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約束の記憶 19話

小説の19話です。

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もみじは久しぶりに手にしたスマホから、驚くものを発見した。

写真の削除フォルダから・・
あの、美しい色と柄の津軽塗のお椀の写真がでてきた。
しかも本の写真ではなく、「わたし」が作った作品のものだった。

夢じゃなかったんだ・・。
でもこのスマホに写真があるのはなぜ?

しかも・・誰がこのスマホで撮ったのか、送ってきたのか。
削除までしたのに、ごみ箱にいれたままにして。

???

そうだ!かずはさんに連絡すれば、何かがわかるかもしれない。

かずはさん・・の連絡先って知ってたっけ・・。かばん、かばん・・。

部屋の隅に置いてあった、鞄の中を探してみる。
青森で使っていたスマホはなかったけど、ほのかな漆の香りがした。

「もみじー、そろそろ病院行くよ」

夫が普段着のままで呼びに来た。

「病院まで連れて行ってくれるの?病院行ったあと仕事行かないの?」

「何言ってんだよ、当たり前だろ。着替えできる?」

「うん、大丈夫。ありがとうね」

今まで一度だって私や子どものために、仕事を休んだことなかったのに・・・。

青森では朝食を準備してくれたり、家事をしてくれていたから、いつの間にかそれが普通になっていたけど、それ以前は仕事以外何もしない人だった。
夫は一人っ子で、結婚するまでお義母さんが全て身の回りのことをしていたから、何でもやってもらえることが当たり前。
私が熱をだしても、つわりで辛くても
「ご飯まだ?」
と平気で聞いてくる人だった。

父もそういう人だったから、家のことを最優先にすることが、妻であり母である以上当たり前なんだと思ってた。
この2週間の間に何があったんだろう。

病院に向かう車の中で、夫が話してくれた。

「もうこのまま起きないんじゃないかと・・心が折れかけていたよ・・」
「・・心配させてごめんね・・」

「はぁ、ほんとによかった・・。子どもたちが泣いて泣いて。お母さんも食べてないから食べないってさ。あんだけ食べてたのが、食べなくなって。俺はどこに何があるかわからないし。仕事さえしていれば家族のためになると思っていたけど、もみじがいないと何にもできなくなってたよ。もみじが朝早くから夜遅くまで仕事しながら、家事も子どもたちのことも全部やってくれていたから、俺も仕事ができていたんだな」

あんまり喋らない夫が、目を潤ませて少し早口だった。

目が覚めるまで、子どものことを忘れていて、罪悪感に浸っていたけど・・。
いつも山盛り食べる子どもだちが、泣いて食欲がなくなったと聞くと、さらに胸が締め付けられる。

夫にも申し訳ない気持ちもあるけど・・へへ、気分がよかった♪
この人きっと私がいなかったら、生きていけないと思っていたから、今わかってよかったね(笑)

「大変だったね、子どもたちのこともありがとう」

「いや、俺の方こそありがとう。この2週間色んな事を考えたよ。何が一番大切なのか、何にもみえていなかった。もみじは身体が元気になったら、好きなことをもっとやったらいいよ」

思ってもいないことを、言われてびっくりした。

「私もね、そう思ってて・・仕事辞めようと思うんだ。やりたいことがあるから」

「まずは身体休めてからね」

「うん」

病院で診てもらったら、どこも悪くなかった。ただ筋力が弱っていたので、少しずつ運動するように言われただけだった。

帰り道、かずはさん家に寄ろうとしたら、建物がなくなっていた。

つづく

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