プロダクト特性によって変わる、デザイナーの役割とは?
こんにちは、Bill Oneプロダクトデザイナーの八木下です🐐
この記事では、私が担当プロダクトが変わったことで感じた、デザイナーの求められる役割やスキルの違いについて、比較しながら振り返っていきたいと思います。
プロダクト価値での違い
昨年、私は名刺管理『Sansan』から請求書管理『Bill One』に担当が変わったのですが、働き方の変化は、プロダクト仕様とユーザーへの知識、一緒に働くメンバーの違いぐらいかな?と思っていました。
働くうちに、2つのプロダクトは同じBtoBのSaaSであっても、ユーザーに提供している「価値」に大きな違いがあり、デザイナーに求める役割も異なっていると感じました。
『ドラえもん』のようなSansan
私が、Sansanプロダクトのデザイナーだった時は、『新しい概念の創出の担い手』のような役割だったと感じています。
Sansanが目指している方向に理由があり、最初の目的の「社内の顧客との繋がり(名刺)を把握できること」はすでに達成されていて、そこからさらに、「集まった『名刺』を活用し、より収益を上げるトリガーをになること」・・・つまり、新しい概念を作り出そうとしているためです。
Sansanのデザイナーは、ドラえもんのように「世の中にない便利なもの」を生み出すイメージに近いな、と感じていました。
『町医者』のようなBill One
一方で、Bill Oneプロダクトの場合は、請求書業務の効率化をするプロダクトです。デザイナーは、経理の専門的な知識を学び、さらに会社ごとに異なる業務フローに向き合っていく必要があります。
私の印象では、デザイナーはどうしたらストレスなく業務を行えるのか?を、患者と一緒に寄り添いながら考えていく、町医者のような立場だなあ、と感じました。
プロダクトフェーズでの違い
今回の異動で、私はプロダクトフェーズが違うと、デザイナーの役割も変わると実感しました。特に、Sansanは17年、Bill Oneは4年と、リリースから年数に差があるため、変化はより顕著でした。
慎重に開発を行うSansan
ユーザー数の多いSansanプロダクトでは、私の設計したデザインが、多くのユーザーに利用してもらえる面白さがある一方で、ちょっとした変更が、多くのユーザーを混乱させる可能性もあり、デザイナーとしての責任の重さを感じていました。
プロダクトが使いにくい場合は、ユーザーは自分の意志で利用をやめることができますが、SansanプロダクトはBtoBサービスのため、「会社が導入したから使いづらくても、使わなければならない」というジレンマが発生してしまいます。
最悪な場合は、解約に繋がりかねません。
そのため、私たちデザイナーはユーザーにとってどれが最適解なのか、ユーザーインタビューとプロトタイプのブラッシュアップを何度も行っていました。さらに、既存ユーザーに影響がないよう、他部署に変更の確認とアナウンスもして、慎重に慎重に開発を進めていました。
さまざまな部署と職種を超え、連携しながら推進していくシーンが多く、Sansanプロダクトのデザイナーは、PdMのような役割が求められる仕事だな、と感じていました。
もちろん人が関わる分だけ、プロダクトを見る視点も変わるため、その中から最適解を見つけ出す難しさも経験しましたが、デザイナーとしての自分の確信を信じて、プロジェクトを前に進めていく芯の強さも身につけられたと思っています。
スピード感のあるBill One
Bill Oneプロダクトの場合は、リリースされて4年とフェーズとしては成長期で、私が感じた大きな違いは、開発体制でした。ユーザーが求めるプロダクトにより近づけるよう、スピード重視の開発体制で、意思決定の主導権が現場サイド寄りにあります。
プロダクト全体の舵取りを行うPdMとは別に、細かい仕様を決定するPdLという役割があり、主にデザイナーは、距離が近いPdLと開発を進めるため、スピード感があります。
Sansanプロダクトとは、真逆の世界です。
私が異動して初めて案件を担当したときは、あまりのテンポの良さと、ステークホルダーの少なさに、今までの習慣と違いすぎて「えっ、もうリリースしていいの?」と逆に心配になるほどでした。
ですが、この経験から、既存ユーザーに影響が出ないよう、関係者に確認をとりながら最適解を見つけ出すのもデザイナーの在り方ですし、プロダクトが目指す方向へ即判断を行いながら進めるのも、一つのデザイナーの在り方だなと感じました。
デザイナーが直面する障壁の違い
プロダクトの特性によって、デザイナーが越えなければならない壁の違いも経験しました。
とにかく難解なSansan
Sansanは新しい概念を作り出しているプロダクトのため、独自の概念や機能、単語がたくさんあります。
入社した当時は、周りが言っている単語がわからず、一つ一つチームメンバーや、PdM、エンジニアに質問しては、コツコツと理解を深めていく作業をしていました。入社して何年か経っても、知らない単語に遭遇したりすることもよくあり、Sansanプロダクトって本当に奥が深い・・・と噛み締めていました。
プロダクト仕様もさらに上をいく難しさで、ほとんどの仕様が名刺と紐づいているので、少し変更すると、あの機能も、この機能も・・・という感じで、芋づる式で影響範囲が広がります。
仕様の難解さから、戻しがなく、裏側の仕様をちゃんと理解した上で作られた設計ができると、エンジニアからの信頼は爆上がりです!
Sansanプロダクトで活躍できる人は、どんなBtoBプロダクトに携わっても難なく働けるスキルが身につけられるのでは?と思っています。
専門知識が必要なBill One
Bill Oneプロダクトの場合は、Sansanプロダクトほど、仕様の複雑さはないものの、そもそもの「請求書業務とは、なんぞや」の部分を理解していないと全体の流れを踏まえながら設計をすることができません。
異動した直後は、請求書業務のカスタマージャーニーマップを参考に、キャッチアップするところから始まりました。
さらに、請求書業務を行う上での専門用語を学ぶ必要があり、より理解を深めるため、簿記を受けるデザイナーもいるほどです。
Bill Oneだけでなく、どんなプロダクトにも言えることですが、UIUXデザイナーは、いかに「ユーザーになりきれるか」が大事で、ユーザーについて知ることは、デザイン設計のスタートラインに立つようなものだと思っています。
2つのBtoBプロダクトを経験して
私の経験を元に2つのプロダクトを比較してきましたが、どちらがいいというものはなく、自分がデザイナーとしてどうなりたいのか、という意思と、真摯にデザインに向き合い続けることが、自分のスキル向上に繋がっているな、感じています。
一方で私は、今まで雑誌、アプリ、BtoCサービスと、いろいろなデザイン現場を渡り歩いてきましたが、BtoBサービスは、UIUXを追求する上でとても良い環境だと感じています。
広告や目先の利益に左右されるのではなく、真摯にユーザーに向き合い、難解な仕様や専門知識に揉まれつつも、納得できるものを提供できるのは、デザイナーにとって一番の喜びではないでしょうか?
そんなSansan株式会社は、プロダクトデザイナーを募集しています。
ご興味のある方は、ぜひお待ちしています!
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