急拡大するSaaSの営業組織で必要なこととは?セールスイネーブルメントの責任者が語る営業人材育成のポイント
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Sansan株式会社のnote編集部です。
今回の記事のテーマは、近年よく聞くようになったセールスイネーブルメント(Sales Enablement)です。セールスイネーブルメントとは営業組織を強化・改善するための取り組みで、当社では2018年に国内でいち早く専門部署を立ち上げました。
この記事では、急拡大中の会社の売上を牽引する営業組織に必要なことを、セールスイネーブルメント組織の責任者である山本へのインタビューを通じてお伝えします。
営業人材の育成にヒントが欲しい方、SaaS業界でマネジメントを担っている方などの参考になればうれしく思います。
ーこれまでのキャリアについて教えてください。
組織人事コンサルティングを行う会社に新卒で入社した後、事業戦略やデジタルマーケティングなど、転職を経てコンサルティングの専門領域を広げてきました。
フリーランスでコンサルティングも行っていましたが、事業拡大フェーズの会社において、組織のマネジメントを経験したかったため、Sansanには2019年1月に入社しました。
フリーランス時代に、ロジックでは解決が難しい、人や組織のマネジメントの課題を抱えるお客様に多く向き合ったことが入社の理由です。事業会社に属し当事者としてその課題を経験することで、解決策を見いだす視点を持てるのではないかと感じたためです。
Sansanに入社した直後は、主にミディアム規模のお客様に対するインサイドセールスとフィールドセールスの組織マネジメントを担当しました。セールスイネーブルメントを行う事業企画部には昨年着任しました。
営業生産性の向上がミッション
─Sansanの組織体制が変わったタイミングでの着任でした。セールスイネーブルメントの方針にも影響はあったのでしょうか?
はい、大きく影響しています。以前はSansan事業部やEight事業部など、プロダクトごとに事業部が分かれていました。
2021年10月よりマルチプロダクト体制に移行し、営業機能を「ビジネス統括本部」に集約したため、各営業が複数の自社プロダクトを売ることを求められるようになりました。
インボイス管理サービス「Bill One」やクラウド契約業務サービス「Contract One」など、一人の営業が扱うプロダクトが増える中、どのように効率的に営業していくべきか。営業人員も増え、生産性の停滞感が漂う中で、営業生産性の向上が私のミッションとなりました。
プロダクト知識よりも先に、汎用的なセールススキルを学ぶ
─プロダクトが多角化する中、具体的な変化とアプローチについて教えてください。
営業DXサービス「Sansan」以外も提案できるようにならないといけないため、営業メンバーへの知識のインプットの難易度が格段に上がったと思います。
新入社員を早期に立ち上げる育成(オンボーディング)では、入社半年は基礎を固める期間として、営業に求められるスキルやアクションを集中的にインプットします。
しかし、入社半年という限られた時間内で立ち上げるには、単純に増えたプロダクトの数だけ、受講する研修プログラムを増やせば良いというわけではありません。どのタイミングで何を習得してもらうのか、スキルアップのプロセスをしっかりと考慮して研修プログラムを拡充していく難しさがありました。
加えて、研修プログラムの設定においては、投資に対して大きな効果が期待できることが必要になります。何を売るのが効率的なのかをプロダクトのフェーズを鑑み、プロダクト組織と営業現場の間に入って検討し、事業成長に貢献することが不可欠でした。
現状最適解を探しているところですが、マルチプロダクト化に伴い、営業人材を育成するための「フレームワーク」を作成しました。これは、営業が専門知識を身に付けるよりも先に、汎用的なセールススキルを学ぶことが大切だと考え着手したものです。
「業務へのモチベーション・組織へのエンゲージメント」「全プロダクトに活かせる汎用的なセールススキル」「プロダクトごとに必要な専門知識・スキル」など、営業成果に必要な要素を3階層に分けて、明確化しました。
プロダクトごとに必要な専門知識やスキルを習得することは重要ですが、それだけでは受注にはつながりません。
「お客様としっかりと課題認識のすり合わせができる」「お客様とネクストアクションを明確にすり合わせる」などのどのプロダクトの営業にも共通する汎用スキルを強化することで、マルチプロダクト体制における営業の加速にも貢献できると考えています。
経営が安心して採用に投資できる組織状態を創ること
─営業組織の強化において、SaaSならではの難しさを感じる点はありますか?
大きく2つあると考えています。
1つめは、成長率30%超えといった高成長をマーケットから期待されている点です。
高成長には、受注のさらなる伸びが必須になります。
採用に投資すれば一時的に営業人員は増加しますが、営業生産性が落ちてしまっては経営上の大きな課題になります。経営が安心して採用に投資できる組織状態を創り出すこと。つまり、営業生産性を落とさずに、営業人員の増加と受注の伸びが健全に比例する営業組織に導くことが、セールスイネーブルメントの成果だと考えています。
2つめは、お客様の課題を把握し解決策を提示する営業スタイルである点です。また、プロダクトが進化する前提なので、完成した物をただ売るのではなく、お客様にプロダクトの未来を信じてもらって買って頂く。そこが面白さであり難しさだと感じています。
そのため、主体性や当事者意識をもつ人材の育成が大切になります。自分ごととして自分の役割以上、担当する領域以上の視野を持ち、課題解決のアクションが実行できる人です。
スキルはもちろん大切ですが、お客様に課題を提示し、その解決をリードするマインドをもった人が必要です。この点は、当社では事業フェーズが変わっても変化はありません。Sansanの営業組織を支えるカルチャーだと言えると思います。
セールスイネーブルメントは、人材育成を武器にセールス組織の絶え間ない成長を実現させる
─今後、セールスイネーブルメント組織は社内でどのような役割を担っていきたいと考えていますか?
営業生産性の向上を目指して、まずセールス人材の育成という役割を担っていきます。現在は大きく2つのアプローチで育成を進めています。
1つ目は、中途・新卒の新入社員の早期立ち上げ(オンボーディング)です。配属から6カ月以内での立ち上げを目標に、研修プログラムの企画運営や、配属先のマネージャーと連携したOn the Job Training の支援等を行っています。
2つ目は、より高単価な受注を期待できるマーケットで成果を上げられるセールス人材、分かり易く言うと、大手企業向けセールス人材の育成です。例えば、中小企業向けのセールスから大手向けに異動したメンバーが、早期に立ち上がるのに必要な研修プログラムの拡充を進めています。
加えて、中期視点で今注力しているのが、セールス組織における人材配置の最適化です。人材育成の企画・実行・検証を通して、セールスイネーブルメントにはセールス個々人の営業成績、セールススキルの強み・弱み、所属歴などの様々なデータが蓄積されています。
このデータを活用したタレントマネジメント、例えば前述した大手企業向けセールスへの最適な異動の実施、異動後の検証にも取り組んでいます。Sansanで活躍するセールス人材の特性を共通言語化できれば、採用基準にも反映させることも今後挑戦していきたいです。
セールスイネーブルメントは、人材育成に軸足を置いた組織開発のプロフェッショナルを目指したいと、メンバーとよく話しています。
セールス個々人の育成に向き合いながら、蓄積したデータやナレッジで組織全体にも影響を与えていくこと。育成から配置、採用、評価などの各取り組みをつなぎ一貫性を創り出すこと。経営陣が安心して人材採用に投資できる、つまり、セールス組織の絶え間ない、健全な成長の実現に向けて、今後もチャレンジしていきたいです。
編集後記
ここまで読んでいただきありがとうございました。
当社は、昨年よりマルチプロダクト戦略にかじを切り、第2、第3のプロダクトの成長に向き合っています。そして急拡大する組織の裏側では、セールスイネーブルメントの取り組みが重要なポイントになっています。
当社もまだ模索中ではありますが、日本でも重要視されはじめたセールスイネーブルメントの一つの事例として、営業組織の課題解決の一助となれれば幸いです。
引き続き、ご注目ください!
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