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「世界漂浪の記」 羽生隆 101選

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50年遅れの同じ日付で毎日投稿されていた羽生隆さんの旅行記「世界世界漂浪の記」の中から、何度も読み返したい特に印象深い投稿を集めました。
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2022年2月の記事一覧

❨166❩1972.2.14 月 晴→曇(時々雨)  赤道通過:エクアドル(Ecuador:Ibarra→)

❨166❩1972.2.14 月 晴→曇(時々雨) 赤道通過:エクアドル(Ecuador:Ibarra→)

走り終った今、俺はボンヤリ、ローソクの灯を眺めてこの日記を書いている。

日本へ帰りたい。でも帰れない。
夜は一層孤独になる。
慰めてくれるものは何もない。
ただじっとこらえているしかない。
明日を考えることによって、俺はこの暗い夜を耐える。
80kmの山道を越えて来た今日という日を、噛み締めて黙りこくっている。

今日は、赤道を通過した。
何人の人と言葉を かわしただろう。
そしてどれだけ世話に

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❨168❩1972.2.16 水 曇  リオバンバまで汽車に乗る(Ecuador:Riobamba)

❨168❩1972.2.16 水 曇 リオバンバまで汽車に乗る(Ecuador:Riobamba)

30km程走ってから、汽車に乗る。

駅で休んでいて、駅長(兼雑役)と仲良くなった。
親切な駅長で、食物を買って来てくれたあげく、昼からリオ・バンバまで150km(17スックレス)、ただで汽車に乗せてもらう事になった。

貨物とあって、乗客はなし。
俺と機関師がいるだけ。

曲りくねった線路は、かなり高い山まで登った。
久しぶりに雪を見た。寒い。

約9時間、走って着いた。
今夜は、駅の事務所に

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❨174❩1972.2.22 火 晴  ペルー:砂漠を走る(Peru:Piura)

❨174❩1972.2.22 火 晴 ペルー:砂漠を走る(Peru:Piura)

今朝も日の出と共に走り始めた。
腹の方は、まだダメ。
今朝も、ピーシャーだった。

40km家も何もない砂漠を走った。
かすむ程に道が延々と続き、暑さと疲れで、俺はもう走りたくないと思った。
疲れが来ている。

もう走るのはイヤだ!
のどが渇いてヒリヒリする。
風が強く、砂と共に横なぐりに吹いて来る。

進まない。頭に来る。
車は、俺をよけるようにして通り過ぎて行く。
途中、止っている車に乗せてく

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