スパイスで攻める梅仕事から思い出す、祖母のこと
梅と祖母と梅仕事
そろそろ梅の季節も終わりでしょうか。
この時期、梅を見ると心に浮かぶのが祖母のこと。生前は毎年大量の梅を買い込んでは庭に天日干しして、梅干しに梅酒とたくさん漬けていました。
その頃は、洗ったり干したりの工程が「めんどくさそうだなぁ」と手伝うこともありませんでしたが、今から思うとそのおかげで毎年美味しい梅干しや梅酒をいただいていたのだとしみじみ。
その祖母も亡くなって、十年あまり。幼い時からおばあちゃん子だったのに、どうしてあの頃一緒に手を動かして教わっておかなかったのかなと今頃悔いています。
スパイスで攻める梅仕事
このように家に梅仕事をする人がいると、自分は食べる専門のクセがついてしまう。敢えてつけるなら、そういう理由で「梅仕事」なるものにさして興味も湧かなかったのですが、今年生まれて初めてやってみました。
祖母に対抗するわけではないけれど、やっぱり自称・スリランカ広報大使、スリランカ料理をつくる・広める人としては王道の梅干し、梅酒ではなくスパイスで攻めたい…。
ということで、「梅のスパイスピクルス」を。
材料は塩・砂糖・酢、そして好みのスパイス類。シンプルな材料だからこそ、素材にこだわります。
紀州の青梅を買ってきました。なんと美しい姿。
塩は日本近海の海水から伝統製法で作られたミネラルたっぷりの海の藻塩を、砂糖は沖縄産もしくは奄美諸島産の黒糖を使います。いずれも栄養素が削ぎ落とされた精製塩・砂糖ではない、天然のものが重要ですね。
お酢は京都の千鳥酢を。日々のおかず作りにも、米酢はこれ一本です。
スパイスはブラックペッパーやカルダモンなど、お好みのものを適量。写真は漬けた直後ですが、1〜2週間ほどから食べられます。熟成の違いによる味変も楽しみ。
スリランカ版・梅干し
ところで、「梅のスパイスピクルスのような食べ物、スリランカにはあるんかい」という声も聞こえてきそう。そっくりそのまま同じものではないですが、梅干しに似た風味の食べ物ならあります。
その名は、「ルヌ・デヒ」。ルヌ=塩、デヒ=ライム
つまり、塩レモンならぬ塩ライムですね。市販品もあるいるくらい(むしろ、市販品を買う家庭も多いかも)メジャーな一品であります。
これは口に入れると、「ちゅっぱ〜〜〜〜〜〜〜〜い」となるくらい本当に酸っぱい。でも美味しい。スリランカカレーに混ぜて食べると絶品で「スリランカ食堂サライラサイ」でも時々お出しします。
日本だと、らっきょうの酢漬けや福神漬けにイメージが近いでしょうか。カレーの付け合わせをめぐって、共通点が浮かびあがるのは興味深いですね。
スパイスピクルスを選んだ理由
話を祖母に戻して。食に対しては好奇心旺盛で健啖家であった祖母は、中華やフレンチ、イタリアンはもとよりエスニック料理など、どんなジャンルのお店に誘っても「美味しい」と喜んで口にしてくれました。
初梅仕事で、わたしがスパイスピクルスを選んだ理由。
スリランカにちなんでということもありますが、どこかで王道の梅干しや梅酒では到底祖母の味に敵わない。もう少し料理の腕を磨いてから。そんな思いが無意識に働いたのかもしれません。
梅のスパイスピクルスを食べたら、どんな感想を言ってくれたかな。食べて欲しかったなぁと心から思います。
たまたま書き始めた梅の話。ふと思えば、今日が祖母の命日でした。亡くなって、もうかれこれ10年近くになるけれど、梅の記憶と共に例年より色濃く思い出されたのも何か意味を感じます。
信心深いスリランカンにならって、せめて仏前にこのピクルスをお供えしよう。きっと笑顔であたたかく、いまのわたしを見守ってくれていると思いながら。
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