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約束の記憶(小説)

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2021年2月の記事一覧

約束の記憶 20話

約束の記憶 20話

小説の20話です。

もみじは病院へ行った帰りに、かずはのマンションに向かった。

「確かこの辺りのはず‥」

家の近くだったので、車から降りて、歩いて探した。

「あれ?こんなビルあったっけ?」

かずはのマンションがあったはずの場所には、オフィスビルが建っていた。

「え!いつの間に変わったの?」

新しく建ったビルではなかった。

家に帰って、夫に聞いてみると、昔からそのオフィスビルだったと

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約束の記憶 19話

約束の記憶 19話

小説の19話です。

もみじは久しぶりに手にしたスマホから、驚くものを発見した。

写真の削除フォルダから・・
あの、美しい色と柄の津軽塗のお椀の写真がでてきた。
しかも本の写真ではなく、「わたし」が作った作品のものだった。

夢じゃなかったんだ・・。
でもこのスマホに写真があるのはなぜ?

しかも・・誰がこのスマホで撮ったのか、送ってきたのか。
削除までしたのに、ごみ箱にいれたままにして。

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約束の記憶 18話

約束の記憶 18話

小説の18話です。

「おかあさーん、おかあさん!」

もう少し寝たいのに・・誰・・起こさないで・・。

小さな手で、身体が揺り動かされていた。

「なのは、そんなにお母さん揺らしたらだめだよ」

「だって、お母さんの手が動いていたんだよ・・(´;ω;`)ウゥゥ」

女の子と男の子の声がする。
とっても懐かしい気がするけど、誰だろう。

誰のことをお母さんって言ってるんだろう。

・・・

・・・

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約束の記憶 17話

約束の記憶 17話

小説の17話です。

★登場人物

浅倉もみじ 保育士
森田かずは もみじの保育園に息子が通っていた



かずはがもみじの顔をじーと見つめていた。
いつもにこにこしていて、温和なかずはの目が、全てを見透かしているようで、怖かった。

「もみじさん、これから話すことが事実かどうかは、確かめようがないけど・・。そうなんだ~と思えるところだけ信じてくれたらいいから」

おかわりしたコーヒーを一口飲ん

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約束の記憶 16話

約束の記憶 16話

小説の16話です。

★登場人物

浅倉もみじ 保育士
森田かずは もみじの保育園に息子が通っていた



「どうしたんですか?みなさんお揃いで」

張り詰めた空気と、朝早くから人が集まっているのをみて、遠慮がちにかずはが聞いた。

「うん‥ちょっとね。かずはさんこそどうしたの?」

明子の踏み込まないでねという含みを察したかずはは、ふふっと笑った。

「もみじさんどうしてるかと気になって、会い

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約束の記憶 15話

約束の記憶 15話

小説の15話です。

★登場人物

浅倉もみじ 保育士
森田かずは もみじの保育園に息子が通っていた



あれから1年が経ち、夢の中の出来事と思っていたことも、すっかり忘れて、日常になっていた。

毎朝、夫が朝食を用意してくれることも、ここでは変わらなかった。
もみじは津軽塗にすっかり魅せられて、弟子入りし、一日のほとんどをその時間に費やしていた。
飲み込みが早く、熟練した技術を取得し、はじめ

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約束の記憶 14話

約束の記憶 14話

小説の14話です。

★登場人物

浅倉もみじ 保育士
森田かずは 都内の大手風俗店のスタッフ



もみじのスマホは見つからないまま、工房の地図を夫に書いてもらって、車で向かった。
慣れていない雪道は怖かったけど、行き交う車が少ないのが幸いだった。

工房らしき建物が見えて、速度を落として近づいていくと、入り口の前にイエローグリーンのコートを着た女性が立っていた。

車を駐車場に止めて、その女

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約束の記憶 13話

約束の記憶 13話

小説の13話です。

★登場人物
浅倉もみじ 保育士 35歳 子ども(たくや 小5 なのは 小3)


「うわ、寝過ごした!」

いつもはアラームが鳴る前に目が覚めるのに、もうこんなに明るい!

「やばい、遅刻する」

枕元に置いているスマホを、手探りした浅倉もみじは、固まった。

「あれ、ない。スマホがない」

いつも置いている場所にスマホがなくて、しかも部屋がひんやりして様子がおかしい。

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