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似顔絵
道端で似顔絵を売る男がいた。声をかけられて、予定まで時間を持て余していたから描いてもらった。できあがった絵は私とまるで似ていなかった。媚びて美しく描いているのでもない、ただただ私と別人だった。
その日から、他の場所でも何度か似顔絵を描いてもらった。やはり私に似ていない。それぞれの似顔絵は似ているから、私の顔が、私の知っているのとは違うかたちに、他人からは見えているということだろうか。ならば、私が見ている私の顔は誰だろう。
マッチングアプリで知り合った男と食事に行った。子どもがほしいか聞かれた。初対面でそんな話になったことに少し驚いた。私の子どもは、似顔絵に描かれた私に似るだろうか、それとも私の知る私に似るだろうか、と思った。食べていた魚の小骨が喉にかかって、男との話は弾まなかった。似顔絵の話もしなかった。
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