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「創作と仕事」の壁をぶち壊す(3/6)【さらば、noteを書く理由(16)】

1、2はこちら。

荒削りな熱量と作品の質

「じゃあ、作者の苦労は作品の質に関係あるのか?」というのが、次に考えるべきことです。
例えば「別に作者がどう試行錯誤しようが、執筆時に面白さを感じていようが、表に出ないならなんの価値がある?」というご意見なんかはごもっともだと思います。

でもわたしは、「作者の試行錯誤は作品に表れる」と考えています。

「なんとなく行きたい方向は見えてるけど、そこまでの道筋が見えてない。こっちでもない、あっちでもないと苦しみながら、ようやく見出したルートで目的地に辿り着く。正確にはその目的地は当初想定していたものとイコールじゃないかもしれない。けど、確かに足掻き、苦しんだからこそ辿り着けた場所だ」

みたいなものは、作品に出ると信じています。
世の中に出回っている作品でも、

「なんかこれ、荒削りだけど熱いな」

と感じるものとたまに出会います。新人の作品に多いですが、ベテラン作家の作品でも、稀にあります。わたしはそういう作品は、恐らく作者が物語をつくりながら(わりと勢いに任せた)旅をしているのだと考えています。

そして、わたしはそういう作品をこよなく愛しているのです。
どんなにヒットしていようと、面白いと思おうと、荒削りな熱量を感じない作品がいつまでもわたしの心に残ることはありません。

わたしは個人的にそういう作品を「ライブ感がある」と言っています。
そしてわたしがつくりたいのは、ライブ感のある物語なのです。

ライブは完成しない

わたしが18年以上物語をつくり続けられてきた、かなり大きな理由のひとつが、この「ライブ感のある物語を目指している」ということだと思っています。

破綻がないという意味で「完成度の高い物語」を志向していると、時間の経過と共に完成度は上げられますから、いつか(わりと早い段階で)限界が見えます。完成度100点になったら、その先はありません。
でも、完成度が80点だろうが100点だろうが、実はその物語の面白さや価値はさほど変わらないと思っています(20点とか30点だと、そもそも面白さや価値が表現できないとは思います)。

ライブと言えば音楽ですが、完成度の高い演奏を聴きたいならデジタル音源でいいわけです。ライブのほうがむしろミスったり、感情が乗り過ぎたりして完成度は下がります。
が、ひとはそれでも(だからこそ)ライブに行きます。

音楽家も「音源あるからそれ聴いて」などとは言わず、ライブをします。
演奏する曲の譜面は同じでも、その日そのときしかできない音楽をするためにステージに立ちます。
物語は厳密にはそれと違いますが、似た部分があると考えています。特に、戯曲や脚本と違って、小説は「書くこと」がゴールです。この場合、いわば執筆というのは役者が舞台に立つことに等しい。

そしてライブというのは、「その日どういう作品が生み出せる自分であれるか」という勝負であり、作品自体の絶対的な完成度よりも「今の自分の限界を超える」ことに焦点が置かれるべきものだとわたしは思います(常に80点以上の完成度を安定的に出す「プロのライブ」という考え方があることも解った上で)。

言い方を変えると「ライブに完成はない」のです。今日の完成はあったとしても、明日はまたまっさらな状態で高みを目指すのがライブです。
だからわたしは18年書いていても、全く飽きません。今日の自分より明日の自分が少しでも前に進める可能性を持っていることを、身を以て知っているからです。

技術は高める、ライブ感は失わない

わたしの目指すところが「ライブ感のある作品」であることは、書き手としての面白さを考えても、つくりたい物語の理想を考えても揺るぎないポイントです。
ただ、それがプロットなどの技術を身に付けることと、必ずしも両立しないとは思っていません。

創作に関する考えが未熟であればあるほど、技術を身に付けることで技術に振り回されやすいのではと思ってきました。ですが、そろそろ技術を身に付けても振り回されず、使いこなせるんじゃないか? と自分に期待し始めています。

と、書きつつすぐ自己批判しますが、この3年間はわりと技術に振り回されました。
「上手いプロット」を書こうとしてへなちょこもいいところな物語をたくさんつくっては没になりましたし、プロットだと整えやすいので下手に小綺麗にまとめようとしがちでした。

荒削りな熱量やライブ感という意味だけで言えば、3年以上前に書いた作品のほうが直近のものよりかなり勝っていると思います。
でも、3年前より2年前、2年前より1年前のほうが、バランスが取れてきたと感じます。「プロットを書きつつも、好き勝手やれる」ようになってきたな、と。

正直まだ全然方法は確立できていませんし、むしろ確立なんてできないほうがいいんじゃないかとも思います。
「技術は高める、ライブ感は失わない」という方針を忘れず、試行錯誤を繰り返し続けること自体がわたしにとっての「創作」です。

さて。
こんな感じのことを考えながら、じゃあ今後身に付けたい「技術」とは一体どういうものなのか? という話で、今度は仕事の話に移ろうと思います。


お読みいただきありがとうございます。
さらばでした!

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