように言われました。

「こちらの工房は登り窯のため、必ずしも注文通りの物は焼けません。そこがまた魅力でもありますので、気長にお待ちください。」

楽しみに待ち、数ヶ月後に2枚目を迎えます。そのとき初めて、お店の方に言われた言葉を理解しました。

1枚目と、ずいぶん違う。。

(写真では違いがわかりにくいですが、右が1枚目、左が2枚目)

1枚目で魅力に感じた、優雅に開いた縁の形状や、マットな釉調は見当たらず、テカテカと黒光りする別なものになっていました。ショックでした。

実物を確認しないで買った自分の失敗です。きっと、作り手の作意の変化等でデザインが変更されてしまったのかもしれません。そのまま、食器棚の奥に仕舞いました。

後で知ったこと

でも、後に本でわかった事がありました。

「…胎土が柔らかいため、轆轤(ろくろ)作業は本土の窯より難しいといわれる。皿は鉢のように深く作って、乾燥させているうちに下にたれて、皿らしくなる」(久高民藝店監修『金城次郎 壺屋時代作品集』より)

人間が全てをコントロールせず、一部を自然に委ねて造形する、そういうモノ作りがあることを、このとき知りました。

使いながら気づいたこと

使ってゆくうちに気づいた事もありました。

このお皿は、意外にも洋食器と馴染むのです。

全ての洋食器とは言えませんが、手持ちの物とは良い感じです。高温焼成による光沢感、装飾の立体感が馴染ませているのではと思っています。

↑デルフト陶器(オランダ)とやちむん呉須イッチン皿。よく見れば、両者とも菊唐草模様が描かれています。産地は遠く離れているのに、装飾に共通点があるのは興味深いです。陶磁の東西交流の歴史に興味が湧いてきます。

↑ロイヤルコペンハーゲン(デンマーク)とやちむん呉須イッチン皿。縁に施された装飾が立体的(浮き彫り)という点が共通点です。

↑リチャードジノリ(イタリア)とやちむん呉須イッチン皿。こちらもレリーフの立体感が共通点です。

こうした気づきを得て、今では愛用の器になりました。

アレ?を受容するとき

通販で手元に届いたときのアレ?は、もしかしたら自分の幅を広げるチャンスかもしれません。

このやちむんを手にする以前は、私は和食器と洋食器は混用しづらい、陶器と磁器は調和しにくいと思っていました。

しかし今は、コツさえつかめば調和できるかも?との可能性も視野に入れる様になりました。器選びの視点の広がりです。

自分の価値判断は常に成熟途上。だから、懐深くありたいと思います。

…とまぁこれは、器偏愛者だから思うことかもしれませんが。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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