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「創作と仕事」の壁をぶち壊す(2/6)【さらば、noteを書く理由(15)】

1はこちら。

編集者によって、幻想が打ち砕かれる

特に驚きの事実ではなかったのですが、編集の方からいただいた数々のコメントは、仕事として捉えるとごくごく初心的な、当たり前のことが多かったです。

曰く、想定読者を考えようとか。
曰く、感情移入させたい読者に近い属性(年代とか性別)の主人公にしようとか。
曰く、はじめに「誰がなにをする物語を書くのか」をはっきりさせようとか。
曰く、プロットを書こうとか。
曰く、前半のもっと早い段階で物語を動かそうとか。
曰く、起承転結の転であまりに物語がぶっ飛びすぎてるとか。
曰く、世の中にないものを書くより、ニーズがあるものを書くほうが重要だとか。

これが「商品企画」とか「プレゼン資料作成」の話であれば、むしろわたしが指摘する側として言うような内容が大半です。なので、

「うぉぉ……ここまでおんなじか……」

という意味で大いに驚きました。
この時点でわたしが勝手に"聖域"にしていた創作の方法論と全く合わず、

「言ってることは解るけど……でもなぁ、それをやるとなぁ……」

みたいな葛藤がありました。
でも、とりあえずここは自分のこだわりを一旦手放して素直にやってみることにしたのです。

3年後に思うこと

それから3年ほどやってみた感想としては、

「商業を意識して学んだことは"道具として使える"。
 でも"道具に振り回される”なら元も子もない」

という、なんとも当たり前過ぎるものです。

要するに仕事と全く同じです。
通り一辺倒で身に付けられるスキルは"使いこなせば便利"ですが、スキル先行で仕事をするひとが「仕事できるね!」って言われることはまずありません。よく切れる包丁は便利だけど、使い方も知らずやたら振り回すと危険、という話です。

そういう意味では、これまでずっとスキルを意識せず、ある意味内から湧き出る熱だけを大事にして「書き続けることを人生の一部にする」というスタンスでやってきたことは、(ベストとは言いませんが)正しかったとも言えるでしょう。
そして同じようにこの3年、スキルを意識して学んだことも正しかった。

じゃあここからはどうするのが正しいのか?
3年より前のスタンスにそのまま戻る選択肢はないと思います。かといって、このままスキルを意識し続けるのも違う。

なぜなら、振り返るとこの3年間で書いたものより、3年より前に書いたもののほうがある角度では優れていたと思う点も結構多いのです。
例えばそれは「荒削りな熱量」です。

プロットの功罪

この3年での一番大きな変化は、プロットを書くようになったことです。
今から誰に向けてどういう物語を書くか、登場人物は何人いて、どういうキャラクターで、一話から最終話までどういう構成で、どういう流れで物語が進み、完結するかを、執筆する前に書き切ります。

物語の質を安定させるという意味で、これは非常に効果的だと思います。
プロットをつくる過程ではやり直すことも多々ありますが、執筆に入って半分以上書いて「駄目だ、一から書き直そう」みたいな事態に陥ることはなくなりました。
しかも執筆時間はそれまでの半分以下で済むようになっています。

ですが、やっぱりこの方法は「効率化」の手法だというのが私の実感です。
常に80点以上の質を目指し、スピーディーに、失敗確率を下げて創作をするなら間違いなくプロットを作ったほうがよいと思います。

ですが、常に120点を目指し、一か八かを楽しみながら創作をするなら、邪魔になることがあります。
もちろん読み手は常に120点が欲しいものでしょうけど、残念ながらそれはあり得ないというのがわたしの考えです。そうなると、常に80点以上を担保しつつ、できれば90点、100点を目指すというのが商業を意識する上では正しいやり方だと思います。

ただわたしの場合、プロットを作るようになってから、物語や登場人物が「自分の想像を超える」率が低くなりました。
いや、当たり前なんですけどね。プロットに沿って執筆するということは「知っている物語をもう一度書く」ことに等しいのです。もちろん細部については予想外の台詞回しや展開が現れることも多々ありますが、それは「物語の解像度を上げる」行為であり、「物語そのものを描く」行為とはやはり違います。

プロットに沿って執筆をすると、「ここからどうなるんだろう」とか「一体この先、どうやって物語が収束していくんだろう」といった、作者であるわたし自身が予想できないものを必死に探り当てようとする感覚は得られなくなりました。
そりゃそうです。もしそれがあったら、プロットから大きく逸脱した物語になっているということですから。


というわけで、今回はここまでです。
上に書いた「荒削りな熱量」については、次回深掘りしていきたいと思います。

お読みいただきありがとうございます。
さらばでした!

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