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挑戦的な企画と無責任な思いつきの違い(2/2)【創作のための仕事論(5)】

1はこちら。

アイディアは1、計画は100

アイディアと計画は比べるのもおこがましいくらい情報量が違います。
アイディアは1、計画は100と言っても差し支えないでしょう(いやもっとかも)。例えば、

「キャラクターパン専門のパン屋を立ち上げたい!」

とアイディアを出したら、ひと言で済みます。が、これを計画しようとすると、どのくらいの成果を狙うのかという話やコンセプトの具体化/言語化に始まり、出店はどこにどのくらいの規模でするのか、外装や内装はどうするのか、どういう商品をラインナップして、ライセンスなどをどう引っ張ってくるのか、素材の仕入れはどうするのか、店のスタッフは何人必要で、どういう教育を施して、店長に必要な人材像はどういうもので、資金はいくら必要で、キャッシュフローをどう回して……などなど、軽く書いただけでもこんなふうに、考えなければならないことは山積みです。

端的に言って、アイディアを出すのは簡単です。
計画を立てるほうが遙かに労力がかかります。
もちろんこれは敢えて誤解を恐れず言っているだけで、実際にはアイディアを出すという行為は、計画を立てるよりも「遙かに不確実性が高い」ので、本当に価値のあるアイディアを出すのは非常に難易度が高いと思います。

しかし、なんでもいいなら、アイディアを出すのは簡単です。
新規事業のアイディアを100個出せと言われたらまあまあ苦労しないと出ませんが、INPUTを繰り返しながら絞り出せば、いずれ出ます。しかしその中から「将来100億円のビジネスになるアイディアを出せ」と言われると、これはもう確実にやれるとは口が裂けても言えません。
要するに「計画を立て、さらに実行するに足るほど価値のあるアイディアはほんのひと握りしかない」ということです。しかもそれがどれか、というのは究極的には誰にも解りません。

だから無責任な思いつきが横行しやすいのですが、もしその発言者が「自分で計画し」「自分で実行する」ことが前提だったら、立ち止まって考える可能性は高くなると思います。
100個のアイディアを「誰かが計画し、実行してくれる」と思っていたら、「全部やってよ」という気持ちになってもおかしくないでしょう。ですが自分がやるとなると大変、というのもありますし、なにより時間が有限なので取捨選択せざるを得なくなります。
そのとき、自分の貴重な人生を削ってまでやる価値のあるものか? を真摯に自らへ問いかけるひとなら、アイディアの質をなんとかして上げようとするでしょう。

だから「単なるアイディアと計画には大きな違いがあることを理解し、自ら計画と実行を担ってでもやる覚悟があるひと」なら「挑戦的な企画」になりやすく、「アイディアを出すことしか頭になく、誰かが計画と実行をやってくれると思い込んでいるひと」は「無責任な思いつき」になりやすいのだと思います。

でも逆に「自分が計画も実行もやる」という前提に立っていることが裏目に出て、比較的現実的なことしかやろうとしないというパターンに陥ってしまうリスクもありますので、そこが企画の難しいところです(前回「全部は解消されませんが、後述します」と書いたのはこのことです)。

創作も大体同じ

ここまで書いたことは、物語をつくる行為にも大体当てはまると思います。
「世の中にないものを生み出したい」という気概を持ち、かつ計画(この場合プロットまででしょうか)と実行を行うのは相当エネルギーが要ります。

プロットや執筆に慣れれば慣れるほど、書けるものの幅が広くなったり、ある程度手癖でもつくれるようになったりしますから、気を抜くと「置きにいく」ことになりかねません。
18年の間、置きにいったことが一度もなかったかというと、一度や二度どころか、もしかしたら無意識的な部分も含めたら半分以上置きにいってたんじゃないか? と思ったりもします。

だから企画について偉そうな口を叩いているように聞こえるかもしれませんが、自戒の念を込めて書きました。

企画も創作も、無責任な思いつきで始めるべきじゃない。もちろん肩の力を入れ過ぎては逆効果ですが、いつだって今の自分を超えるつもりでやらなければ意味がない。
自分が計画や実行段階でひいひい言うことが解っていてなお、挑戦的なアイディアを出すことに臆せず創作と向き合いたい。

わたしはそんなふうに思います。


ま、そんなことを言いつつ「120点を狙わず、置きに行った80点の企画を安定してやれる企画職」というのも、社会的には需要があると思うんですけどね。
これは自分がどういう存在でありたいか? というポジショニングの話になりますので、また別のお話。


というわけで今回はここまでです。

お読みいただきありがとうございます。
さらばでした!

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